[高等部通信12月号]学園長より~可能性の扉~4

2020年12月31日

4、発達障害がある人たちの就労状況について

障害者雇用促進法における法定雇用率が平成30年4月から2.2%になり令和3年4月までにはさらに0.1%引き上げられます。 今回の法定雇用率の変更に伴い、障害者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲が、従業員50人以上から45.5人以上に変わります。1億総活躍プランに障害者の社会進出は不可欠であり、現在の障害者就労の中心は発達障害がある精神障害者です。全国のハローワークの紹介件数から見る割合は平成30年度の統計では約46%で、知的障害者、身体障害者と比較して最も高い割合で年々その割合は増加傾向になっています。

このような動きから大手の企業が障害者就労を充足するために、その雇用に力を入れるようになってきています。厚生労働省は法定雇用率を順守しない企業の企業名公開をペナルティーとして公表しています。この動きに伴い積極的な雇用に踏み切っている企業は、精神障害者および発達障害傾向がある軽度の知的障害の雇用に積極的なように思います。

学校での勉強や学校生活におけるグループ活動、そこで経験する役割分担や共同作業は、将来のために必要なスキルです。企業が採用でポイントにすることは自己理解を前提としたセルフマネージメント力とミスやアクシデントがあったときにこそ必要な「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」ができるコミュニケーション力だと思います。
合理的配慮を企業側に要請するうえでも、自分のつまずきを把握して、相手に配慮をお願い出きるコミュニケーション力は不可欠です。

平成27年に高等学校における個々の能力・才能を伸ばす特別支援教育のモデル事業が開始されモデル校に選ばれた高校での通級における特別支援教育が実験的に実施されました。そして昨年、平成30年に学校教育法施行規則が一部改定され高等学校における通級指導が制度化されましたが、埼玉県ではモデル校として4校が選ばれて、放課後週1回1時間程度、通級として特別支援学校の教員が自立と社会参加を目指し、障害による学習上または生活上の困難を改善・克服する指導を行うとしています。視覚認知トレーニングや聞くトレーニングなどの指導も指導内容に組みこまれています。
実際には「人間関係の形成」「コミュニケーション」「セルフコントロール」など前記した企業が採用で重視するソーシャルスキルの育成を目的としているようです。しかしながら最終的な目標である就労を目指した特別支援学校の職業科のような企業就労を目的とした実習の実施までは至っていないように思います。秩父にある皆野高校が「インターンシップ」を通級指導の内容に挙げています。

通級指導は、通常学級に在籍する児童・生徒が原則週1~8コマ、障害に応じた補充指導などを別室で受ける制度で、平成5年度に小中学校で制度化され、対象者が18年度に学習障害(LD)などに拡大されて急増しました。報告書では、中卒者のほとんどが高校に進学する中、高校を「自立に向けた準備期間を提供できる最後の教育機関」と位置付けた上で、中学で通級指導を受けた生徒が高校でも指導を必要とする可能性があることから、高校の対象者を小中学校と同じとしています。

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