[高等部通信3月号]学園長より~可能性の扉~3

2020年3月23日

3、卒業生へのメッセージ

令和2年 自然学園高等部・大学部卒業式 式辞
『寒さや暖かな日を繰り返しながら、日増しに春の足音が大きくなり、草木は柔らかに芽吹き、春を確実に感じられるようになった現在、卒業生の皆さんの気持ちにも春の訪れが実感できていることと推察します。
2月27日に発表された安倍首相の新型コロナウイルス感染拡大防止のための公立小・中・高の臨時休校要請に対応し星槎国際高等学校および自然学園高等部では3月2日から3月13日まで臨時休校としました。
本日の卒業式に関しても感染拡大防止の対策としてできるだけ時間を短縮して実施する運びになりましたが、卒業生の皆様方には例年どおりに卒業式が挙行できないことを大変申し訳なく思っています。また保護者の皆様方のご理解ご協力に改めて感謝しております。そしてこのような状況の最中、皆様を目の前にして卒業証書を直接手渡しできたことに深い喜びを覚えています。
本日巣立ちの日を迎えた高等部18名の皆さん、大学部4名の皆さん、卒業おめでとうございます。

さて、今、皆さんに手渡した自然学園の卒業証書は、在籍中に履修した全ての学習を修了したという証だけではなく、卒業生の皆さんが社会に参加するうえで必要なスキルに関しても卒業認定を許可できる高い社会性を育んだ証になるものです。私たちは自信を持ってあなた方が巣立つ姿を見送ることが今日できます。こんな気持ちを抱かしてくれた卒業生の皆さんを愛しく思っています。卒業生の皆さんにお渡しした一人ひとりの卒業証書にそんな思いを込めました。

サマーキャンプやスキー教室、音楽祭、学園祭、クリスマス会など多くの学校行事を通して目の当りにした皆さんの成長は目を見張るものがありました。卒業生の皆さんは、誰もが「指示通りの行動をすること」「他の人と協調した動きができるようになること」「人に援助が求められること」「気持ちの安定を長く保てること」「気が散らないで学習や作業に集中できること」などの課題を持って自然学園に入学してきたと思います。このスキルは特別支援学校の受験を経験した人ならわかるように、入試の学力考査、実技検査や面談等で図られた合否を決める大きな要素であり、就労に求められる基本的なスキルです。
今お話しした苦手さ、つまずきは他の人たちには、なかなかわからない、見えない困難さなので、できないことを指摘されて自信を無くしてしまったことが卒業生の皆さんには経験があると思います。バカにされたり、いじめをうけたりしたことが重なり、人の目が気になり人前で緊張したり、話せなくなったり、クラスにいることができず、居場所がなくなってしまった人たちばかりではないでしょうか?

そんなことが起因して入学しても問題行動を繰り返してなかなか改善できない人が多かったように思います。自分自身でつまずきを認めることができなければ当然改善まで至りません。
いつの日かそんな卒業生の皆さんにも大きな変化が出てきたように思いました。目に見えて私が感じるようになったのは2学期以降からのあなた方の姿です。特に就職希望の卒業生の皆さんは、企業での実習を繰り返すことで社会に出る厳しさを自分なりに感じたように思いました。このままじゃ社会に出ることができないという焦りが募っていた中で、自分に与えられた仕事に対してできることをしっかり取り組もうと考えるようになった人たちがいたことがこのクラスのムードを大きく変えたように私は思っています。

すこしずつ時間が経過して自分を受けいれてくれる先生方を信頼してきたことから、自分自身にゆとりが生まれクラスメートを受けいれ自ら人のつながりを持つ力を芽生えさせていきました。それでも時折不安に駆られ、クラスメートの不満を口にする生徒もいました。人とつながる力から生まれたクラスの団結力やコミュニケーションは、学校や人に対する不信感を徐々に払拭していきました。皆さんにとって自然学園は自分を受けいれてくれる居場所になったのだと思います。
皆さんが努力で勝ち取った進路にすすむことが決定した安堵の気持ちでこの卒業式を迎えることができました。卒業生の皆さん、皆さんを支えてくれる周りに人たちに感謝しながら、絶えず悩み、疑問を持ち、間違えを素直に認め行動に移せる人になってください。皆さんだったらきっとできるはずです。このことを卒業する皆さんに贈る最後の言葉とさせていただきます。
保護者の皆様にいたしましては、これまでいただきましたご厚情に深く感謝いたしますと共に、今後ともよろしくお願い申し上げます。

さあ、卒業生の皆さん。羽ばたきの時です。胸を張って、笑顔で飛び立ってください。自信をもって堂々と歩んでください。
ご卒業おめでとうございます。』

令和2年3月8日
自然学園学園長  小林 浩

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