[高等部通信11月号]学園長より~可能性の扉~⑤

2018年1月12日

5、おもいやり収穫祭特別企画「卒業生座談会『僕たちの未来』」(2)

(進路について)

 

座談会に参加した卒業生の一人は、自分の特技であるPCのスキルを生かした事務的な業務ができるか企業の入社を希望して、卒業後すぐに就職せずに就労移行訓練サービスを行っている障害者就労移行支援事業所でPCスキルを学んでいました。しかし就職活動が難航していたそうです。本人はその理由として面接を挙げていました。元来、「心の理論」と呼ばれる相手の気持ちになって考えることが苦手で、企業の面接官の質問の意図が読み取れず、自分の思いを一方的に話してしまい、相手の聞きたいことを話すことができませんでした。

企業が採用基準として挙げている条件の一つとして、相手の最後まで聞いて指示を理解できる能力です。分かりづらい内容は確認して慎重に行動できることが要求されます。

指示を早合点して早急に行動してミスを犯してしまうよりは、ゆっくりでも指示通り行動できる能力が必要とされます。

 

ミスを犯してしまったら素直に謝り、次の行動の指示を仰ぎ、的確にミスを補える愚直さが要求されます。ミスを隠そうと嘘をつき、言葉巧みに言い訳する人はむしろマイナスになります。面接に関して面接官が重点に置くところは、こだわりを押し通す強い意志ではなく、素直な柔軟さです。本番ではいつも面接に力が入りすぎて、すこしでもプラスに材料になると思ったことを話しすぎて面接官に誤解を与えてしまっていたようです。

 

採用のポイントは、自分自身のつまずきを把握して、そのつまずきを少なくするためにどうしたらよいのかを理解し対処方法を知り、そのことを実行できる能力です。

ミスを起こしてしまったらすぐに助けを求め、素直にアドバイスを聞き入れ行動に転換できる能力です。当然誰でもミスを犯してしまうことがあります。その時に指示があおげるコミュニケーション力や自分の欠点を相手に伝えられ配慮を求められるソーシャルスキルが要求されるのです。

 

自然学園の先生方に励まし支えてもらったことが、気持ちが切れなかった理由だと話してくれました。本人も相当落ち込んだようです。その卒業生は、なかなか就職が決まらず面接に臨むたびに不採用になって精神的に不安定になったとき、自然学園の先生方の励ましが心の支えになったと話してくれました。やはりコミュニケーションが一方的で人と協調してグループ活動をこなすことが苦手な生徒でした。自分の欠点を認め理解できたときから面接官の対応が変わり始め、内定を頂くことができたようです。

 

 

卒業後すぐに就職した6人の生徒に関しても最初はなかなか思うように会社に適応できなかったと話してくれました。当然、怒られることもあったようです。でも彼らは自分のミスに素直に向かい合い、会社の人たちと話し合いミスを起こさない方法を工夫し努力することで会社の人たちに受け入れてもらい、どうしてもできないことは配慮してもらいながら業務の遂行ができていると話してくれました。

そういう意味では文字通り彼らのつまずきに沿った合理的な配慮を行ってくれる企業に恵まれた結果と彼らの努力の成果だと思います。彼らが自然学園にいる3年間で企業に受け入れてもらえるスキルを身に着けたことが大きく起因していると思います。

 

今自然学園の高校3年生は、必死になって企業の内定を取り付けるために、体験就労に臨んでいます。企業見学や説明会、一次面接をクリアしながら、最終の体験就労を終えて、企業から採用の通知を受け取った人たちが少しずつ増えてきました。やはりいち早く企業から認められた生徒を考えてみると非常に素直で、何事も積極的に取り組んできた生徒です。そして何より就職に対しての意識が高く、クラスの仲間を気遣うことができ、学校行事でもクラスの団結や協調性に積極的に貢献する人たちです。それは入学した時から持ち合わせていたスキルではありません。学校生活を通して、時間をかけて積み重ねてきた自分に対しての自信や友達との信頼関係が社会性の向上を後押しした結果だと思っています。決して言葉が巧に扱え、コミュニケーション力が優れている生徒ではありません。どちらかと言えば不器用で自分の気持ちを表現することが苦手で自己PRが下手な生徒です。

 

ですが3年間積み重ねた努力や彼らの誠実さをちゃんとまわりの大人は見ていてくれると言うことだと思います。このようなイベントを通じてこれから就職を考えている人たちに勇気と希望を持ってもらいたいと考え実施に至りました。少しでも多くの人たちに感動を与えられた座談会であったならば幸いです。ご参加いただいた卒業生の皆さんお忙しいところありがとうございました。

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