[高等部通信10月号]学園長より~可能性の扉~⑥-2

2018年11月22日

生徒の皆さんは、不器用性があり、ダンスなど他の人と同じ動きを模倣したり、リズムや他の人に歩調を合わせながら協応したりすることが苦手な人たちが多いようです。整列や行進が苦手で、一定の時間同じ隊形をキープしたり、他者との距離を保ったり、規律したまま姿勢を保つことが苦手なので、体育祭の時には必ず先生に怒られる常習犯だった人もいたようです。不注意性が強く、集中力もないので、おしゃべりをしてしまい、相手の動きを観察できず、チームワークを乱すきっかけになる無秩序な行動をしてしまうことがあります。      
彼らの特性にある物や人との距離感がうまく図れない触覚感覚の鈍さや掴む、にぎる、手を突くなどの力の加減の調節や聴覚、視覚の認知力と運動感覚との連携がうまく統合できないことが挙げられます。それに加えて体幹が弱く、左右の上下のバランス感覚が悪い人が多いので自分が思った通りに身体がコントロールできないのです。また不注意性や衝動性の強さからチームワークが必要な競技では、ミスを犯してしまいます。だから、先生やクラスメイトから文句を言われたり、怒られたりすることが多いのです。このことが、彼らが今まで体育祭が苦手であった原因であると思われます。
自然学園では、以下のことを体育祭の約束事にしました。
① チームワークでの勝利を目標に置いて、自分の役割を果たすことに一生懸命に頑張ることが体育祭参加の意義です。
② 競技の結果だけを見た自分が満足するためだけの勝ち負けにこだわらない。
③ 他者を励ますこと、チームメイトのミスをカバーすること、自分の気持ちに負けないことが、スポーツマンシップであり、自然学園体育祭の理念です。
 
この約束を参加した全員が守ることができました。1500メートル走に参加を申し入れてくれた選手の皆さんは、誰もが順位に関係なくゴールを駆け抜けるとガッツポーズを作っていました。この姿こそ私が考えた体育祭に参加する生徒の理想の姿です。ガッツポーズは、自信のくじけそうな気持ちに打ち勝った証です。相手との勝ち負けではなく、自分に負けないことを目標に全力を出し尽くすことが、体育祭を通して皆さんに教えたかったことです。皆さんはその期待に十分応えてくれました。そして順位に関係なく声援を送り続けていたほかの生徒の皆さんにも感激しました。3年生が後輩に託した熱い思いをたすきにして手渡せたような体育祭であったように思いました。この伝統が次につながることを期待します。大変多くのお客様がお越しになっていただいたことにこの場を借りてお礼いたします。
 
 
自然学園の体育の授業では、できないことをできるようにする一人ひとりのつまずきに応じた課題を克服する支援から始めていきます。体育祭では、なるべく次の動作がしやすいような指示を具体的に提示することに気をつけ、認知的なつまずきをカバーしていきます。勝敗よりも競技に参加する楽しさが実感できるような合理的配慮を取り入れていきます。
みんなで体を動かして、汗を流して、大きな声で応援して、本当に楽しかったと思える体育祭にしたいと思います。皆さんの活躍を期待しています。体を動かすことや小中学校の時代に体育の授業を苦手としていた人も、精一杯我を忘れて競技に打ち込む自然学園在校生の元気な姿をお見せすることができたと思います。

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