[高等部通信6月号]学園長より~可能性の扉~2

2022年6月16日

2、「うつ」に見られる2次障害について

高等部に在籍する生徒の皆さんは、「読む・書く」に苦手さがあり教科書やワーク的な自主学習教材を消化することにかなりの負担がかかります。ICTを利用した動画などの視聴覚授業でのスクーリングでも彼らのつまずきへの配慮がされる余地はなく、一方的な配信で学習が進められます。そうなると、認知的な問題が起因して継次処理ができず、配信教材のコンテンツを見ても、どこから手をつければ課題を解決できるのかわからない状態になり、視聴覚授業自体が成立しない可能性が高いと思います。現在の通信制高校の利点を生かした視聴覚での自宅学習は、特別支援教育を必要としている、読む・書く・聞くなど認知に偏りがあり、発達障害傾向がある生徒には合わないと私は考えます。

コロナ禍で多くの公立学校では、リモート授業や動画の配信授業が導入されました。しかし、授業についていけない生徒は当然学習課題についていけず、学習に対して気が重くなり、他の人に比べて自分はできないと考え自己肯定感の低さが露呈してくる状況がありました。このことが、学校生活の不安につながったと私は思っています。学力不振は不登校になるきっかけの主な理由の一つです。

もともと新学期は、クラスメートや担任の先生が変わったり、新しい環境に適応するのに時間がかかる人たちが多いので体調を崩しやすい時期です。不登校などで家庭にいる時間が長い新入生ほど、クラスになじめなかったり、いじめをうけたり、先生になじめなかったりした過去の嫌な思い出がフラッッシュバックして不安を募らせている人も多いと思います。毎年夏休み明けに自殺するお子様が多いと言われているように、長い休み明けのお子様の心理は、学校の不安があればあるほど長い休みの間に不安は増大します。国立成育医療センターの調べによると、昨年度のコロナ禍で中程度の鬱を発症した高校生は全体の30%になると報道されていました。

この時期はそうでなくとも、入学前から新しい環境の適応に対する不安を抱えながら新学期を迎え、精神的なバランスが崩れ、不安定さが増しやすい時期なのですが、コロナ禍で学校の休校やイレギュラーな時間割のため今まで以上に学校生活への不安が増大したと考えられています。これから梅雨も迎えると、6月にかけて精神的に不安定な生徒が多くなることが想定できます。
 
一般的な「5月病」というと新入社員のサラリーマンや大学生の新入生などに見られる新しい環境に適応できないことに起因する精神的な症状を指していました。GW明け頃から、毎日の生活にやる気をなくしてしまう状態が続くことで、医学的には適応障害や気分障害、鬱(うつ)と診断される症状です。症状としては、いらいらすることが多くなったり、学校に行くことが億劫になったりすることがあります。「不安」「焦り」「憂鬱さ」を強く感じるようになることも症状の一つです。
 
朝、なかなか起きることができない、夜眠れない、食欲がない、頭痛、めまいなどを頻繁に訴えるようになったら要注意です。タイプ的に言うと真面目で完璧主義的な性格で、早く環境に適応したいと頑張る気持ちが強い人ほど、期待していた新生活のギャップに落ち込んだり、必要以上に頑張りすぎたりして緊張が強くなり、モチベーションが継続できなくなる傾向にあるようです。このような症状が6月にかけて発症することを充分考えておかなければいけないことです。

自然学園に入学した新入生の皆さんの中には、中学生の時がちょうどコロナ禍で、上記した状況を経験している生徒がいると思います。慣れない環境での緊張や精神的な健康も含め、健康状態を心配していました。4、5月共にほとんどの1年生が元気に積極的に授業に参加している状態で、クラス内でも問題行動が見られる生徒が出ず、順調にGWまで来ました。そうは言っても一人ひとりのお子様が相当の緊張の中で自分なりの頑張りを見せているので、GWの休みで緊張の糸が切れて体調を崩す生徒が出るか内心ではドキドキしていました。お陰様でGW明けも皆さんの元気な笑顔でクラスはあふれかえっています。上記したような時期なので、お子様の気持ちの不安定さを見逃さないように、家庭でも保護者の皆さんには十分に気を付けていただけたらと思います。

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