[高等部通信9月号]学園長より~可能性の扉~7

2019年11月12日

7、夏休みを利用した企業見学会のご報告

長瀞のサマーキャンプから帰ってきて、週末には終業式を迎え、慌ただしく夏休みに突入しました。今年は例年になく梅雨明けが遅れ、梅雨が明けきれない状態が続いていました。はっきりしない曇り空が多い中、サマーキャンプも時折の雨模様でしたが2日間の行程を消化することができました。気温もあまり上がらなかったため過ごしやすい2日間でした。交流会は1年生の活躍でいつになく盛り上がりました。高等部の生徒一人ひとりに忘れられない大切な思い出になったようです。私も生徒の心の底からの笑顔を見ていると、なんとなく幸せな気持ちになれました。

いよいよ2学期がはじまりました。2学期に向けて計画通りに夏休みを送ることができましたか?前回の高等部通信でお知らせしましたが、自然学園高等部の夏休みは企業見学会があります。2年生、3年生は企業の体験就労を経験している人たちもいますが、経験していない人たちにとっては、夏休みの初めての体験に緊張して、訪問日前日はあまり夜も眠れない人たちがいたのではないでしょうか?いずれにしろ高等部の生徒の皆様にとって、自分の一生を変えるほどの貴重な経験になるのではないかと思っています。

自然学園は発達につまずきがある子どもたちが、就労に移行するための学力や社会性を養うための教育を受ける場であり、働くことを目的としたビジネスマナーや実際の就労で求められる軽作業や事務作業を、実践を踏まえて学んでいくことのできる学校です。自立を目的にした継続的な支援で「働くための力」を育むことに主眼を置いています。

就職について考えたときに、「人とのコミュニケーションが苦手である。」「指示が重なると混乱してしまう。」「継続して職場にいることに不安や緊張を感じる。」など働くことに対して不安ばかりが先行して緊張が高まり具体的なイメージが湧かない人が多いと思います。

そのような人たちが多い中で、高等部ではキャリア学習として高等部1年生、2年生そして就労希望の3年生の生徒が例年通り夏休みを利用した企業の見学会を行いました。
就労を希望している生徒には、見学会に参加してもらい、1年生からのキャリア学習を計画的にすすめていく就労支援のプログラムに沿って学習して行きます。4月からの就労を目標としている3年生は、自分たちが希望している企業の実習面談も兼ねているので、必死な気持ちで企業訪問を行い、夏休みに体験就労を行っていました。

1.2年生の人たちも異なった業種の職場見学を行うことで、「自分ならできるかもしれない。」「ぜひやってみたいな。」と言う気持ちが少しでも感じることができれば今まで以上にキャリア学習を意欲的に受けることができるでしょう。

また見学をした中で、社員の方々のお話をお聞きする機会に恵まれ、会社が求めている人材とはどのようなことができなければいけないのか、またどんな人が、職場では一番困る人なのか、共通した企業の考えを教えていただくことができました。

今回ではないのですが、以前行った東京メトロが親会社である特例子会社の(株)メトロフルールの見学会で会社が必要としている人という題がついた資料をいただきました。仕事面という項目に掲載されている事柄はどの会社も共通したこと内容なので参考に書かせていただきます。

1 働く意欲のある人・・・(働いてお金をもらうことを理解できる人)
2 会社にきちんと出勤ができる人・・・(何かあったときちゃんと連絡できる人、会社を休むと他の人に負担がかかることがわかる人)
3 周りの人と協力して仕事ができる人
4 報告・連絡・相談ができる人
5 組織になじむ人・ルールが守れる人

企業が求めるスキルに今の自分がどのくらい近づいているのかこの機会にぜひ考えてみてください。そして将来の目標を立てて。その目標に到達するにはどのような計画を立てればいいか少しでも考える機会になれば今回の見学会は大成功です。
実際の職場を見て、そこで汗して働いている人に接して、自分がもし働くとしたら、今の自分には何が足りないのかを確認できることがキャリア学習の原点になります。

体験就労を経験している人たちの仕事内容は企業によって違いますが、それぞれの仕事に慣れないながらも一生懸命取り組んでくれているようです。働くことの「楽しさ」や「やりがい」を実感できた生徒も少なくないようです。

彼らの就労前に、指示の受け方や日常のあいさつ、報告・連絡・相談いわゆる『ほうれんそう』の重要性などを徹底的に教えて送り出したつもりです。本当の理解や、職場でそのことが般化できるまでには、現場での体験を通して体で覚えていくほかないのだと思います。それは、障害がある高校生や大学生に限らず、一般の高校生や大学生、大人に至るまで、コミュニケーションをはじめとした、社会性が欠如した人たちが、学力や知識があるなしに関わらず、いかに多いかが企業の人事関係の方々と話すときに必ず話題に上ることです。

ではこのようなことも踏まえて一般的には、企業はどのようなことを雇用に対して求めているのでしょうか。『発達障害の子どもと生きる』松為信雄 幻冬舎ルネッサンスに記載されている内容を抜粋します。
・毎日時間通りに出社できる
・働くことの意味(給料が仕事の成果に対して支払われていること)を理解している
・仲間と協調できる
・指示を理解し従うことができる
・「数える」「折る」「封入する」などの基本作業が正確にできる
・報告・連絡・相談ができる

逆に企業にとって困るのは、次のような人たちです。
・たびたび休む人や遅刻、早退が多い
・他の人と協調出来ない人やルールが守れない
・挨拶や服装、身だしなみなどの基本ができない

(以上抜粋)

私はこれらに付け加えて、障害者雇用であっても以下のことは採用の条件だと思います。

・人の話は素直に耳を傾け、仕事の指示を嫌な顔せず受け入れて実行できる人。
・明るくいつも元気な人で、他者にも目配りができる人
・何事もあきらめず、粘り強く前向きに頑張れる人。
・人に助けを求められることができ、困っている人には自分のできる範囲の手助けがすすんでできる人。
・他人を攻撃したり、批判したりしない人。
・勝手な判断で業務を遂行しない人。

この条件を満たすための人材を育てるためには、1年生からキャリア教育を推進して、「自分には何が向いていて、何ができるのか。」「働くことの意義はなにか。」「働くとは具体的にはどういうことなのか」について就労体験を通しながら具体的に考えさせ、自分なりの答えが導き出せるようなキャリア学習を、3学年を通した継続的な指導で実践しています。

この夏の努力の結果と秋からのもうひと頑張りが合格に結び付くことを信じています。ゴールに向かって歯を食いしばって頑張りましょう。全力で支援していきます。
本校の卒業生の実績が全国の発達障害者の雇用の後押しになるように、発達障害がある子どもたちを対象にしたキャリア教育を確立し、その取り組みを広めていきたいと考えています。

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