[高等部通信1月新年特別号]学園長より~可能性の扉~②

2018年1月30日

2、発達障害がある人たちの就労状況について

今まで発達障害がある子どもたちは非常に指導することが難しく文部科学省が発表している全国の公立学校の通常級で6、5%いる発達障害の子どもたちをクラスの子どもたちと同様に授業や学校行事に参加させて、周りに迷惑をかけないでうまく適応させていくことが極めてむずかしいと言われてきました。一度注意したことを繰り返してしまい、いつまでたっても問題行動が改善しない子どもたちが多いので、その対応にご苦労されている小中学校の先生方も多いのではないでしょうか?

特別支援教育導入の意義は、このような子どもたちの困難さを受けいれた的確な支援を行うことで問題行動を減少し、学校生活に適応できるようにしていくことだったはずです。
学校での勉強や学校生活におけるグループ活動、そこで経験する役割分担や共同作業は、将来のために彼らに必要なピースになってくるはずです。将来、社会生活において何かしらのアクシデントに出くわしたり、困難に見舞われたりした時に人は、そのことを解決するためにいろいろな試みをします。そしてつまずきである障害そのものを治すことはできないですが、凸凹の凸の能力を伸ばして問題行動を減少されることや障害を認めながら意識して、注意を喚起することで社会に適応することは可能なはずです。そのことを継続するための学習としてSST(ソーシャルスキルトレーニング)があります。

自然学園では、時間割にSSTを導入し学校行事の目標にソーシャルスキルの向上を掲げることで、高等部をはじめとしてた各学部での障害がある生徒のニーズに対してこのような特別支援教育が実践できるように努力しています。そして、その取り組みが生徒の皆さんの就労に役立つことを目標に置いています。

平成26年に障害者権利条約が批准され、平成28年4月障害者差別解消法が成立したことにより、障害者が働く事業所では合理的配慮規定等が施行されるようになりました。すべての障害をもった人たちがその障害によって差別を受けることなく働くことができ、その障害のつまずきを考慮した合理的な配慮を実施することで障害者がその障害が原因で不利益になることなく、精神的な負担をかけずに職務に従事できる職場環境を提供しなければならない。という規定が成立しました。

教育においても障害者の権利に関する条約「第二十四条 教育」においては、教育についての障害者の権利を認め、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、障害者を包容する教育制度等を確保することとし、その権利の実現に当たり確保するものの一つとして、「個人に必要とされる合理的配慮が提供されること。」を位置付けています。そして、平成28年4月障害者差別解消法の成立によって合理的配が法の上でも保障されるようになりました。文部科学省は合理的配慮の具体的な事例として、板書やメモ等の情報の掲示をして指示が認知しやすい支援や対人関係の状態に関する配慮、情緒の安定を図る小部屋の確保等が挙げられています。

2005年から施行された発達障害者支援法が10年を経過して、より発達障害者が社会に参加しやすくなる法律改定の動きがあり改定案が参議院を通過したとの報道がありました。
障害者雇用促進法の改定が行われ,発達障害者が精神障害者保健福祉手帳の取得によって障害者雇用での就労が可能になっていますが、改定案の一つには、発達障害者専門の手帳の発行を検討する項目も含まれているようです。平成26年の法定雇用率を達成した企業の割合は44.7%、実雇用率も1.82%と過去最高を記録しました。雇用障害者数は43万1,225.5人で、前年と比べて5.4%も増加しています。 また、26年度では精神障害者の就職件数が身体障害者の就職件数を大きく上回りました。
発達障害者支援法施行以前の障害者別の就労件数の推移を見たときに、平成16年の身体障害者の雇用率は障害者雇用全体の約64,1%で精神障害者の割合は、わずか10%しかすぎませんでした。平成17年に発達障害者支援法が施行された後の平成27年の統計では、身体障害者の割合が28.9%に減少し、精神障害者の割合は44.4%と大幅に増加しています。このことは、発達障害者が精神障害者の雇用を押し上げていている要因であり、軽度の知的障害がある自閉症スペクトラム傾向の人たちも含めて障害者雇用の中心になっていくと予想されます。

従来の精神障害者の中心は統合失調症や鬱などの精神疾患を抱えた人たちが中心でした。
そのような人たちのほとんどは、通勤することに困難さを伴う症状がある人たちなので、企業が雇用するには、難しい人たちでした。平成30年からはじまる企業の精神障害者の雇用の義務化に向けて、企業は在宅での業務を拡大する方針であることから精神障害者が障害者就労の主役になることは間違いないでしょう。いままで障害者就労の中心であった身体障害者の雇用が減少傾向にある理由として身体障害者の81%が60歳以上の高齢者であることが挙げられます。自閉症を伴う軽度の知的障害者を除く知的障害者の雇用も減少傾向にあります。

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