[高等部通信]学園長より~可能性の扉~③

2017年1月6日

3、就労に向けた自然学園高等部の取り組みについて
このような状況を踏まえ、自然学園高等部では企業に就労した際に継続的な企業定着を可能にするためは、企業人として組織に受け入れられ、企業の利益のために貢献できる人材の育成を考えたキャリア学習とソーシャル・スキル・トレーニングをカリキュラムに導入しています。
ここでは、そのために自然学園高等部が現在どのような授業を実践しているかを簡単にご紹介したいと思います。そして体験就労の経験などを踏まえ実際に企業に求められている就労スキルを考察して「どのような人材が、企業側が求めているのか?」「採用されるためのスキルを身につけるにはどのようにしたら良いか?」をお話したいと思っています。
最近の企業が軽度知的障害者や発達障害者に求める仕事の傾向としては、手順を理解すれば、正確に仕事を遂行し、集中力や持続力が高い人たちの雇用を積極的に進めている企業が少しずつ多くなっているようです。具体的な仕事としては名簿作成、PCデータ入力、発送業務、資料作成、スキャン業務、ファイル整理、仕分け、校正、DM郵送、コピー、シュレッダー、袋詰め、のり付け、宛名書き、押印、名刺作成、パンフレット作成、社内便等の事務作業などです。
発達障害がある人たちには、同時処理力や継次処理力を要求される複雑な業務でさえ、やりこなせる能力があることを企業から認められています。
発達障害の人たちは、やるべき手順ややり方、こなさなければいけない分量などが明確になっていれば、不安が少なくなり人並み以上の集中力で正確に仕事が消化できる人たちが多いのです。人付き合いが苦手で、言葉の巧みさを持ち合わせてない人でも事務処理や入力作業などは、業務を限定し作業工程を一律にマニュアル化することで、先の見通しがつくようになり、次の作業が図れるようになる人が多いのです。

そのことを踏まえて学校では、企業に受け入れてもらえるための社会倫理を教えて、会社の理念やルールに沿った行動が実行でき、ほかの社員と歩調をあわせて協調できる社会的なスキルを獲得させることに力を入れています。そして自分の欠点を把握させることからはじまり、認知の偏りの対策としてメモや確認作業を徹底させ、トラブルの報告、困ったときの相談がスムーズにできるようなグループワークを重視して職場に適応できるためのスキルを教えています。指示の受け方やビジネスマナー、グループワークなどが上記に相当する授業になります。
また人との関わりが苦手で、相手の立場に立って人の気持ちを考えられない特性を持ち合わせている人のためには、コミュニケーションスキル、ソーシャル・スキル・トレーニングなどの授業があり、まわりの人たちとうまくつきあうための実践スキルを養成する講座になります。
発達障害の特性は薬を飲んだり、時がたったりすれば解消するわけではありません。ですが、今回ご紹介した栗原類さんの「発達障害の僕が輝ける場所を見つけられた理由」に書いてある通り、障害を受け止めてその欠点を自分でも注意することで、トラブルが少なくなり、周りの人との関係が良くなることができます。本には「脳のクセを知り訓練すれば変われる」と書いてありました。自分の弱点を知り、克服できるように訓練することで、できないこともあるけれどいつしかできるようになったこともたくさんあると書かれていました。私も自然学園の生徒をお預かりしている経験からまさしく同じことを感じています。
企業も採用条件の大きな一つとして、自分の障害をコントロールできる能力があることを挙げています。発達障害の人たちは、努力次第で特性である社会性のつまずきやコミュニケーションのつまずきをまわりの人たちの力を借りながら解決することができると私は思います。それができる人は、何か困ったときにパニックになったり、その場を逃げ出したりはしない人です。もともと凸凹の中に高いスキルを持っている人たちなのでその能力を会社で生かせる人が多いのです。
そうであるならば、将来の就労そして自立を強く考えている人は、まず自分のつまずきを受け止めて、そのつまずきを改善するためにどうしたらいいのかを考え、働くために最良の生活環境や職場を求めていくことが大切ではないでしょうか。手帳の取得はそのための大きなアドバンテージになるはずです。
知的なつまずきがない人が無理をして療育手帳を取得して、就労だけを求めて特別支援学校を受験する必要はないのです。自分で納得できない仕事を無理してやる必要はない時代なのです。高等部2年生の保護者の方々には、12月16日の進路説明会では、このようなことも含めて就労および就労支援の実情をお伝えしたいと思います。
以上のことを考慮して第9回の定期講演会は、「発達障害がある子どもたちの手帳取得」をテーマにしました。

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