[高等部通信5月号]学園長より~可能性の扉~⑥

2019年8月5日

6、適切なお子様との向き合い方について
 
ではこのような子どもたちに対してどのような対応をしなくてはならないかということをお話しします。特別支援教育を実践するうえで非常に大切なことです。

『「発達障害と向き合う」竹内吉和著 幻冬舎ルネッサンス新書 』に人間教育の極意は「アメとムチ」という見出しがつけられた章があります。
T字路になっている箱にマウスを入れてアメとムチの効果を調べようという心理学の実験が紹介されていました。エサと電気刺激を両側に仕掛けたT字路と右片側に電気刺激のみ仕掛けたT字路と右片側にエサのみ仕掛けたT字路でどちらがもっとも早く左側に曲がることができるようになったかの実験で最も効果的だったのは、エサのみ仕掛けたT字路であったいう内容でした。それ以外のT字路のネズミには、胃潰瘍ができていて実験を繰り返すうちに動かなくなってしまったようです。非常に強いストレスのかかったネズミは、エサよりも電気ショックというムチの恐怖で無気力状態になってしまったのです。

この実験でわかるようにムチは全く教育効果を示さないのです。学校教育でのムチは体罰や虐待です。大声で怒鳴ることもその一つです。

学校教育の中でのとれるもっとも効果的な方法は、生徒の問題行動、不適切行動に対して無視をするということなのです。これを応用行動分析学では消去といいます。
そして適切な行動がとれた時には思い切るほめまくることが大切です。このことを強化といいます。反社会性の進行を止めるのはこの方法しかないとこの章では結論づけています。

「メリットの法則 行動分析学・実践編」奥田健次著 集英社新書に母親の前で1時間に7回も奇声をあげていた自閉症の子どもを母親から引き離し、泣きの強さが収まってきた段階で母親のいるプレイルームに戻し、一人遊びを始めたら母親に後ろから抱きしめてもらい、また奇声をあげたら引き離すという対応を繰り返すと1週間後に奇声は1日4回程度に激変したという事例が書いてあります。
まさしく問題行動を改善させるヒントがここにあります。

どうしても我々教員は、生徒の問題行動を早急に止めようとする手段として、大きな声で怒鳴ったりすることをよしとしている風潮があります。
特別支援を経験している教員ならだれでもそのことが効果的な手段ではないことに気づくはずです。自閉症傾向強ければ強い子どもほど言うことを聞かず同じ行動を繰り返します。自然学園に通っている子どもたちのほとんどが、小学校や中学校の先生方に強く怒られた経験がある子どもたちです。その記憶だけがトラウマになって無気力状態になっていた子どもたちです。
そんな状態の子どもたちに強制的に問題行動の改善を促したところで言うことを聞くわけがないのです。

子どもたちの特性を理解することから始めなければ何事も始まりません。
そして適正な行動が出来たときに褒めてあげ、認めてあげるころを繰り返しながら、クラスの中での存在意義を示してあげるのです。成功事例を積みあげてさせていくことしか改善の手掛かりはありません。

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