[高等部通信7月号]学園長より~可能性の扉~3

2020年7月30日

3、夏休み企業見学会

自然学園高等部では夏休みに企業見学会があります。2年生、3年生では企業の体験就労を経験している人たちもいます。1年生は夏休みも初めての体験に緊張して、見学会前日はあまり夜も眠れない人たちがいるのではないでしょうか?いずれにしろ高等部の生徒の皆様にとって、自分の一生を変えるほどの貴重な経験になるのではないかと思っています。

自然学園は、高校卒業資格を取得するためでなく、発達のつまずきがある子どもたちが就労に移行できるための学力や社会性を養うための教育を受ける場であり、働くことを目標としたビジネスマナーや実際の就労として求められる軽作業や事務作業が実践を踏まえて学んでいくことのできる学校です。自立を目的にした継続的な支援で「働くための力」を育むことに主眼を置いています。その意味では、後でご説明させていただく就職について考えた時に、「人とのコミュニケーションが苦手である」「指示が重なると混乱してしまう」「継続して職場にいることに不安を感じる」など働くことに対して不安ばかりが先行して緊張が高まり具体的なイメージが湧かない人が多いと思います。

そのような人たちが多い中で、高等部ではキャリア学習および就労支援の一環として、高等部1年生、2年生そして就労希望の3年生の生徒が例年通り夏休みを利用した企業の見学会を行います。

就労を希望している生徒には、説明会に参加してもらい、1年生からのキャリア学習を計画的に進めていく就労支援のプログラムを作成しています。今年は11社16施設の特例子会社の見学を企画しています。4月からの就労を目的としている3年生は、自分たちが希望している企業の実習面談も兼ねているので、必死な気持ちで企業訪問を行い、夏休みに体験就労を行っています。

1.2年生の人たちも異なった業種の職場見学を行うことで、「自分ならこんなことならできるかもしれない」「こんなことならぜひやってみたいな」と言う気持ちが少しでも感じることができれば今まで以上に意欲的に受けることができるでしょう。

また見学をする中で、社員の方々のお話をお聞きする機会に恵まれ、会社が求めている人材とはどのようなことができなければいけないのか、また、どんな人が職場では一番困る人なのか、共通した企業の考えを教えていただくことができます。

企業が求めるスキルに今の自分がどのくらい近づいているのかをこの機会にぜひ考えてみてください。そして将来の目標を立てて、その目標に到達するにはどのような計画を立てればいいのか少しでも考える機会になれば今回の見学会は大成功です。

実際の職場を見て、そこで汗を流して働いている人に接して、自分がもし働くとしたら、今の自分には何が足りないのかを確認できることがキャリア学習を授業で学ぶことの原点になります。

体験就労を経験している人たちの仕事内容は企業によって違いますが、それぞれの仕事に慣れないながらも一生懸命取り組んでくれているようです。働くことの「楽しさ」や「やりがい」を実感できた生徒も少なくないようです。

では、このようなことも踏まえて一般的には、企業はどのようなことを雇用にあった求めているのでしょうか。『発達障害の子どもと生きる』(松為信雄 幻冬舎ルネッサンス)に記載されている内容を抜粋します。

  • 毎日時間通りに出社できる
  • 働くことの意味(給料が仕事の成果に対して支払われていること)を理解している
  • 仲間と強調できる
  • 指示を理解し従うことができる
  • 「数える」「折る」「封入する」などの基本作業が正確にできる
  • 報告・連絡・相談ができる

逆に企業にとって困るのは、次のような人たちです。

  • たびたび休む人や遅刻、早退が多い
  • 他の人と協調出来ない人やルールが守れない
  • 挨拶や服装、身だしなみなどの基本ができない

(以上抜粋)

これらに付け加えて、最近では以下のことが採用の条件になっています。

  • 自分を理解していること
  • 自分のつまずきや欠点を認め、受け止めることができる人
  • 自分が苦手なことへの対処方法を知っていること
  • 他者に適切な支援を求められること
  • メンタル面で安定していること
  • 人の話に素直に耳を傾けられる人
  • 明るくいつも元気な人
  • 何事もあきらめず、粘り強く前向きに頑張れる人
  • 人に助けを求めることができ、困っている人には自分のできる範囲の手助けがすすんでできる人
  • 他人を攻撃したり、批判したりしない人
  • 勝手な判断で業務を遂行しない人

この条件を満たすための人材を育てるためには、1年生からキャリア教育を推進して、「自分には何が向いていて、何ができるのか」「働くことの意義はなにか」「働くとは具体的にはどういうことなのか」について就労体験を通しながら具体的に考えさせ、自分なりの答えが導き出せるようなキャリア学習を3学年を通した継続的な指導で実践しています。

これらの目標に根差し、自然学園では、発達のつまずきがある子どもたちに、具体的に様々な体験などを通してそれぞれの特性や能力に合った目標を持たせ、学ばせていくことを総合学習やソーシャル・スキル・トレーニング、学校行事、ホームルーム、キャリア学習講座、企業見学会、就労実習等を通して計画的に実践しています。

この夏の努力の結果と秋からのもうひと頑張りが内定に結び付くことを信じています。ゴールに向かって歯を食いしばって頑張りましょう。全力で支援していきます。

本校の卒業生の実績が全国の発達障害者の雇用の後押しになるように、発達障害がある子どもたちを対象にしたキャリア教育を確立し、その取り組みを広めていきたいと考えています。

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