高等部通信4月号 学園長ブログ~可能性の扉~-4

2023年5月22日

5、発達障害があるお子様の学習面のつまずき

高等部に入学された新入生の皆さんはもとより、在籍生の皆さんも勉強に不安を持っている人たちは多いと思います。

LD傾向(学習障害)がある人たちだけではなく、発達障害がある子どもも学習の習得に困難さを感じることが多くあります。例えば、ことばの遅れから生じるコミュニケーションの苦手さが「ひらがな」「カタカナ」の習得に影響を与えたり、数唱から数字の習得をするのに数量のイメージが頭に思い描けなかったりなど、彼らの特性に大きく起因している場合があるのです。このことを数処理と言います。特殊音節が聞き取れないお子様はひらがなで特殊音節を書きとることが難しくなります。ワーキングメモリの問題と合わせて、視空間の認知が弱く、ここに固有受容覚など感覚統合の問題が重なると、ノートの枠に字が収まらず、ひらがなやカタカナを形作れないといったつまずきが生じてきます。

このように、勉強に苦手さを感じている人たちのほとんどが読むこと、書くことに苦手さを感じています。

学力不振のきっかけは、学校の授業に参加できないことから始まるケースが少なくありません。また、授業に参加できなくなるきっかけの一つとして、板書をノートに書き写すことの苦手さを掲げている人がたくさんいます。板書に苦手さがあれば書き写すことで精一杯で先生の説明を聞くどころではないでしょう。その間も授業はどんどん先に進んでしまい、まだ書き写し切らないうちに、書き写していた板書の文字を消されてしまいます。そのような状況を繰り返し「もう勉強なんかどうでもいい」と感じている人は少なくないのではないでしょうか。

このような人は、決して勉強ができない人ではありません。多くの人は視空間のワーキングメモリに問題があり、黒板に書かれた文字や記号を頭の中に短期間記憶しておくことが苦手な人なのです。また、文字の形状をうまく写しきれず、形作れない人は、文字の大きさが揃ってなく、枠にうまく納められない人がいると思います。このように、文字や記号、数字の形を読み取れない人は眼球運動に問題があると考えられていて、うまく書く作業に苦手さを感じている人は、手先の不器用さに関係する微細運動、感覚統合の問題で困難さが生じていると考えられています。また、教科書およびワークなどに書かれている文章を書き出すことも苦手です。このようなタイプの人は漢字を覚えることが苦手な人も多いです。

読むことの苦手さも、勉強の苦手さに直結します。試験に反映するような知識は、教科書に書かれている言葉を覚えるため、正確に文章を読み取ることができない人は得点に結びつかず勉強が苦手な人と判断されてしまいがちです。目で文字や記号、数字を追い、認識できない人も、やはり眼球運動に問題がある人が多いと思います。このような人は文字を目で追っていると段落を飛ばしてしまったり、単語を飛ばして読んでしまうことがよくあります。

ここまでくると、文章を読むこと自体が面倒くさくなり教科書を開くこともしなくなるでしょう。文章の文字や記号などを目で追いながら音読はできるものの、内容を理解することが苦手な人もいます。このような人は言語的ワーキングメモリが弱いので、文や段落が変わってしまうと、前に書かれている内容を保持することができないため長い文章になるほど内容全体の理解に結び付かないのです。主人公の気持ちの移り変わりなどを読み取ることも困難です。

国語の読解問題で、文章から抜き出す問題を解くことはできても、文字制限の字数内でまとめて書き出すことは非常に困難さを生じてしまいます。作文や、人前で相手に伝わるように自分の気持ちを表現することも同様です。頭に思い浮かんだ答えとなる箇所を短期的に記憶し、整理して一つのセンテンスにまとめる作業は言語的なワーキングメモリが必要となります。ワーキングメモリは頭の中のメモ帳と言われていて、情報を認知するための短期記憶であり、その記憶を保持・処理し行動を実行するために大きな役割を果たしています。LD(学習障害)傾向の人たちをはじめ、発達障害傾向があり勉強の苦手な人たちのほとんどが、ワーキングメモリに問題がある人たちです。「授業中質問されても答えられない」、「板書がとれない」、「宿題ができない」、「テストの得点が取れない」等の負担が重なって苦手な勉強から逃げ出してしまうのです。年齢が上がり思春期近くになれば、他の子どもとの比較の中でのコンプレックスを持つようになり、自分に対しての自信を失っていきます。その不安な気持ちが2次障害に繋がっていきます。

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