[高等部通信12月号]学園長より~可能性の扉~2-①

2020年12月29日

2、発達障害のお子様の勉強のつまずきについて

(1)ワーキングメモリについて
先月号の思いやり収穫祭の特別講演会のお話しで触れさせていただきましたが、高等部のお子様方の学習のつまずきは、読む、書く、聞くなど、情報を処理する認知の偏りに起因しています。視覚的な機能や聴覚的な機能が弱いことではありません。一般の人には気付くことができない、人には見えないつまずきが起因しているのです。読むことに苦手さがある、書くことに苦手さがある人は、宿題などは到底できないでしょう。「読む・書く」に苦手さがある人は、問題文や文章などを読んで、設問に応じた答えを解答欄に記入することは困難を極める行為であり、課題とされる項目が「わかる、わからない」、「理解できる、できない」以前の問題です。中学生が、学力考査の前に提出を義務づけられている教科書ワークは、たとえ答えを写すだけだとしても、解答を書き写すだけで他の勉強は手につかない人が多いと思います。

このような人の場合、先月号でも触れたワーキングメモリに原因があることが考えられます。

ワーキングメモリとは、情報を一時的に記憶・処理する能力であり、そのために必要な頭の中のメモ帳の役割をしている機能です。例えば授業で、先生が黒板を使って説明を行う際も、その文字を自分のノートに書き写すには、一度頭の中のメモ帳に、板書にある文字や記号を記録して、ノートにその文字や記号を書き写します。文字や記号の形状や位置的な情報の記憶が書き写す行為の処理として必要になります。その際の頭の中のメモ帳がワーキングメモリなのです。足し算や引き算など計算の際には、数字を一度頭の中のメモ帳に記憶させ、計算のルール・手順にもとづいて解法し、処理されたその数字を答えとして解答欄に記入するのです。文章読解も前に書いてある事柄や登場人物の行動や発言した言葉の記憶がないと文章が先に進んだ時に、書かれている内容を理解することができなくなります。その際も前に書かれている文章の事柄を一度頭の中のメモ帳に残し、登場人物の行動や発言を時間軸に沿って処理するワーキングメモリが不可欠です。

このことからも分かるとおり、一人ひとりの感覚的な偏りや情報を処理する認知力の凸凹を把握できれば、どのような覚え方なら記憶し処理しやすいのか、どのように課題を提示したら課題に取り組みやすくなるのか、どのように問題や課題のプリントを工夫したら解答欄に答えが書きやすくなるのかなどを考えて課題や問題に取り組めるようになることは不可能なことではありません。

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