[高等部通信3月号]学園長より~可能性の扉~6

2022年3月31日

6、終わりに

高校3年生に次いで高校1・2年生の後期試験(学力考査)が終了しました。結果を出した生徒は、自分にとっても大きな自信になることでしょう。一人ひとりが頑張り進級を決めています。

内定が決まっている高校3年生は、卒業認定試験にパスすれば高校卒業証書を誇りにして社会に巣立つことになります。今までビジネスマナーなどで学んだソーシャルスキルを生かす時がきました。社会に出てからの成功を心から祈っています。

 

令和4年度 自然学園高等部卒業式 式辞

一部省略

『3月10日にまん延防止等重点措置の延長が発表され、その中での卒業式となりました。

本日の卒業式に関しても感染防止の対策として、出席者の限定など通常通りの日程で実施する運びになりましが卒業生の皆様方には例年どおりに卒業式が挙行できないことを大変申し訳なく思っています。また保護者の皆様方のご理解ご協力に改めて感謝しております。

さて、今、皆さんに手渡した自然学園の卒業証書は、在籍中に卒業のために必要な履修教科の全ての学習を修了したという証だけではなく、卒業生の皆さんが社会に参加するうえで必要なスキルに関しても卒業認定を許可できる高い社会性を育んだ証になるものです。私たちは自信を持ってあなた方が巣立つ姿を見送ることが今日できます。卒業生の皆さんの3年間を通じての並々ならぬ努力に敬意を表し、わが校の卒業生一人ひとりを愛しく思っています。

高等部の生徒の皆さんは、誰もが「指示通りの行動をすること」「他の人と協調した動きができるようになること」「人に援助が求められること」「気持ちの安定を長く保てること」「気が散らないで学習や作業に集中できること」などの課題を持って自然学園に入学してきたと思います。特にこのクラスの生徒の皆さんは、自己肯定感が低く、何事に対しても不安が強く先の見通しを持てない特性をどの生徒も抱えていました。そのような意味では、今までの学校生活において、いい思い出より、辛い経験のほうが多くそのことが不安や恐怖として脳裏から離れない人たちばかりでした。卒業生の皆さんの中には、どの生徒もこだわりの強さがあり、他者からの批判を受けたくないあまりに、苦手なことから逃げ、できないことを他者のせいにして言い訳をすることが慣習化されていた人もいました。このようなことからくるあやまった考え方は、集団生活における問題行動につながり、人とのトラブルが頻発し、担任に目を向けてほしいあまり、評価を受けない行動をわざとしているような人がいました。

入学する前は、同級生からバカにされたり、いじめをうけたりしたことが重なり、人の目が気になり人前で緊張したり、話せなくなったり、クラスにいることができず、居場所がなくなってしまった人たちだったはずです。できないことや失敗を避け、自分自身でつまずきを認めることができなければ当然改善まで至りません。

いつの日かそんな卒業生の皆さんにも大きな変化が出てきたように思いました。目に見えて私が感じるようになったのは2学期以降からのあなた方の姿です。特に就職希望の卒業生の皆さんは、企業での実習を繰り返すことで社会に出る厳しさを自分なりに感じたように思いました。このままじゃ社会に出ることができないという焦りが自分に与えられた仕事に対してできることをしっかり取り組もうと考えるようになった人たちがいたことがこのクラスのムードを大きく変えたように私は思っています。企業実習を経験したことで、「働くこと」の意味や意義が理解でき、自分に不足しているスキルに気づき、その改善が就職に結び付くと実感した段階で自分自身のやるべきことの目標が持てたと話してくれた卒業生がここにいます。少なからず4月から実社会で働くことが決まっている卒業生は同じような考えでいたのではないでしょうか。

なによりも素晴らしかったことは、つまらないいざこざや、人間関係のトラブルがとても少ないクラスのように思いました。時間の経過がクラスのまとまりに比例してきました。お互いを理解してクラスメートを必要だと思う気持ちが相手を尊重し思いやる気持ちを育て、他者に対して優先させることや妥協することなどの自立に不可欠な社会性を開花させていったと私は解釈しています。できることやできないことがそれぞれ違う個性豊かな卒業生の皆さん方一人ひとりがこのクラスに居場所を感じていたように私は思っています。

人を受け入れることは自分に自信がなければできないことです。3年間学校生活の中で一人ひとり自分自身のできないことを受け止め、クラスメートに自分自身の良さを認めてもらい長所を引き出してもらった結果、等身大の自分をあなた方は受け止めることができたのではないでしょうか。

少しずつ時間が経過して自分を受け入れてくれる先生方を信頼してきたことから、自分自身にゆとりが生まれクラスメートを受け入れ、自ら人とのつながりを持つ力を芽生えさせていきました。それでも時折不安に駆られ、クラスメートの不満を口にする生徒もいました。人とつながる力から生まれたクラスの団結力やコミュニケーションは、学校や人に対する不信感を徐々に払拭していきました。皆さんにとって自然学園は自分を受けいれてくれる居場所になったのだと思います。

皆さんが努力で勝ち取った進路に進むことが決定した安堵の気持ちでこの卒業式を迎えることができました。卒業生の皆さん、皆さんを支えてくれる周りに人たちに感謝しながら、絶えず悩み、疑問を持ち、間違えを素直に認め行動に移せる人になってください。皆さんだったらきっとできるはずです。このことを卒業する皆さんに贈る最後の言葉とさせていただきます。』

自然学園学園長 小林浩

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