[高等部通信11月号]学園長より~可能性の扉~④

2018年12月28日

4、「卒業生座談会『僕たちの未来』」を通して就職について思うこと
 
座談会に参加した卒業生の一人は、4月から就職した会社でなかなか慣れることができず、怒られることが多かったようです。怒られたり、注意されたりすることにかなり神経質になり、いままでの経験から非常に怖く恐れるもの、自分のすべてを否定されることと記憶している卒業生には、中学校の時に経験したようなきつい口調で、ミスを指摘されたり指導されると中学校の先生を想像し、頭ごなしに怒られている姿と重なり緊張と恐怖心ですくんでしまうようです。もちろん業務上必要なことでパワハラなどではないのですが、本人はわかっていても、連絡や相談、報告が無意識的に滞ってしまうようです。
企業が採用基準として挙げている条件の一つとして、相手の指示を最後まで聞いて理解できる能力です。分かりづらい内容は確認して慎重に行動できることが要求されます。
指示を早合点して早急に行動してミスを犯してしまうよりは、ゆっくりでも指示通り行動できる能力が必要とされます。
ミスを犯してしまったら素直に謝り、次の行動の指示を仰ぎ、的確にミスを補える愚直さが要求されます。ミスを隠そうと嘘をつき、言葉巧みに言い訳する人はむしろマイナスになります。

業務を遂行するポイントは、自分自身のつまずきを把握して、そのつまずきを少なくするためにどうしたらよいのかを理解し、対処方法を知り、そのことを実行できる能力です。
ミスを起こしてしまったらすぐに助けを求め、素直にアドバイスを聞き入れ、行動に転換できる能力です。当然誰でもミスを犯してしまうことがあります。その時に指示があおげるコミュニケーション力や、自分の欠点を相手に伝えられ、配慮を求められるソーシャルスキルが要求されるのです。

その卒業生は、自然学園の先生方に励まし支えてもらったことが、気持ちが切れなかった理由だと話してくれました。本人も相当落ち込んだようです。他の卒業生も最初はなかなか思うように会社に適応できなかったと話してくれました。当然、怒られることもあったようです。でも彼らは自分のミスに素直に向かい合い、会社の人たちと話し合い、ミスを起こさない方法を工夫し努力することで、会社の人たちに受け入れてもらい、どうしてもできないことは配慮してもらいながら業務の遂行ができていると話してくれました。
そういう意味では、文字通り彼らのつまずきに沿った合理的な配慮を行ってくれる企業に恵まれた結果と、彼らの努力の成果だと思います。彼らが自然学園にいる3年間で企業に受け入れてもらえるスキルを身に着けたことが大きく起因していると思います。

今自然学園の高校3年生は、必死になって企業の内定を取り付けるために、就労実習に臨んでいます。企業見学や説明会、一次面接をクリアしながら、最終の就労実習を終えて、企業から内定が出た人たちが少しずつ増えてきました。やはりいち早く企業から認められた生徒を考えてみると非常に素直で、何事も積極的に取り組んできた生徒です。そして何より就職に対しての意識が高く、クラスの仲間を気遣うことができ、学校行事でもクラスの団結や協調性に積極的に貢献する人たちです。それは入学した時から持ち合わせていたスキルではありません。学校生活を通して、時間をかけて積み重ねてきた自分に対しての自信や、友達との信頼関係が社会性の向上を後押しした結果だと思っています。決して言葉が巧に扱え、コミュニケーション力が優れている生徒ではありません。どちらかと言えば不器用で自分の気持ちを表現することが苦手で自己PRが下手な生徒です。

ですが3年間積み重ねた努力や彼らの誠実さをちゃんとまわりの大人は見ていてくれると言うことだと思います。このようなイベントを通じてこれから就職を考えている人たちに勇気と希望を持ってもらいたいと考え実施に至りました。少しでも多くの人たちに感動を与えられた座談会であったならば幸いです。

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