[高等部通信6月号]学園長より~可能性の扉~5

2021年6月21日

5、高等学校での学習について

 

連休が明けて、新入生は学校生活にも慣れ、いよいよ各学年とも、本格的に前期学力考査の出題範囲にも重なるレポート課題に取り組まなければいけない時期になりました。それに伴い、授業も活気を帯びてきています。

 

全日制で授業に取り組んでいる通信制高校の学習センターなどの生徒は、単位認定基準としてレポート課題の提出は学力考査の受験資格を得るための条件であり、スクーリングも兼ねた各教科の平常授業における重要な位置づけとしてレポート指導を行っています。レポートを期限内に提出するためには授業に出席することが絶対条件になります。

 

新入生の生徒の中には、中学校時代から教科者ワークなど宿題に悩み、「宿題を提出できないから学校に行きたくない。」「試験も受けたくない。」と学校から出される課題に対して非常に神経質になり、やがては勉強そのものに投げやりになり「どうせできないからいいや」「勉強なんかやってもしょうがない」という気持ちを抱いていた人も少なくないでしょう。

 

本来レポートも教科書ワーク同様、視覚的な認知力が弱く、教科書を読むことや黒板の字を書き写すこと、漢字や英単語を覚えることが苦手な人たちは、自分一人で課題を解いてレポートの答えを書き込む作業は、苦手としていることの一つだと思います。まして発達障害があり、先を見通す力が弱い子どもたちにとって、宿題のように決められた期限までに課題を提出することは、そのための工程が頭に浮かばないので「いつ」「どのように」やったらよいかわからないのです。

 

自然学園では、特別な場合を除いて、レポートを家庭学習としてやらせることはありません。中学校時代の勉強の遅れを配慮にいれた授業内容をすすめていくことになります。聞くことが苦手な生徒には、必要ならば個別対応で具体的なイラストや写真をプロジェクターなどで見せながら、重要な項目を一つひとつゆっくり説明していく授業を展開していくこともあります。勉強が苦手なお子様でも、とてもわかりやすく感じてもらえると思います。黒板をノートに写すことが苦手な子どもたちに、黒板にまとめた要点を書き写させるように工夫しています。

 

教科学習のつまずきにおいては、「先生の説明が、早口で何を言っているのかわからない。」「黒板に書くことが多く書くスピードも速いので、ノートに書ききれないが、中学校の先生と違って待ってくれない。」など授業について行けず、個々への配慮がないことを理由に挙げる生徒が、最も多いように思われます。次に、学習内容が急に難しくなりすぎて対応できないことを挙げています。

 

視覚的な認知の弱さがある生徒(読字的、書字的)は、ノートや教科書だけを頼りに予習、復習をしていかないと理解できない高等学校の授業に手一杯のようです。試験を控えている生徒は、追い詰められたような喪失感を抱き、自信を無くしている生徒が多いように思います。

 

このような学習面でのつまずきに対して高校の場合は、自分で克服する以外道がないのです。個々への配慮がない高等学校ではこのことが学習性無気力の状況を引き起こし、すでに居場所をなくしている生徒が少なくありません。

 

自然学園がお預かりしている子どもたちは、学習に必要としているすべての力が弱い、つまり知的なつまずきがある訳ではありません。

子どもたちのそれぞれの得意な認知の仕方に気づかせ(または認知しやすい環境を提供し)、苦手である認知のつまずきを補うことで必ず学習成果が出てくのです。

学習性無気力の状態とは、漢字の習得ができないと一方的に叱責されたり、できないことを無理やりやらされたりして、その外的苦痛から逃れることができないときに生まれる未学習です。未学習とは苦手なことから意識的、無意識的に逃れようとして、経験し習得しなければいけない学習を身に付けることのできない状況を指します。

 

彼らのモチベーションを上げるには、「やればできた、ほめられた」という経験こそが重要です。やる気や意欲が増すと、苦手だった課題が対処すべき課題になり、学校生活の意欲にもつながっていきます。

 

そのような意味では、いよいよ高等部の本格的な授業がスタートしています。遅れは十分取り戻せるので安心してください。

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