[高等部通信6月号]学園長より~可能性の扉~1

2021年6月7日

1、はじめに

 

日本でも新型コロナウイルスの変異種の感染拡大が深刻化し、終息の目途がつきません。感染者の急増で東京の緊急事態宣言が4月25日から5月11日まで発令されていましたが、5月31日まで延長されています。埼玉県でも蔓延防止対策等重点措置の対象に指定されている地域があります。そのような状況下でも、自然学園高等部では、生徒の規則正しい生活習慣の維持、基礎学力定着のための勉強時間の確保に全力で対応しています。

 

マスクや手洗い、除菌、換気などの感染対策を徹底したうえ、通常授業を予定通り実施しています。何よりお預かりしている生徒の命と健康を第一に考え、学校行事等の開催は充分に検討を重ね、運営には慎重を期して取り組む所存です。ご理解のほどよろしく願い申し上げます。

 

外出しづらいGWの長い休みで生活リズムや勉強習慣が乱れて怠惰な生活を送ってしまっていた生徒もいたのではないかと心配しています。外出の自粛で体を持て余している生徒も多いことと思います。課題や宿題を保護者が一緒に取り組まないとなかなか一人では自主的に取り組めない生徒が多いので、自宅学習でご苦労されている保護者の皆様もいらっしゃることと思います。生徒の皆さんには緊急事態宣言や蔓延防止対策等重点措置の意味を考えて、放課後や休日はなるべく自宅で過ごし、健康管理に努めて有意義な時間を過ごしてほしいと思っています。

 

しかし、生徒も家庭での待機に限界を感じているように思えます。発達障害傾向のお子様方は先の東日本大震災の際も、自閉症や多動性障害などの発達障害のお子様とその保護者の方々は、避難所生活の長期化によって、当初にはなかった様々な困難が生じてきたと報告されています。自閉症のお子様は、もともと変化に対応することが苦手です。これまでの日常生活とはまったく異なる避難所での生活は、大変なストレスであり、不眠、イライラ、パニックなどの症状が悪化します。また、慣れない避難所での生活は、自閉症の多くに見られる聴覚や視覚の感覚過敏症を悪化させたようです。騒がしく、視界に大勢の人が入ってくる体育館などでの避難生活は、一部の自閉症の子どもには堪え難い環境です。一部の避難所で取り入れられたようですが、カーテンやタオルによって周囲の刺激を遮蔽する生活環境がぜひとも必要になりました。避難所では周囲から遮蔽され、夜は暗くすることのできる空間を確保することが望まれます。さらに、東日本大震災で被災した子ども達の中には、発達障害の有無にかかわらず、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や不眠、不安などの症状が見られました。

 

発達障害のあるお子様は、こうした二次障害が起こりやすいハイリスクのお子様方なのです。自宅にいることが余儀なくされ、いつもの生活ができない今の状況はお子様方に大きな負荷をかけることになっています。ましてや家庭学習を強いられている家庭のお子様は好きなゲームなどを勉強によって制限されると余計ストレスやイライラが強くなり、パニックや衝動性が起きやすい状況になります。そのような生徒たちの中には、地震や台風など自然災害に非常に敏感になっている子もいます。新型コロナ関連の過剰な報道で不安が強くなる特性も発達障害傾向には少なくありません。

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