[高等部通信2月号]学園長より~可能性の扉~⑥

2018年3月13日

6、学習支援で大切なもの

高等部の上記に示した学習のつまずきの原因になっている、視覚や聴覚で処理する認知の偏りによるつまずきから学習意欲が極端に低下しているケースが目立ちます。
逆に言えばこのようなお子様にみられる興味の偏りという特徴は、興味を持てる楽しいと思うことにとても高い集中力や持続力を発揮して、夢中になって取り組めることができるということです。また自信があって取り組める課題は、やるべきことが明確に示されていればその手順にしたがって粛々と取り組める能力はあるとういうことだと思います。

学校の漢字は覚えられないのに、鉄道ファンの人たちには駅名なら漢字で覚えてしまう人が多いことが一つの例です。偏りがある能力を興味がないものにでも発揮できるようになればと保護者の方は常々お思いになっていることでしょう。高等部のお子様の特徴である好きなことに対するこだわりや執着心は、認知レベルの困難さをいとも簡単に凌駕する能力を潜在的に秘めています。

一人ひとりの感覚的な偏りや情報を処理する認知力の凸凹を把握できれば、どのような覚え方なら記憶しやすいのか、どのようなに課題を提示したら課題に取り組みやすくなるのか、どのように問題や課題のプリントを工夫したら解答欄に答えが書きやすくなるのかなどを考えて課題や問題に取り組めるようになることは不可能なことではありません。

そしてできたことをほめて認めてあげれば自信が持てるようになります。だれもが褒められることを嫌うお子様はいないと思います。今まで自分では一生懸命にやっているつまりでも、出来ないことや間違えることが多いことに対して、怒られたり馬鹿にされたり蔑まされたり、健常のお子様が経験したことのない思いをずっと重ねているお子様方が高等部にお通いになっている生徒の皆さんなのです。

一生懸命取り組んでも認められないのなら、やってもしょうがないと諦めるのは大人だって同じです。ましてや非常に強いストレスや劣等感を持ちながら、他の選択肢が与えられないのであるならばそこから逃げたくなるのは十分理解できることだと思っています。
情緒が混乱や無気力で不登校になる生徒の原因に学力不振が上位に上がりますが、自信が待てなくなれば学習意欲がなくなります。学習無気力になる状況が勉強においては、学力不振になる一番の原因であると私は思っています。

だからこそ自信をつけさせていくことが大切です。苦手だと思うことに自信をもたせて自己肯定感を回復させていくことが、学力が向上する大きな要因になると思います。
そして今すぐクラスメートと同じような問題を解けるようにするのではなく、そこに結びつく基礎的な内容からクリアしていくことが大切です。今年第94回箱根駅伝で4連覇を果たした青山学院大学の原監督が、優勝する強いチームにするために行ったことの一つとして、まず学生に自分に手が届く目標を設定させることだと話していましたが、できることが一つでもあれば、次の目標が見えてくるものです。何もかもできないままでは、どこから勉強してよいのかわからず、暗中模索のまま目標を定めることさえできません。目の前の次にできることを目標に置いて、努力してできるようにすることが高等部で実践しているスローステップの学力アップメソッドと同じだと思っています。

学習計画を立てるには、今自分がつまずいているところからもう一歩で手が届きそうな課題にチャレンジできるような目標を立てることが大切です。そうしていけば、課題ができた喜び、達成感を経験させていくことができるでしょう。できないことでの失望感より多くの成功体験が上回ることによって次のステップに向かう好奇心や学習意欲が出てきます。
そして人は褒められることで自尊心が満たされ、そこで得た自信が向上心につながって行くものなのです。最初は凸凹の凸のスキルで解法が見つけられるような課題を選んであげることから始めることが重要なのです。
褒められる子のないお子様方は、なによりも褒められたい欲求で満ち溢れています。ほめてあげるために必要なアセスメントや、課題設定および勉強に興味を占めさないお子様に対してのかかわり方を踏まえた学習計画が、自然学園高等部スローステップメソッドなのです。

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