[高等部通信6月号]学園長より~可能性の扉~6

2020年7月6日

6、高等学校での学習について

入学から1週間が過ぎ、新入生は学校生活にも慣れ、いよいよ各学年とも前期学力考査の出題範囲にも重なるレポート課題の勉強に本格的に取り組まなければいけない時期になり授業にも活気が出てきています。

 

全日制で授業に取り組んでいる通信制高校の学習センターなどの生徒は、単位認定基準としてレポート課題の提出は学力考査の受験資格を得るための条件であり、スクーリングも兼ねた各教科の平常授業における重要な位置づけとしてレポート指導を行っています。レポートを期限内に提出するためには授業に出席することが絶対条件になります。

 

通信制高校のレポートは高等学校の学習指導要領にあわせて学習課題が提示されているので新学習指導要領では、かなり難しい内容が含まれています。基礎学力のない生徒の皆さんにはかなり難解な課題がレポートに出題されているでしょう。

現状としては、通信制高校の授業内容に無理があり、レポートを提出できない、または学力考査を拒否して単位が取得できないケースが非常に増えていることも事実です。

 

通信制高校は就労学生でも単位が認定されるように、レポート課題の提出など、自学自習を修学の基本とした高等学校です。自学自習で理解できないことを直接質問できる面接指導がスクーリングとして年間50~60時間設けられています。自学自習が基本でレポートでの学習が主体となり面接授業といわれたスクーリングを受講し、学力考査の評価で単位が認定されます。スクーリングに通うことができない生徒には視聴覚学習として多様なメディアを利用して行う学習でスクーリングの10分の6を補えることが認められています。

 

 

今現在は高校中退生や不登校を経験した生徒の多くが利用するようになったため、通信制高校を希望される生徒のニーズに応えた全日制の学習センター(学習キャンパス)を全国に展開し、ユニークなコースや履修教科を特色とした毎日登校出来る通信制高校が主流になっています。

 

東京都以外の学習センター(学習キャンパス)の多くは、技能連携施設として教育委員会の認可を得ています。それ以外に通信制高校のレポート学習を補習することを目的として全日制で取り組んでいるフリースクールのような教育施設があります。このような就学環境の変化によって1990年代前半と比較して高校資格の取得率は大幅に上昇しました。今回のように自然災害や感染症などの状況下で登校ができない状況でも、通信制高校なら無理なく学習が進められる唯一の高等学校の課程になります。

学習センターでは全日制のように1週間の時間割に沿った授業があり、授業でレポート学習を消化できるカリキュラムを導入している学習センターに通い単位を取る学生が多くなっています。そこで受けた授業は同時にスクーリングの受講としてカウントされます。

学習センターには、教育委員会から技能連携施設に認定された技能連携校が多く、そのほとんどの校舎で全日制の時間割と学校行事やクラブ活動が実施されています。したがって学力に自信がなく、大勢の生徒数がいる高校での学校生活は緊張が高くなるが、全日制と同じような学校生活を送りたいと考えている発達障害傾向のお子様の進路先として進学率が高くなっています。美術や音楽・芸能、美容、食と農、プログラミング、eスポーツなど特徴あるカリキュラムで生徒の意欲を刺激し、将来の夢につなげる学びがあり、また、大学受験に向けた勉強時間の確保もしやすいため、大学受験を意識して選択するケースも多いのです。2019年度では、約19万7千人が在籍しています。全国の高校生336万6千人の5.9%の割合を占め高校生の17人に1人は通信制高校の生徒であるといえます。

自然学園では、お預かりした生徒の皆様の習熟度やつまずきに配慮した授業を実施し、授業のカリュキラムを前提とした課題が、学力考査に出題されるような配慮をしています。したがって授業内容に沿ったレポートを教科ごとに工夫しています。だからこそ「わかる」と思える経験を積み重ね、「できた」と感じた事で自信に結び付き、学習する意欲が湧いてくるのです。

 

新入生の生徒の中には、中学校時代から教科書ワークなどの宿題に悩み、宿題を提出できないから学校に行きたくない。試験も受けたくないと学校から出される課題に対して、非常に神経質になり、やがては勉強そのものに投げやりになり、「どうせできないからいいや」「勉強なんかやってもしょうがない」という気持ちを抱いていた人も少なくないでしょう。

本来レポートも教科書ワーク同様、視覚的な認知力が弱く、教科書を読むことや黒板の字を書き写すこと、漢字や英単語を覚えることが苦手な人たちにとっては、自分一人で課題を解いてレポートの答えを書き込む作業は、苦手なことの一つだと思います。まして発達障害がある子どもたちの特性として先を見通す力が弱いことによって、宿題のように決められた期限までに提出することは、そのための行程が頭に浮かばないので「いつ」「どのように」やったらよいかわからないのです。

自然学園では、今回のような特別な場合を除いてレポートを家庭学習としてやらせることはありません。中学校時代の勉強の遅れを配慮にいれた授業内容を進めていくことになります。聞くことが苦手な生徒には、必要ならば具体的なイラストや写真をプロジェクターなどで見せながら、重要な項目を一つひとつゆっくり説明していく授業を展開していくこともあります。勉強が苦手なお子様でも、とてもわかりやすく感じてもらえると思います。黒板をノートに写すことが苦手な子どもたちに、黒板にまとめた要点を書き写させるように工夫しています。

 

教科学習のつまずきにおいては、「先生の説明が、早口で何を言っているのかわからない」「黒板に書くことが多く、書くスピードも速いので、ノートに書ききれず中学校の先生と違って待ってくれない」など授業について行けず、個々の配慮がないことを理由に挙げる生徒が最も多いように思われます。次に学習内容が急に難しくなりすぎて対応できないことを挙げています。視覚的な認知の弱さがある生徒(読字的、書字的)は、予習、復習をしていかないと理解できない高等学校の授業にあっぷあっぷでいるようです。試験を控えている生徒は、追い詰められたような喪失感を抱き、自信を無くしている生徒が多いように思います。

 

このような学習面でのつまずきに対して高校の場合は自分で克服する以外道がないのです。個々の配慮がない高等学校ではこのことが学習性無気力の状況を引き起し、すでに居場所をなくしている生徒が少なくありません。

 

自然学園がお預かりしている子どもたちは、学習に必要としているすべての力が弱い知的なつまずきがある訳ではありません。

子どもたちのそれぞれの得意な認知の仕方に気づかせ(または認知しやすい環境を提供し)、苦手である認知のつまずきを補うことで必ず学習成果が出てくのです。

 

学習性無気力の状態とは、漢字の習得ができないと一方的に叱責されたり、できないことを無理やりやらされたりして、その外的苦痛から逃れることができないときに生まれる未学習です。未学習とは苦手なことから意識的、無意識的に逃れようとして経験し、習得しなければいけない学習を身につけることのできない状況を指します。

彼らのモチベーションを上げることには、「できた、やればできた、ほめられた」という経験こそが、やる気や意欲につながり、苦手だった課題が対処すべき課題になり、学校生活の意欲にもつながっていきます。

そのような意味では、いよいよ高等部の本格的な授業がスタートします。十分遅れは取り戻せるので安心して下さい。

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