[高等部通信3月号]学園長より~可能性の扉~5

2021年4月1日

5、お子様と養育者の相互関係

家庭と学校は子どもたちにとっての心の成長の場となります。いずれかに自分の居場所を見出すことができないお子様は、発達のゆがみが生じてきます。母親との信頼関係で培ったbeing(存在価値)は、自分の居場所がない学校生活で忘れ去られ、できること、すなわちdoing(行為)だけが評価の基準になります。できない人はまるで価値がないように扱われます。

そんな環境では、誰もが自分が受け入れられているとは思わないでしょう。自分がいても良い存在であると扱われることで自分の存在価値への信頼が生まれるということです。

子どもは母乳を与える母親の瞳を見ていて、自分で視点を向けることはできないそうです。自分の認識できるエリアに入ってきたものだけを焦点を合わせて見ることができるのだそうです。母親の顔が見えるときは、いいことが起こるときに見える風景であり、「見られている。ケアをしてくれる。」という意識が目覚めることに繋がるそうです。動物より11か月早く生まれる人の赤ちゃんは自分をケアしてくれる人がいてくれるために、泣くことで自分をアピールして、心の成り立ちに必要なメッセージを送っているのです。そのことが、「自分が良いものだから良いことをしてくれる」という相互性の気づきになるのです。そして母親との間に自分の存在価値への信頼が生まれてくとされています。

「人見知り」は生後6か月前後で始まり、安全でない人を感じ取る力がついてきます。母親との関係を自分の安全基地として、自分の大切な人と感じ取ることで、はじめて見知らぬ人に関心を持ち、人とつながる広がりが出てくるそうです。

以上のようなことがうまくいかず心の発達が歪んでしまうと愛着障害などお子様の目に見える問題行動が強くなるのです。そうなると幼児期では交流的な関係が広がりにくく社会性が育ちません。肯定された記憶を持たないお子様は失敗しても見放されない安心感が持てず分離不安が強くなり、攻撃性が出てきます。幼児期で決まり事を守ることが出来ないお子様は学童期になっても個人的な約束は守れず、安全と安定の基準を自分の中につくることができないままになってしまいます。このように自尊感情と自己肯定感が傷つき、他者との相互性による抑制が不均衡になると他者に対する批判的な攻撃性が目立ってくるのです。以上のことが田中先生のセミナーでお聞きした内容です。

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