[高等部通信10月号]学園長より~可能性の扉~②

2016年4月1日

2、3年生の進路状況

大学や専門学校は、AO入試・推薦入試などは、9月から11月に試験日が設定されているので、この時期が非常に重要な時期になります。また、就職を志している生徒はこの時期からが体験就労も含めて就職活動の本番になる時期です。

大学、専門学校に合格した生徒の皆さん、本当に合格おめでとう。
高等部3年生の皆さんが自然学園に入学したときは、まだ将来の自分の姿さえ想像することができず、学校生活に早くなじむことだけで精一杯であったように覚えています。
そんな皆さん方が、時が経過するにつれ、自分自身に自信をもって、自分の言葉で自分の思いを、口にできるようになってきました。そして今、自分の選んだ進路にひたむきにトライする皆さんの姿に、自立を目標に向けた自然学園の取り組みが間違っていなかったとの思いを胸にしています。おそらく課題が少し厳しすぎた人もいたと思います。そんな時も歯を食いしばって皆さんは頑張ってくれました。

これから入学試験や就労体験、就職面接に臨む生徒の皆さんには、あわてず、あせらず最後まで自分のペースで、自然学園の3年間の成果をすべて出し切るつもりで努力を続けてください。私たちは、一人ひとりの進路が確定するまでみなさんを支援していきます。

旧来の考え方の中に、特別支援教育が必要な子どもたちには、身辺自立や生活に結びつくことが一番大切なことであって、勉強よりもむしろ就労できる力を養うという考え方がありました。
だからと言って、就労支援施設である福祉作業所や、障害者雇用を利用した企業への就労が進路として適切な生徒ばかりではないはずです。

中学校のときに特別支援教育を必要としている人たちのなかには、知的なレベルの高さがあるLDやADHDといわれる、つまずきがある生徒の皆さんや、自閉症スペクトラム障害と診断されている人たちにも、アスペルガ―症候群など、知的にも高いレベルの特性を持った人たちもいるのです。そのような人たちの中には、やるべき手順ややり方、こなさなければいけない分量などが明確になっていれば、不安が少なくなり、人並み以上の集中力で正確に仕事が消化できる人たちが多いのです。人付き合いが苦手であったり、言葉の巧みさを持ち合わせていない人でも、一般の方々が任されている事務処理や入力作業などは、慣れることで先の見通しが出来れば、いとも簡単にこなせる人が多いのです。

ひとより手先が器用な人、PCに明るい人、絵が得意な人、スポーツでの特技がある人、数学が得意な人、本を読むこと、文章が書くことが得意な人、暗記が得意な人の中には、専門的なことを学ぶことで資格が取れたり、つまずきを補えるだけの特定の分野の知識やスキルを身に付けられる可能性を持った人たちがいるのです。人並み外れたスキルからつまずきを差し引いても、企業から魅力ある人材に映る人たちは少なくありません。そのような人たちは、専門学校や大学にいくことで自立へ可能性が広げられるかもしれません。また専門学校や大学を出てから、障害者雇用を利用した企業への就労を選択しても遅くはありません。

最近、特例子会社には、ある程度のキャリアを積んで、他の社員にも指導できるスキルに到達したと判断された人たちには、一般社員と同様の待遇で雇用してもらえるようになれるシステムを導入している企業も多くなってきました。

発達のつまずきがある子どもたちの中には、二次障害といわれるつまずきや、社会に適応できない問題を抱えて悩んでいる子どもたちがたくさんいます。発達障害がある子どもたちは、「うつ」になりやすい特性を抱えています。だから二次障害にもなりやすのです。

自然学園の生徒のみなさんのなかにも、強迫性障害や統合失調症に近い症状を訴え、入退院を繰り返していたり、通院している子どもたちがいます。拒食、過食を繰り返している人たちもいます。精神的な不安定さを抱えている人たちの中には、精神的な回復をするまでのモラトリアムの期間があれば、能力の高さを発揮できる場面をあたえられ、その実力を認めてもらうできる機会に恵まれるかもしれません。

実際に大学部、高等部を卒業した生徒は顧客名簿の入力業務・アンケート集計・伝票整理等の事務業務、名刺や会社案内の印刷業務、DM配送、社内清掃業務などで業績が認められ、管理的な立場で仕事を任せられている人たちが何人かいます。

発達のつまずきを抱えた子どもたちの進路を考えるうえで必要なことは、最初から能力を限定し、従来の既定路線に子どもたちの可能性を押しはめていくことではなく、まずは生徒たちの可能性を引き出す環境を整え、いくつかの進路選択を提供していくことが優先である、と私は思っています。
自然学園高等部の進路指導は、進学にしても就労にしても、その考え方の延長上にあります。

高等部の全員の生徒たちが、残り少ない自然学園の学校生活を悔いを残さず卒業を迎えられるように、この二学期の、1回、1回の授業を大切にしながら、全力で頑張ってください。これから試験に臨まれるみなさんの朗報も心待ちにしています。

(つづく)

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