[高等部通信]学園長より~可能性の扉~②

2017年1月4日

2、発達障害がある人たちの就労状況について

今まで発達障害がある子どもたちは非常に指導することが難しく文部科学省が発表している全国の公立学校の通常級で6、5%いる発達障害の子どもたちをクラスの子どもたちと同様に授業や学校行事に参加させて、周りに迷惑をかけないでうまく適応させていくことが極めてむずかしいと言われてきました。一度注意したことを繰り返してしまい、いつまでたっても問題行動が改善しない子どもたちが多いので、保護者のクレームを支えきれなくなった担任が、そのような状況の生徒の保護者に発達検査を薦めて、特別支援学級等に移籍するように働きかけるケースが非常に多いように思います。
学力があるお子様に対しても、学力をつけることよりもまわりとの関わりができないことには将来の就労や自立のめどがつかないとの理由で、まずは学校で問題行動なく過ごせる特別支援学級のような環境を選択させようとする動きがいまだに大きいと思います。
そこでは勉強のことは二の次におかれてしまいます。ある程度は、吸収できる学習能力を持ち合わせているお子様にとって学校の勉強や学校生活におけるグループ活動、そこで経験する役割分担や共同作業は、将来のために必要に彼らにとってのピースになってくるはずです。将来、社会生活において何かしらのアクシデントに出くわしたり、困難に見舞われたりした時に人は、そのことを解決するためにいろいろな試みをします。
そのための解決策は、学校で得られた知識や学校生活での人の関わりから得た経験がヒントになるケースが多いと思います。社会に出てみれば一つのパターンの繰り返しは、あまりないでしょう。
任された仕事はある程度決められたルーティンワークができても、会社での対人関係やお客さんに対しての関係は、そうはいきません。会社でのトラブルの大半はこのような人間関係から来るものです。だからこそ、自分が今いる場所で適応するために頑張ることこそ将来にとって必要な経験になってくると思います。そのために特別支援教育が重要であると私は確信しています。自分の適性に合った仕事を選ぶ権利、自分がやりがいを感じることができる仕事を選ぶことができる権利、自分に合った職場環境を選ぶ権利は、皆さんにあるはずです。
平成26年に障害者権利条約が批准され、平成28年4月障害者差別解消法が成立したことにより障害者が働く事業所では、合理的配慮規定等が施行されるようになりました。すべての障害をもった人たちがその障害によって差別を受けることなく働くことができ、その障害のつまずきを考慮した合理的な配慮を実施することで障害者がその障害が原因で不利益になることなく、精神的な負担をかけずに職務に従事できる職場環境を提供しなければならない。という規定が成立しました。
2005年から施行された発達障害者支援法が10年を経過して、より発達障害者が社会に参加しやすくなる法律改定の動きがあり、改定案が参議院を通過したとの報道がありました。
障害者雇用促進法の改定が行われ,発達障害者が精神障害者保健福祉手帳の取得によって障害者雇用での就労が可能になっていますが、改定案の一つには、発達障害者専門の手帳の発行を検討する項目も含まれているようです。

平成26年の法定雇用率を達成した企業の割合は44.7%、実雇用率も1.82%と過去最高を記録しました。雇用障害者数は43万1,225.5人で、前年と比べて5.4%も増加しています。 また、26年度では精神障害者の就職件数が身体障害者の就職件数を大きく上回りました。発達障害者支援法施行以前の障害者別の就労件数の推移を見たときに、平成16年の身体障害者の雇用率は障害者雇用全体の約64.1%で精神障害者の割合は、わずか10%にしかすぎませんでした。平成17年に発達障害者支援法が施行された後の平成25年の統計では、身体障害者の割合が36.3%に減少し、精神障害者の割合は37.8%と大幅に増加しています。このことは、発達障害者が精神障害者の雇用を押し上げていている要因であり、軽度の知的障害がある自閉症スペクトラム傾向の人たちも含めて障害者雇用の中心になっていくと予想されます。従来の精神障害者の中心は統合失調症や鬱などの精神疾患を抱えた人たちが中心でした。そのような人たちのほとんどは、通勤することに困難さを伴う症状がある人たちなので、企業が雇用するには、難しい人たちでした。平成30年からはじまる企業の精神障害者の雇用の義務化に向けて、企業は在宅での業務を拡大する方針であることから、精神障害者が障害者就労の主役になることは間違えないでしょう。いままで障害者就労の中心であった身体障害者の雇用が減少傾向にある理由として身体障害者の81%が60歳以上の高齢者であることが挙げられます。知的障害者の雇用も減少傾向にあります。

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