[高等部通信6月号]学園長より~可能性の扉~3

2021年6月14日

3、発達障害と愛着障害について

 

本来抱えている困難さの他に、二次的に情緒が混乱、または不安定になったり、身体症状として現れたりすることがあります。それらは発達障害の「二次障害」と言われています。発達障害がある子にとってはさらに困難さが増えてしまうため、気をつけなければなりません。二次障害で生じやすい強迫性障害や不安障害、不眠や鬱症状などは、発達障害の合併ではない場合も考えられます。

 

愛着障害とは、養育者との愛着が何らかの理由で形成されず、子供の情緒や対人関係に問題が生じる状態です。主に虐待や養育者との離別が原因で、母親を代表とする養育者と子供との間に愛着がうまく芽生えないことによって起こります。

 

乳幼児期に養育者ときちんと愛着を築くことが出来ないと、「過度に人を恐れる」または「誰に対してもなれなれしい」といった症状が現れることがあります。

このことが学校生活での人間関係のトラブルに直結するケースとして見られる事例があります。他人との距離感をうまく保てず、担任やクラスメートの言動の一部を取り上げて、相手のことを善悪で決めつけ、相手を否定し攻撃するような問題行動がしばしば見られます。警戒心が強すぎて人前で話せない場面や自分自身を攻撃するケースも見られます。このような「過度に人を恐れる」ケースは反応性愛着(アタッチメント)障害と診断されることがあります。

 

また他人との距離感をうまく保てず、それほど親しくないクラスメートにつきまとったり、まるきり面識がない人にでも親しげに近づいて嫌がられたり、教員に対しても接点が少ない教員につきまとい、はっきり拒否されないといつまでも親しげにつきまとう問題が生じている生徒がいます。誰彼構わず抱き着いてしまい自分を癒してもらいたい欲求が抑えられなくなる生徒もいます。このような「誰に対してもなれなれしい」ケースは脱抑制愛着障害と診断されることがあります。

 

以上のことが起因したトラブルは、学校生活が少し落ち着いた今の時期に起きやすいのです。そして、このような問題行動によってクラスでの居場所を失い、クラスメートから疎外され孤立してしまうことも珍しいケースではありません。愛着障害は自分が周りから疎外され疎まれることが多くなればなるほど承認欲求が強くなり、他者から注目されるために問題行動をわざと起こす傾向があります。周りの反響や反応が大きければ大きいほどその回数は増えていきます。

 

お子様が愛着障害と認められた場合にまず行うことは、安全基地の形成です。子どもとの間で愛着がしっかりと築かれることで、子どもは養育者のことを安全基地、すなわち困った時・不安や恐怖を感じた時に守ってもらえる拠り所として認識するようになります。

愛着障害の子どもは養育者を安全基地と見なせていない場合がほとんどです。そのため、子どもに「養育者=安全基地」と認識してもらえるように、親族やかかりつけの医者など、周りの人々が親子を支援していくことが必要です。安全基地が形成されることで、子どもが人と接する際の安心感や信頼感を生み、他の人との接し方・距離感も改善することができます。また、子どもが愛着障害を発症するということは、養育者や家族も何らかの支援を必要としていたり、問題を抱えていたりする場合も少なくありません。その場合、子どもだけに治療の焦点を当てるのではなく、養育者や家族を含めて幅広くアプローチを行うことが必要だとされています。

 

例えば、虐待が原因の場合は子どもと養育者の距離を一回遠ざけてみたり、親へのカウンセリングや心理療法的・家族療法的アプローチを取り入れたりすることで、子どもの愛着障害の改善につながることがあると言われています。

最も大切なこととして、幼少期に満足に得られなかった、愛情深いスキンシップやコミュニケーションを補ってあげることが挙げられています。愛着障害は「鬱」だけではなく「心身症」「不安障害」「境界性パーソナリティー障害」などの精神障害の原因ともなります。そして発達障害の特性と同じような症状がみられることがわかっています。

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