[高等部通信12月号]学園長より~可能性の扉~2-②

2020年12月29日

2、発達障害のお子様の勉強のつまずきについて②

視覚、聴覚、いわゆる目や耳などの五感から入ってくる情報がほんの数秒間だけ記憶として保持されます。このような記憶はすぐ消去されてしまいます。このような記憶が感覚記憶と言われています。この感覚記憶の中で興味や関心があることや自分の中で意味のあることだと選択された記憶が短期記憶として残ります。感覚記憶よりも少し長い数秒間から数分程度保持される記憶が短期記憶です。短期記憶を「長期記憶」にする過程があります。長期記憶へとつなげるためには反復学習が必要です。勉強で学んだことを何度も繰り返し、復習するわけです。短期貯蔵庫に一時保存された情報を繰り返し復唱して記憶を強化する過程がこれにあたります。
これに相当する心理学用語に、「リハーサル」という言葉が用いられます。リハーサルとは、『短期記憶の忘却を防いだり、長期記憶に転送したりするために、記憶するべきことを何度も唱えること』とされています。

短期記憶の貯蔵庫で、頭の中で情報を復唱する「リハーサル」を繰り返し行っていると、その中の幾つかの情報が長期記憶の貯蔵庫へと転送されていきます。リハーサルの回数が多いもの、選択的注意の程度が大きいもの(印象が強烈なもの)ほど重要なものとして、短期記憶から長期記憶へと定着する可能性が高くなります。

海馬に転送された短期記憶は、諸説ありますが1ヶ月程度保持されるようです。海馬にある記憶は1か月以内に消える危険のある、不安定な状態の記憶です。その間に「生きていく上で必要な情報か否か」という視点から審査を受け、必要と認識された重要情報のみが側頭葉を始めとした大脳皮質へ情報が送られ、本物の記憶(長期記憶)へと移行するようです。

鉄道好きの人は、漢字の勉強は全くできないのに、駅名の漢字はすぐに覚えてしまう人がいます。自分の興味があるものには、好きな列車の車両の種類やスタイルやデザイン、色彩およびその路線と駅名がイメージとして結びつき鮮明に記憶されるので、駅名の漢字も短期記憶に結び付けやすく、何度も反復して写真や雑誌を見ながら駅名を思い起こすことで駅名の記憶が定着されるのです。
一方、子供たちにとってテスト勉強などの情報は、生命の保存という観点からはなかなか重要という認識を持ちづらいものです。勉強で得られるような興味がなく印象が薄い知識を定着させるのは容易ではなく、何度も何度も反復して海馬に情報を送り、生存上必要と思わせない限り、情報は長期記憶に移行されず、忘れ去られてしまうことになります。

最低でも海馬の段階をクリアして、側頭葉などの大脳皮質に保管しなければ本物になりません。勉強において試験に出る漢字が頭に入らない、英単語が覚えられない、と悩んでいるという人は、1か月以内に繰り返さないことが原因です。最初の1か月で何度も繰り返し復習していくことによって、長く忘れない本物の記憶にできるのです。ただし興味がなく印象に残りにくい情報を自分のすでに知り得ている知識と結び付けて情報のイメージをより印象深くして興味あることとして海馬で処理されることで繰り返し情報が反復され長期の記憶に保存されることは不可能なことではありません。

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