[高等部通信6月号]学園長より~可能性の扉~5

2022年6月23日

5、高等学校での学習について

連休が明けて、新入生は学校生活にも慣れてきた頃だと思います。いよいよ各学年とも本格的に前期学力考査の出題範囲にも重なるレポート課題に取り組まなければいけない時期になり、授業も活気を帯びてきています。

全日制で授業に取り組んでいる通信制高校の学習センターなどの生徒は、単位認定基準としてレポート課題の提出は学力考査の受験資格を得るための条件であり、スクーリングも兼ねた各教科の平常授業における重要な位置づけとしてレポート指導を行っています。レポートを期限内に提出するためには授業に出席することが絶対条件になります。

新入生の中には、中学校時代から教科書やワークなどの宿題に悩み、「宿題を提出できないから学校に行きたくない、試験も受けたくない」と学校から出される課題に非常に神経質になり、やがては勉強そのものに投げやりになり「どうせできないからいいや」「勉強なんかやってもしょうがない」という気持ちを抱いていた人も少なくないでしょう。

本来レポートも教科書やワークと同様、視覚的な認知力が弱く、教科書を読むことや黒板の字を書き写すこと、漢字や英単語を覚えることが苦手な人たちは、自分一人で課題を解いてレポートの答えを書き込む作業は、苦手としていることの一つだと思います。まして発達障害がある子どもたちの特性として「先を見通す力が弱い」ことが挙げられます。このような特性があると、宿題を決められた期限までに提出するための工程が頭に浮かばないので「いつ」「どのように」やったらよいかわからないのです。

自然学園では、レポートを家庭学習としてやらせることはありません。中学校時代の勉強の遅れに配慮して授業内容を進めていくことになります。聞くことが苦手な生徒には、必要ならば個別対応で具体的なイラストや写真をプロジェクターなどで見せながら、重要な項目を一つひとつゆっくり説明していく授業を展開していくこともあります。黒板をノートに写すことが苦手な子どもたちには、黒板にまとめた要点を書き写させるように工夫しています。勉強が苦手なお子様でも、とてもわかりやすく感じてもらえると思います。

教科学習のつまずきにおいては、「先生の説明が、早口で何を言っているのかわからない。」「黒板に書くことが多く、書くスピードも速いので、ノートに書きれない。」「中学校の先生と違って待ってくれない。」など個々への配慮が足りないことを理由に挙げる生徒が最も多いように思われます。次に、学習内容が急に難しくなりすぎて対応できないことが挙げられています。視覚的な認知の弱さがある生徒(読字的、書字的)は、ノートや教科書だけを頼りに予習、復習をしていかないと理解できない高等学校の授業にいっぱいいっぱいでいるようです。試験を控えて、追い詰められたような喪失感を抱き、自信を無くしている生徒が多いように思います。

このような学習面でのつまずきに対して高校の場合は自分で克服する以外道がありません。個々への配慮がない高等学校では、上記のような状況が学習性無気力を引き起こし、その結果、居場所をなくしている生徒が少なくありません。

 自然学園がお預かりしている子どもたちは、学習に必要とされているすべての力が弱い知的なつまずきがある生徒ではありません。子どもたちそれぞれの得意な認知の仕方に気付かせ(または認知しやすい環境を提供し)、苦手である認知のつまずきを補うことで必ず学習成果が出てくるのです。

学習性無気力の状態とは、漢字の習得ができないと一方的に叱責されたり、できないことを無理やりやらされたりして、その外的苦痛から逃れることができないときに生まれる未学習です。未学習とは苦手なことから意識的、無意識的に逃れようとして、経験し習得しなければいけない学習を身に付けることのできない状況を指します。

彼らのモチベーションを上げるには、「やればできた、ほめられた」という経験を与えることです。これこそが、やる気や意欲につながり、苦手だった課題が対処すべき課題になり、学校生活の意欲にもつながっています。

 高等部の本格的な授業がスタートしていますが、そのような意味では、十分遅れは取り戻せるので安心してください。

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