[高等部通信11月号]学園長より~可能性の扉~2

2019年12月20日

2、自然学園 学園祭(思いやり収穫祭)模擬店、作品展示

各クラスで出店した模擬店は、保護者の皆様にお手伝いいただくことなく、生徒が主体的にクラスごとに協力しながら、できるだけたくさんのお客さんが購入していただけるような商品の工夫をしたようです。特に2年生、3年生はふじ祭りの経験を踏まえて、なるべく多くのお客さんに喜んでもらえるような商品を提供して売り上げを挙げていこうという目標をもって、商品の調理、販売、告知、呼び込み、材料の仕入・管理、かたづけ、食器、調理器具の洗浄などそれぞれの役割の中で企画段階から熱心に取り組んでいました。私はそんな生徒の様子を観察しながら今回の成功を確信していました。

自分が遂行した業務を喜んでくれる人たちのために働くこと、そのことにやりがいを感じてより喜んでもらえるために自己研鑽を図り努力することを経験のなかで体感することが、自然学園で行う学校行事の大きな意義だと思っています。

自然学園は体験授業を積極的に取り入れていますが、実際に行動として経験してみることで日ごろからSST(ソーシャルスキルトレーニング)で学んでいる「協調性」「協働」「トラブルがあったときの問題解決のスキル」「社会的な秩序における礼儀を踏まえた人に対する態度や言葉遣いなど社会性の育成」などは、実践で繰り返し学ぶ経験から般化できるものです。

それぞれの役割を誠実に遂行して、クラスメートの「ほう・れん・そう」(報告・連絡・相談)ができなければ、お客さんの注文を受けて調理を開始し、短時間で盛りつけまで手早く行い、接客担当者がお客様に料理をお届けする連携はできません。ビジネスマナーで必ず学ぶ、敬語や「お待たせしました」「ありがとうございます」「申し訳ございませんでした。」「承知いたしました」など必須事項がここには全部含まれています。食品の調理には生徒にとって苦手な視空間的なワーキングメモリーや言語的短期記憶などの認知的な処理を必要とする継次処理力や同時処理力がないと一連の作業が完遂しません。授業で学んだ苦手さを作業スキルやソーシャルスキル、グループワークをおさらいして必死に苦手さと対峙した様子が垣間見られます。

模擬店などでお客さんに美味しいと感じてほしいと思い考え企画して調理した商品を、おいしいと喜んで食べてもらったうれしさが成功事例となって、今までの自身の行動の肯定につながります。そして自分の気持ちの中で対人関係のやり取りが落とし込めたときに、社会的に正しい行動の定着につながるものです。

高等部の生徒の皆さんが行なった模擬店に関しても、とても好感がもて楽しませてもらいました。高等部3年生によるホットサンド、コーンスープ、高等部2年生によるみそ・しょうゆラーメン、高等部1年生によるタピオカジュースの屋台を出店しました。高等部3年生のホットサンドは本当におししく、ハムチーズサンド、焼きそばサンド、シュガーバターサンドなどバリエーションが豊富で、ご来店いただいた皆さんは、とても喜んでくれました。高校2年生のラーメンも工夫をこらした味付けでどこか懐かしい屋台のラーメンの味がしました。高等部1年生の巷で大人気のタピオカドリンクもとても人気が高く、1番人気のロイヤルミルクティーやカルピスやいちごミルクなど模擬店前は大賑わいでした。皆さんがそれぞれの役割を責任もって分担しながら、協力し合って、お客様に慣れない手つきで提供した姿に感動を覚えました。

大学部によるチーズ、ベーコンなどを燻製にしたランチプレート、おつまみプレートなど最強のランチメニューとしてご来客いただいた皆さんのお腹を満たしてくれました。また小学部による的当てゲーム、中学部による駄菓子屋、高等部3年による輪投げ、高2によるボウリングゲームの模擬店も最高に楽しいアミューズメントパークになりました。中学部によるフランクフルト、電球ジュースは小さいお子様が大変喜んでいました。おかげさまで楽しい思いやり収穫祭を開催することができました。
売り上げは高等部3年生が最も多く、高等部2年生の模擬店が次に多い売り上げを記録しました。生徒の充実した笑顔に私もうれしくなりました。

時には「遅い!」「味が濃い」「味が薄い」などと怒られながら、効率的に安定した味が作れるように努力したことで、「ありがとう」「おいしかったよ」とお客さんから言っていただいたことの喜びや充実感は、社会に出るうえで貴重な経験になったと思います。それと同時にお金を頂くことの厳しさを肌身で体験できたのではないでしょうか。このような実践的な経験を積み重ねるなかで、自然学園の学校行事の一つひとつが、ソーシャルスキルを体得する場であり、「働くことの意義」「働くことは何か」を考え、答えを探していくキャリア教育になっていると思っています。

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