[高等部通信1月新年特別号]学園長より~可能性の扉~③

2018年2月2日

3、就労に向けた自然学園高等部の取り組みについて

このような状況を踏まえ、自然学園高等部では企業に就労した際に継続的な企業定着を可能にするためは、企業人として組織に受け入れられ、企業の利益のために貢献できる人材の育成を考えたキャリア学習の一環として、ソーシャル・スキル・トレーニングをカリキュラムに導入しています。
最近の企業が軽度知的障害者や発達障害者に求める仕事の傾向としては、手順を理解すれば、正確に仕事を遂行し、集中力や持続力が高い人たちの雇用を積極的に進めている企業が少しずつ多くなっているようです。具体的な仕事としては名簿作成、PCデータ入力、発送業務、資料作成、スキャン業務、ファイル整理、仕分け、校正、DM郵送、コピー、シュレッダー、袋詰め、のり付け、宛名書き、押印、名刺作成、パンフレット作成、社内便等の事務作業などです。

発達障害がある人たちには、同時処理力や継次処理力を要求される複雑な業務でさえ、やりこなせる能力があることを企業から認められています。
発達障害の人たちは、やるべき手順ややり方、こなさなければいけない分量などが明確になっていれば、不安が少なくなり人並み以上の集中力で正確に仕事が消化できる人たちが多いのです。人付き合いが苦手で、言葉の巧みさを持ち合わせてない人でも事務処理や入力作業などは、業務を限定し作業工程を一律にマニュアル化することで、先の見通しがつくようになり、次の作業が図れるようになる人が多いのです。

そのことを踏まえて自然学園では、企業に受け入れてもらえるための社会倫理やビジネスマナーを教えて、会社の理念やルールに沿った行動が実行でき、ほかの社員と歩調をあわせて協調できる社会的なスキルを獲得させることに力を入れています。そして自分の欠点を把握させることからはじまり、認知の偏りの対策としてメモや確認作業を徹底させ、トラブルの報告、困ったときの相談がスムーズにできるようなグループワークを重視して、職場に適応できるためのスキルを教えています。指示の受け方やビジネスマナー、グループワークなどがそれに相当する授業になります。また人との関わりが苦手で、相手の立場に立って人の気持ちを考えられない特性を持ち合わせているは、コミュニケーションスキル、ソーシャル・スキル・トレーニングなどの授業があり、まわりの人たちとうまくつきあうための実践スキルを養成する講座になります。このように授業で学んだSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)を日常生活や体験就労や就職ができた際の職場などで実践し使いこなせることを般化といい、そのための実践的なトレーニングの場面としてサマーキャンプやスキー教室、音楽祭や学園祭、藤まつりでの模擬店などがあります。11月に行った芸術文化鑑賞会の際に、生徒に自宅から電車を乗りついで現地集合をさせたことは、芸術文化鑑賞会と言う年間行事計画の実施起案に、企業の体験就労で必ず要求される「一人での交通機関を使った通勤ができること」と言うテーマが盛り込まれているからです。

自然学園では、1年生から企業見学会を行い、2年生から体験就労を授業のカリキュラムとして導入しています。企業は、入社の条件のひとつとして「一人での交通機関を使った通勤ができること」を挙げています。当然実習の時からそのことは要求されてくるのです。両親の送り迎えなしに、通勤することができなければ、採用を敬遠されるのは当たり前のことです。そのための実践的なSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)を学習する機会として、学校行事や体験授業があり、班行動や連携を必要とするグループワークでの作業などを通して、共同作業や協調、協働のために必要なソーシャルスキルを学ぶのです。

発達障害の特性は薬を飲んだり、時がたったりすれば解消するわけではありません。
今回おすすめ本でご紹介した栗原類さんの「発達障害の僕が輝ける場所を見つけられた理由」に書いてある通り、障害を受け止めてその欠点を自分でも注意することで、トラブルが少なくなり、周りの人との関係が良くなることができます。本には「脳のクセを知り訓練すれば変われる」と書いてありました。自分の弱点を知り、克服できるように訓練することで、できないこともあるけれど、いつしかできるようになったこともたくさんあると書かれていました。私も自然学園の生徒をお預かりしている経験からまさしく同じことを感じています。
高等部2年生の保護者の方々には、12月の進路説明会では、このようなことも含めて就労および就労支援の実情をお伝えしました。

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