[高等部通信1月新年特別号]学園長より~可能性の扉~5-3

2020年2月18日

(3)発達のつまずきがあるお子様のワーキングメモリに関する具体的な支援
もともと記憶とは、20分後に42%、1時間後は56%、9時間後は64%、6日後は76%の割合で忘却してしまいます。忘却を食い止める方法は、一定時間すぎたあとに繰り返し復習するしかないとされています。学習したその日の夜、1日後、3日後、1週後と定期的に繰り返して復習することが不可欠です。その学習を負荷なく、楽しく学習するには彼らのワーキングメモリのつまずきを把握し理解したうえで、彼らが学習しやすい環境や勉強の仕方を提示しなければなりません。彼らが負担にならないような課題や学習環境を提示してこそ継続して勉強に取り組んでもらえるようになるのです。

そしてその結果、短期記憶が長期記憶に移行され、学習で身に付けた知識の幅が広がっていきます。できたことをほめて認めてあげれば自信が持てるようになります。褒められることを嫌うお子様はいないと思います。いままで自分では一生懸命にやっているつもりでも、出来ないことや間違えることが多いことに対して怒られたり馬鹿にされたり蔑まされたり、健常のお子様が経験したことのない思いをずっと重ねているお子様方が高等部に在籍している子どもたちなのです。

一生懸命取り組んでも認められないのなら、やってもしょうがないと諦めるのは大人だって同じです。ましてや非常に強いストレスや劣等感を持ちながら、他の選択肢が与えられないのであるならば、そこから逃げたくなるのは十分理解できることだと思っています。
情緒混乱や無気力で不登校になる生徒の原因に学力不振が上位に上がりますが、自分に自信が待てなくなれば学習意欲がなくなります。学習無気力になる状況が勉強においては、学力不振になる一番の原因であると私は思っています。

だからこそ自信をつけさせていくことが大切です。苦手だと思うことに自信をもたせて自己肯定感を回復させていくことが、学力が向上する大きな要因になると思います。
そして今すぐ学校のクラスメートと同じような問題を解けるようにするのではなく、そこに結びつく基礎的な内容からクリアしていくことが大切です。第96回箱根駅伝で2年ぶりの優勝を果たした青山学院大学の原監督が、優勝する強いチームにするために行ったことの一つとして、まず生徒に自分に手が届く目標を設定させることだと話していましたが、  できることは努力することが可能で、できなかったことができるようになれば、次の目標が見えてくるものです。できないまま不安が大きくなり、気持ちばかりが焦りどこから勉強してよいのかわからない暗中模索の状況では、目標を定めることさえできません。そのために自然学園では試験対策授業を行っているのです。目の前の次にできることを目標に置いて、努力してできるようにすることが自然学園で実践しているスモールステップの学力アップメソッドと同じだと思っています。

学習計画を立てるには、今自分がつまずいているところからもう一歩で手が届きそうな課題にチャレンジできるような目標を立てることが大切です。そうしていけば、課題ができた喜びや達成感を経験させていくことができるでしょう。できないことでの失望感より多くの成功体験が上回ることによって、次のステップに向かう好奇心や学習意欲が出てきます。
そして人は褒められることで自尊心が満たされ、そこで得た自信が向上心につながっていくものなのです。最初は凹凸の凸のスキルで解法が見つけられるような課題を選んであげることから始めることが重要なのです。

褒められることのないお子様方は、なによりも褒められたい欲求で満ち溢れています。そのためにはワーキングメモリをはじめとしたできない理由を把握することが大切です。そこからではないと有効な学習支援は実践できません。いままで自然学園の授業を受けてきた高等部の生徒の皆さん方なら必ず試験に向かい合い、その答えが導き出せるはずです。
精一杯頑張ってください。

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