バンブー教室:バンブーだより1月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-4

2025年2月24日

近年は、「発達障害グレーゾーン」、「発達障害もどき」、「境界線知能」という内容を扱った書物が出版され、このような聞きなれない言葉が世の中に認知されていくにしたがい、発達障害があり特別支援教育を必要としている子どもたちだけではなく、通常級に在籍していて発達障害の診断が出ていない、きわめて発達障害における特性に近いつまずきがあるグレーゾーンの子どもたちや知的障害は認められないものの知的な遅れが見られる知能的にも境界域であるグレーゾーンの子どもたちが注目されています。

私は、「グレーゾーン」・「境界線知能」だから勉強に遅れがあるのではないと考えています。LD(学習障害)傾向やADHD傾向のお子様には、凸凹が大きいものの平均したIQ値は平均であるIQ100をはるかに上回る子どもたちがいます。その凸凹が起因して、特定の教科や課題につまずいている子どもたちとの関わりの中で知的な問題や発達の偏りだけが問題ではないことは明らかです。学力不振で悩んでいる子どもたちの多くは、学ぶことを放棄してしまった子どもたちでむしろ学力不振の原因は「学習的無気力」にあるように思います。

昨年の12月に講演していただいた西永先生は、その著作『子どもの発達障害とソーシャルスキルトレーニング』で「ソーシャル・スキル」のスキルは「技能」ではなく「学習性の能力」であると書いています。LDやADHDなど、発達障害の傾向がある子どもたちの「ソーシャルスキル」や「コミュニケーションスキル」および、読むこと、書くこと、聞くことにも関係している教科学習を含む学力に相当する「アカデミック・スキル」は、学習や練習の結果で大きく変わってくると書かれています。

発達障害のお子様の場合は、特に発達の偏りに配慮して、その子どもの現在の能力に見合ったできる課題を用意して結果を出すことが大事であり、結果が出ないのは、教えるプロセスが間違っているのだと言い切っています。子どもはできるから練習を頑張れるのであって、できないから練習が苦手なのです。不登校の理由である無気力は学習におけるプロセスの問題であると言えるとのことです。

以上のことから学力を向上させることは繰り返しの学習しかありません。もともと記憶とは、健常の人でも20分後に42%、1時間後は56%、9時間後は64%、6日後は76%の割合で忘却しまうものです。忘却を食い止める方法は、一定時間すぎたあとに繰り返し復習するしかないとされています。学習したその日の夜、1日後、3日後、1週後と定期的に繰り返して復習することが不可欠です。発達障害の子どもたちの場合は、その学習を負荷なく、楽しく学習するには彼らのワーキングメモリのつまずきを把握し理解したうえで、彼らが学習しやすい環境や勉強の仕方を提示しなければなりません。

彼らが負担にならないような課題や学習環境を提示してこそ、継続して勉強に取り組んでもらえるようになるのです。

そしてその結果、短期記憶が長期記憶に移行され、学習で身に付けた知識の幅が広がっていきます。できたことをほめて認めてあげれば、自分に自信が持てるようになります。褒められることを嫌うお子様はいないと思います。今まで、自分では一生懸命にやっているつもりでも、出来ないことや間違えることが多いことに対して、怒られたり馬鹿にされたり蔑まれたり、健常のお子様が経験したことのない思いをずっと重ねているお子様方が、バンブー教室に在籍している子どもたちなのです。

そしてできた課題を褒めてあげ、自分でもできることを実感させてあげることが一番有効な学力向上の近道です。そこから実感する「できた」は学習意欲に繋がります。学習意欲は凸凹の高い能力に働きかけ、できないことを手助けし能力全体を押し上げることに結び付きます。

バンブー教室はこのような考えを持って生徒一人ひとりの授業に全力で取り組んでいます。

自然学園学園長 小林 浩

(※コラムに掲載されたものを一部抜粋しております。)

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