[高等部通信2月号]学園長より~可能性の扉~②

2018年2月23日

2、第11回定期講演会の報告 
自然学園では発達のつまずきのある子どもたちの理解を保護者の方々に深めてもらう機会として発達障害がある子どもたちの保護者の方々を対象にした発達障害セミナーを自然学園の定期講演会として開催しています。保護者の方々と共に発達のつまずきのある子どもたちのより良い支援方法を考えていく勉強会にしたいと思っています。
11回目となる今回の定期講演会は、星槎大学大学院准教授の阿部利彦先生の講演で『気になる子の子育てリフレーミング~子供の味方、ほめ方、励まし方~』をテーマにして前回と同じ大宮ソニックシティーで、1月21日の日曜日に開催しました。非常に強い寒波で寒さが厳しい最中、多くの保護者の方や発達障害の支援にかかわる関係者の方々が多くいらしゃっていただきました。この時期、風邪など体調がすぐれない方々もいらっしゃったと思いますがお越しくださいましたことに深く感謝しています。

2013年に発表されたDSM5によって自閉スペクトラム症が定義されるなど自閉症の診断基準が改定されました。それによって1歳7か月からのお子様にスクーリニング検査による自閉症の診断が可能になりました。それまでは4歳、5歳までのある程度の成長を見なければ自閉症に確定診断はできなかったのです。そのことによって自閉症の診断を受けたお子様の保護者の方々の間で早期の療育の関心がたまってきています。療育は病院や保育施設が一方的に行うことではなくまず両親が自閉症のお子様の特性を理解したうえでお子様との関わり方を学んでいくことが必要とされています。行動の背景を分析することで社会生活上の問題を解決するための取り組みの理論を応用行動分析学(ABA)と言います。欧米では発達障害があるお子様の療育にその実践が行われてきました。そして保護者が発達障害のお子様の療育を家庭でも実践するためにペアレンツトレーニングが一般的になっています。日本でもDSM5の改定を背景に療育が注目されると多くの支援機関でペアレンツトレーニングが行われるようになりました。自然学園のバンブー教室でも冬期講習からペアレンツトレーニングの講座を設けました。これをきっかけとして元国立精神・神経センターの精神保健研究所でACT-Jプロジェクト臨床チームのチームリーダーを務め、現在はメンタルクリニック等の非常勤職員や大学、専門学校等の非常勤講師および福祉センターなど各地の障害者施設や放課後デイサービス等のスーパーバイザーでご活躍されている土屋徹先生に講師をお願いして、応用行動分析学(ABA)にもとづいたペアレントトレーニングやソーシャルスキルトレーニング(SST)の実践のための職員研修会を開催しました。ちなみにACTとは、重い精神障害がある人たちが地域で生活するための支援プログラムであり世界各国で行われている最も効果的な支援プログラムの一つです。

話がすこし脱線しましたが、阿部利彦先生は著書を通して『リフレーミング』とはいつも違う見方や新しい味方で、あることをとらえ直すことだとし、保護者の皆様が自分の感覚や経験を大事にしながら、子育てをちょっとだけ『リフレーミング』していただければきっといい関わりが見つかるはずだと記しています。定期講演会ではお子様のプライドを大切にしながら、ほめる技術を磨くことでお子様が成長できる関わり方を分かりやすく講演していただきました。講演では『リフレーミング』の具体的な事例として「ほめ方」「お子様の気持ちを受け止めるコツ」「叱り方」など自閉スペクトラム症など発達障害のお子様の特色をわかりやすくお話しいただいた後に、ではそのような特色があるお子様に対して具体的にどう関わればいいのかを、日ごろからご家庭で保護者の方々が悩まれている上記のことがらに焦点を当てながらアドバイスしていただきました。

まずは保護者がお子様との関わりで①できる限り安心感を持たせるようにしているか②成長に合わせてほめ方を工夫しているか③お子様が話しているときに口を挟んでいないか④ほめる時の中継ぎをしたことがあるか⑤言い方の工夫をしてお子様にはなしているか⑥怒らないように気を付けているか⑦指示は具体的に出しているか⑧否定的な言葉を使っていないか⑨お子様のこだわりを気にしないようにしているか⑩元気の出る言葉(ふわっと言葉・励まし言葉)をたくさん持っているかの⑩項目を確認されていました。どうしても日常の家庭生活のなかでは怒ることが多くなり、イライラすることが多い中で以上のような配慮をお忘れになっている保護者が多いように思いました。とくに⑩の元気の出る言葉はなかなか多くはないことに気付かれたのではないでしょうか。阿部先生はお子様との関わり方で重要なこととして4つのことを掲げていました。まずはアメリカ合衆国の心理学者であるメアリー・エインスワースが1982年に提唱した『セキュアベース』(心の安全基地)をお子様に作ってあげることであり、それをつくるためにはお子様が自分の頑張っている姿をよく見てくれると実感させることと「場の構造化」を実践してあげること、そして子供の成長とともにほめ方を工夫する「リフレーミング」が必要であるとのことでした。

そしてその具体的な対応としては「ほめ方のコツ」「子供の気持ちの受け止め方のコツ」「叱り方のコツ」などを実践も交えてわかりやすく教えていただきました。
私も今回の講演をお聞きして教員にも非常に参考になる話であったと感じたとともに、先日の土屋徹先生の研修会でのペアレントトレーニングが一番必要なのは教員だという言葉が記憶によみがえりました。保護者の皆様にも我々教員にも非常に貴重なお話を頂きました。

お問い合わせはこちら