[高等部通信11月号]学園長より~可能性の扉~④

2018年1月9日

4、おもいやり収穫祭特別企画「卒業生座談会『僕たちの未来』」(1)

 

今回も思いやり収穫祭の特別企画として卒業生特別座談会『僕たちの未来』を私が座長になり座談会形式でパネルディスカッションを行いました。自然学園を卒業したOB・OGに今現在の自分のこと、今、取り組んでいることや仕事のこと、職場での人間関係のことなどを話してもらいました。いままでの自分自身で経験してきた息苦しさや人間関係で経験した辛さなどにも触れながら、「自然学園に入学して自分自身がどう変わったのか」を学校生活の思い出とともに語ってもらう討論会になりました。どのように自分の特性や欠点と向き合い、職場と折り合いをつけているのか、またこれからの夢などについても話してもらいました。

 

情緒面での問題や自閉症スペクトラム障害などの発達障害傾向があり、将来の就労も考えたうえで中学校卒業後の進路を悩んでいらっしゃる保護者の方々に、実際に働くためにどのような能力が必要なのか、おなじような特性や悩みを持っているお子様が職場でそのつまずきをどのように克服しているのか、また会社に理解されているのかを現実に卒業生の声を聞いてもらうことで、進路や就労に向けた今後の進路の参考にしていただきたく卒業生に話をしてもらいました。

 

当日は卒業生8名のOB、OGの皆さんがお忙しい中、時間を作ってお越しになってくださいました。このお話をさせていただいたときに全員が快く当日の参加を了承してくれました。現在就職している卒業生が7人で、2人は、卒業後4月より障害者就労移行支援事業所に数か月在籍して就職した卒業生で、卒業後大学に入学した現大学生が1人の計8人です。快く引き受けていただいた卒業生に深く感謝しています。

 

全国の公立小中学校の通常学級に在籍する児童生徒のうち、発達障害の可能性のある小中学生が6.5%に上ると言われています。40人学級で1クラスにつき2、3人の割合になります。しかし4割弱の児童生徒は特別な支援を受けていない現状があります。その中で、「書く」「聞く」「計算する」など特定の分野の学習に困難を示す学習障害(LD)の可能性がある児童生徒は4.5%。注意力の欠如や衝動性などを特徴とする注意欠陥多動性障害(ADHD)とみられる児童生徒は約3%で、知的発達に遅れのない高機能自閉症と判断された児童生徒は約1%とされています。

座談会に参加していただいた卒業生は、普通級での学習のつまずきや人間関係のトラブル、いじめなどがきっかけとなり、不登校になり、支援学級に在籍を移し中学校を卒業したなどの経験をほとんどの人たちが持っています。本校の卒業生は上記に示したような特別支援が必要とされていた人たちであり、現在は精神障害者保健福祉手帳か療育手帳を取得している人たちが大半を占めています。中学校の卒業後の進路として自然学園を選択して入学してくれた人たちです。

 

はじめにいじめられた経験がある人はいますか?と言う質問をさせていただきました。

前回のブログにも書かせていただいたように、文科省の発表ではいじめの認知件数が増加している現状において発達障害傾向の生徒の人間関係のトラブルの多くは、いじめと深く関係しています。一方的な発言や衝動的な行動が他者との衝突や摩擦を生じ、行動が遅れがちで不注意さが伴う言動がからかいや仲間に入れてもらえないきっかけになり、いじめと言う意識は希薄なものの陰口やSNSでの書き込み、いじりの対象になり本人にとっては非常に深刻ないじめの被害に悩んでいるケースは、現在のいじめの現状を物語る象徴的ないじめのケースであると言えると思います。このようなケースも今回の調査の認知数に含まれていることで大きく認知数が上昇した原因の一つになっています。

 

話を聞くとこのような出来事は座談会に参加してくれた卒業生のほとんどが経験しているケースだと思いました。先生に相談しても解決しない、いじめた相手より自分のほうに問題があると言われたという人たちは事前に聞いたリハーサルでも多く耳にしました。

そのなかで何人かの生徒はかなり壮絶ないじめられた経験を話してくれました。壮絶な暴力などの実話に涙を流すお客様が数人いました。

どの生徒も共通して自分のどこがいけなかったのかわからなかったと言っていました。そして学校も担任も含めてだれも助けてくれる人はいなかったと話してくれました。入学前の面談や入学後のアセスメント資料を通して不登校やいじめを経験してしたことはわかってはいたものの入学の笑顔のほうが印象に深く残っている私としては、彼らの言葉から伝わる生々しい、いじめ体験に強いショックを受けました。話の中に死ぬことも考えたと言うコメントもありました。そのことがきっかけで先生をはじめとして、学校そして大人に大きな不信感を抱えたままなかなかそのことが払しょくできずに無気力な精神状態が続いた経験を話してくれました。自然学園の学校生活を通して立ち直るきっかけになったことを話してくれたことにうれしさを感じました。

 

勉強が苦手で、授業についていけなかった経験がある卒業生に話を聞くと板書をノートに写すことが苦手・教科書などの文字を読むことが苦手・説明や指示が記憶に残りづらいことで宿題を提出できない、授業中に答えられない、試験が全くできない等につながりそのことが理由で先生に無視される、先生との関係が悪い、クラスの生徒に馬鹿にされることになったことを話してくれました。不登校になった生徒もいたそうです。文部科学省が以前発表した不登校に関する実態調査報告書に小学校、中学校での不登校になった理由として「無気力」「不安による情緒混乱」などがありましたが、学力不振が原因でこのような理由で不登校に至る経緯や小学校高学年のときから学力不振がきっかけで支援学級に移籍するなど卒業生から聞いた話と現状の不登校や支援学級の在籍生が増加している現状が直接に結びつくことが多く、報道の調査結果がより信憑性を持って受け入れることができたお客様が多かったのではないでしょうか。また公立学校での発達障害傾向のお子様の現状がよりリアルに伝えられたのではないかと思っています。

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