[高等部通信6月号]学園長より~可能性の扉~②-1

2018年7月20日

2、体験就労におけるソーシャルスキルについて
自然学園では、授業のカリキュラムにSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)があります。高等部のカリキュラムにある「ビジネスマナー」もSSTとして取り扱われる教科です。
今年から通級をはじめとして、高校での特別支援教育が見直されるようですが、2015年に高等学校における個々の能力・才能を伸ばす特別支援教育モデル事業が開始され、自治体でモデル校に指定された高校は学校設定教科として「ソーシャルスキルトレーニング」や「自立活動(ライフスキルトレーニング)」や「ソーシャルスタディー」、生活向上のための「コミュニケーション」などと称された教科を導入して、彼らの将来的な自立を念頭に置いたSSTを実践する方向性が示されています。
 このような取り組みは、高等学校の特別支援教育が、発達障害のある高校生にとって、企業就労に必要なスキルがソーシャルスキルだと位置付けているからに他なりません。働くためにどうしても必要とされるスキルをSSTとして学んでいくのです。
では彼らに求められるソーシャルスキルとはなんでしょうか。私は企業の方々への実習のご依頼や卒業生が就職した企業への定着支援などを通して採用の基準として、各採用担当者からお伺いする機会が多いのですが、どの企業も「勤怠」「情緒の安定」「コミュニケーション」に集約されるように思います。

まず「勤怠」で毎日の勤務が安定していると言うことです。このことは家庭での生活習慣が確立していることを意味します。睡眠、食事、入浴のルーティーンが習慣化されていれば授業中に居眠りすることもありません。毎日活気にあふれた学校生活を送れるはずです。

「情緒の安定」に関しては特に精神保健福祉手帳を取得されている生徒は「合理的配慮」を期待されている方々が多いとは思いますが、職場で他の職員に迷惑をかけるような状況がある場合は就労すること自体が難しくなります。気持ちの落ち込みや不安、イライラからくる衝動的な行為は、セルフコントロールできるスキルが求められます。「コミュニケーション」に関しては、聴覚・視覚からの認知について職場で求められるレベルが基準になります。具体的に言えば、口頭だけの指示ではなく、メールや指示書など紙面での指示も含めた優位性に対する配慮はあるものの、個別での対応は期待できません。生産性を重視した職場では特別に個人に時間をかけることは効率性を落とすことになるからです。

 自然学園高等部の授業でも「SST」「ビジネスマナー」「作業」などが時間割に導入されていますが、「作業」は、グループ作業で必要な『協調や協働』のスキルが求められます。それには、具体的には他者との人間関係の構築や「報告・連絡・相談」の「ほうれんそう」など必要に応じたコミュニケーション能力、他の人の状況や行動を認知できる洞察力などが挙げられます。挨拶なども相手の顔色や様子などを認知したうえで的確な声掛けが社会生活の中では求められます。ただ一方的に顔も上げず「おはよう」「さよなら」など言葉だけ発しても人からは受け入れられません。

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