[高等部通信6月号]学園長より~可能性の扉~3

2020年6月25日

3、発達障害と愛着障害について

最近では、「大人の発達障害」と言われる大人になるまで気が付かなかった人たちの中には「発達障害」の診断がつかないケースが増えています。「発達障害グレーゾーン」「軽度発達障害」という言葉を耳にするようになっただけではなく、同じようなつまずきが生じていても幼い時の愛着障害などの後天的な要因が原因として考えられるケースは「発達障害」と区別して診断されるようになってきました。

本来抱えている困難さの他に、二次的に情緒が混乱、または不安定になったり、身体症状として現れたりすることがあります。それらは発達障害の「二次障害」と言われています。発達障害がある子にとってはさらに困難さが増えてしまうため、気をつけなければなりません。二次障害で生じやすい強迫性障害や不安障害、不眠や鬱症状などは、発達障害の合併ではない場合も考えられます。

新学期特別号で紹介させていただいた「ADHDの正体 その診断は正しいのか」(岡田尊司 新潮社 発行2020年4月15日)の新刊に、「発達障害の傾向が12歳以降に発症したケースには発達障害自体の前提が崩れてしまっている」「気分障害、不安障害、物質依存、ゲーム依存、パーソナリティ障害、ASD、虐待などによる愛着障害をADHDと診断してしまっている可能性が高い。」という記述があります。

その場合、養育上で次のような問題が生じているとされています。

(1)親や家族の重病や死
(2)親の離婚、別居、再婚
(3)夫婦間や家庭内の不和
(4)母親のうつ状態や心身の不調
(5)出産早期の就労
(6)早期かつ長時間による母親以外の療育
(7)兄弟の誕生・病気などにより母親の関心などを奪われる状況そして愛着的な特徴的な症状が認められやすい状態として

(Ⅰ)過剰な気遣いや顔色に過敏な傾向
(Ⅱ)親に甘えられず、本音が言えない
(Ⅲ)習慣化した攻撃性や怒りの感情
(Ⅳ)自己破壊的行動や自分を過度に貶め、傷つける行動
(Ⅴ)対人不信感(表に出ない場合もある)
(Ⅵ)低い自尊感情や否定的な自己像
(Ⅶ)過剰な自己顕示欲的行動
(Ⅷ)自己感情や自己が存在することに対して現実感の乏しさ
(Ⅸ)解離症状(記憶や意識が飛ぶ症状)があるとしています。

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