[高等部通信8月号]学園長より~可能性の扉~④

2016年9月5日

最近の企業が軽度知的障害者や発達障害者に求める仕事の傾向としては、手順を理解すれば、正確に仕事を遂行し、集中力や持続力が高い人たちの雇用を積極的に進めている企業が少しずつ多くなっているようです。具体的な仕事としては名簿作成、PCデータ入力、発送業務、資料作成、スキャン業務、ファイル整理、仕分け、校正、DM郵送、コピー、シュレッダー、袋詰め、のり付け、宛名書き、押印、名刺作成、パンフレット作成、社内便等の事務作業などです。

都内大手の保険会社の特例子会社では、今回の実習では封入の仕事に取り組みました。配送先と封入する手紙の宛名と封筒の送り先がPCでデータ管理されている送り先と合致しているかどうかを確認して、手紙をその他の資料とともに3つ折りにして同封し、封筒をのり付けして、出来上がった封筒を段ボールの箱にしまい、一括郵送する総務の受付に届けるまでの作業です。

のりを多くつけすぎて皺(しわ)が多くなりすぎてしまったことや、まだ乾いていない封筒が入った段ボールを床に落として封筒を汚してしまったことが反省会でも彼の失敗としてかなり気になっているようで後悔しながら話してくれました。
会社側は、指導員の職員の方が、よくある失敗なので慣れていけば大丈夫です、と声をかけてくれました。逆にそのときその失敗を隠さずに、すぐに職員に報告し、次の対応の指示を受けたことにお褒めの言葉を頂きました。

また、ひとりの2年生の生徒は、郵便局の休憩室、階段、廊下、踊り場、食堂等の清掃の仕事を実習させてもらいました。反省会での話では、清掃を実施したエリアを、清掃後にコーチの職員の方から細かくチェックされて、少しでも汚れやほこりが残っているようなら厳しく怒られている光景を目の当たりにして、改めて仕事の厳しさや、サービスを提供した結果、お客さんやサービスを受ける側に喜んでもらい、納得してもらわないと、その対価としての給料をもらえる資格がないことが、実習を通して理解できたと話してくれました。
そしてそうならないために、教えて頂いた正しい手順で仕事をすすめ、必ず点検・確認を怠らないことを学んだそうです。

このことこそ、我々が1年生から実習に送り出す意義なのです。確かに高校卒業資格に結び付く単位認定の学習も大切なことですが、微分積分や三平方の定理ができても、世の中では何の役にも立ちません。むしろ彼らが実習を通して経験し、身に付けたことこそが、自立するために必要なソーシャルスキルであり、生きる力なのです。
(つづく)

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