バンブーだより 6月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-3
2024年7月11日
3,同時処理と継次処理
学習指導要領が改定され教科書の内容にも変化があったようです。小学校で算数や国語など細かい内容を見ていると小学生の二桁の足し算や引き算の導入時期を見ても、国語のローマ字の導入時期を見ても1学年従来よりも前倒しで学習することになっているようです。そうなると数処理や数の概念など算数を学習するうえで、数を具体物や数唱と重なり合わせてイメージし処理する能力に困難さが生じている生徒ほど学力の差が開いてしまう危惧があります。
バンブー教室の対象になる特別支援教育や学習支援が必要となる人たちは、認知や感覚の偏りからくる人には見えないつまずきが起因して、授業や学年相応の学習について行けず勉強ができないと思い込んでしまっている人たちが多いと思います。このような人たちはテキストや教材をベースにした単元学習では勉強を理解することが困難です。学力を知識や演習の積み重ねで、学力が向上しワーキングメモリの容量に収納する記憶が思考する土台になります。LDなど発達障害の人たちは思考を展開してアイデアを広げられず、物事を俯瞰的にイメージすることができないため、一般的に用いられる覚えることを主体とした繰り返し学習や遡り学習で勉強時間を費やしてもなかなか効果が上がりません。
よく先生や保護者がついて一緒に学習すると、その時は解けるのに一人になるとできない、または公式をすぐに忘れてしまうと言う声をよく聞きます。問題を解くためのイメージがつかめないため独りでは、問題を展開し解法するための手順を考えることができません。先生や保護者が一緒のときはヒントを与えてくれることで解放の手順が理解できるので問題がその時は解けるようになるのです。まして文章題は太刀打ちできなくなるでしょう。
以上のような状況は継次処理のつまずきに関係しています。継次処理とは、勉強方法で言うなら時間の流れに沿って学習した順番で理解し、段階を踏まえ全体の理解に発展させ、学習課題を覚え、思い出し、解法につなげることを指しています。先生や保護者と一緒に学習するときはその理解を補うための言語的な手がかりや視覚的な手がかりを彼らの理解のペースに合わせて提示してもらい理解段階を踏まえて学習を先に進めてもらえる利点があります。ゲームでのモニターを見ながら操作性が得点に結びつくようなゲームが好きで得意なお子様はモニターに映し出される映像やキャラクターが発する言葉や音が視覚的および言語的手がかりになり必要とされる継次処理を助けてくれるのでゲームに没頭できるのです。
勉強でもこのような取り入れることができれば段階ごとに理解ができ、記憶に結び付くことができる人がいると思います。学校の集団授業では、なかなかこのような継次処理の苦手さを視覚的、言語的手がかりで補って生徒の一人ひとりの目を配るゆとりが教える先生にはないでしょう。授業では理解できず、教えられた課題のポイントのなるイメージが頭に浮かばないまま、家庭学習で教科書ワークのような宿題となる課題を消化できるわけがありません。ワーキングメモリは「リハーサル」と言って理解してイメージづけたことを何度も言語的に繰り返し記憶に定着させないと試験結果につながる学習にはなりません。
このような理由で家庭での復習が難しく、学習意欲がないお子様はその後復習する習慣がつかないので、たとえその場では理解できてもすぐに忘却してしまうことが関の山です。
継次処理が苦手な生徒は同時処理の利点を生かした学習方法を取り入れなければなりません。同時処理は視覚的運動的な手がかりでイメージづけて理解している学習した事柄と関連したいくつかの記憶を同時に思い出し、統合することで理解し、記憶し解法に結び付ける処理のことを言います。視覚的な認知性が優位で視空間のワーキングメモリが比較的得意な人たちや周りの状況を観察し体を動かし実際に特定の作業を進めながら物事の全体像を把握し理解していくようなタイプの人や映像的な記憶のほうがイメージしやすく、いくつかのイメージ的な記憶をたどり、映像からの事象を結び付け、頭で考えを操作しまとめていく過程で課題全体の記憶、理解、解法をたどっていくタイプ同時処理の方策を得意としているタイプなのです。ゲームでの思考性が問われるようなゲームが得意なタイプは同時処理が得意なタイプです。
だからこそ何が理由でできないのかを把握して、そのつまずきを補う学習環境の提供や認知の優位性を配慮した情報の伝達や教材やノートなど教具の工夫による的確な学習支援を授業や指導にも取り入れていかなければ学習効果が上がりません。彼らに合わせた学習方法を確立させることが大切だと思っています。
たとえば「読むこと」「書くこと」が苦手な人は視機能の弱さ(文字や記号を認識する能力)に加え、視空間認知力や視覚的短期記憶(ワーキングメモリ)、書くという操作における感覚統合の問題(発達性運動協調障害)が起因していることがあると言われています。これらは目に見えないつまずきなのでどうして苦手ならをなかなか分かってもらえないため、授業中に座席の順番で音読させられてつかえながらもようやく読めたり、行を飛ばしてしまい結局読めなかったり立たされたままクラスメート視線を感じて辛い思いをした人は少なくないはずです。漢字が覚えられない。英単語が覚えられないこともおなじようなことが起因しています。英単語は英語の発音とつづりの規則性に気付くための「音韻の認識」が弱い問題や「ワーキングメモリ」、「文字や記号の視覚認識」が弱い問題が起因しています。そのつまずきを無視してただ漢字や英単語を書かせるだけの練習では勉強自体が嫌になってしまいます。視覚や聴覚、触覚など多感覚を学習に取り入れることでこのようなつまずきからの苦手さから解放されるはずです。