バンブー教室:バンブーだより12月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-1
2025年3月24日
令和6年10月30日文科省発表「令和5年度(2023年度)不登校統計」について
文部科学省が公表した昨年度、全国の小中学校で30日以上、欠席した不登校の児童・生徒の数はおよそ34万6,482人になります。前年度から47,434人(15.9%)増加。増加は11年連続となっていて、初めて30万人を超えた(前年度は29万9048人)ことになります。
増加率については、2022年度が22.1%で、2023年度は15.9%となったことから、前年度と比較すると若干低くなって、小中学校の不登校児童生徒数を1000人あたりで見ると、計37.2人という結果となっています。(前年度は31.7人)。
なお、高等学校における不登校生徒数は68,770人(前年度60,575人)で、前年度から8,195人(13.5%)増加して過去最多となりましたが、前年度と比較すると増加率は若干低くなりました(2022年度が18.8%で2023年度は13.5%)。また、在籍生徒に占める不登校生徒の割合は2.4%(前年度2%)となっています。
不登校の内訳は、小学校が13万370人(前年度比24.0%増)、中学校が21万6,112人(同11.4%増)。児童生徒全体に占める割合は3.7%。不登校児童生徒について学校側が把握した事実としては、「やる気が出ない等の相談があった」32.2%が最も多く、「不安・抑うつの相談があった」23.1%、「生活リズムの不調に関する相談があった」23.0%、「学業の不振・頻繁な宿題の未提出」15.2%、「いじめ以外の友人関係をめぐる問題」13.3%の順で多かったとのことです。
コロナ禍の期間中に生活リズムが崩れて休むことへの抵抗感が薄れたままになっていることに加えて、休養の必要性について保護者の意識が変化していることなどが影響しているといいます。
また、認知されたいじめの件数は、小学校が58万8,930件、中学校が12万2,703件、高校が1万7,611件、特別支援学校が3,324件のあわせて73万2,568件で、前の年度よりも5万件余り増えて過去最多となりました。いじめによる自殺や不登校などの「重大事態」と認定された件数も380件余り増えて過去最多の1,306件となり、4割近くは「重大事態」と把握するまで学校側がいじめとして認知していなかったということです。一方、自殺した児童や生徒はあわせて397人で、過去3番目に多くなっています。
不登校の子どもの増加について文部科学省は、「子どもの状況に応じた教育が必要だという保護者の意識の変化も背景にあると考えられる。不登校の要因を的確に把握し、きめ細かな支援が必要だ」とした上で、いじめについては学校側が組織的な対応ができず、重大事態になった例もあるとして、いじめの早期の発見や対応を促していきたいとしています。
いじめとしては小・中・高校生とも「冷やかし、悪口、脅し文句、嫌なことを言われる」が最も多く、小学生、中学生は「軽くぶつかられたり、遊ぶふりして叩かれたり、蹴られたりする」が次に多く、高校生は「パソコンやスマホでの誹謗中傷」が次に来ています。
私は不登校やいじめのこのような統計を見ると、通常級に通う特別支援教育が必要な8.8%の生徒との関連性を考えてしまいます。ソーシャル・スキルと言われる社会的なスキルは集団の中で育まれるもので、クラスに居場所があって初めて他者と繋がるスキルが生まれ、他者との絆はその関わりから築かれるものです。他者とのコミュニケーションの苦手さに特性がある子どもたちは不安が強くなり、クラスや部活で他者との関わりが希薄になってくると、ソーシャル・スキルを育む機会がないため、余計、人間関係での緊張や不安が強くなり、コミュニケーションがうまく取れないことから人間関係のトラブルやいじめに発展しやすくなるのではないかと思います。暴言や暴力などに直結する衝動性や人の気持ちが理解できない「心の理論」は、発達障害傾向の子どもたちの特性でもあります。
発達障害傾向の特別支援が必要な8.8%に該当するようなお子様の場合、そもそも特性として「嫌なことから逃げる」ことや「自己肯定感の低さ、やる気のなさ、無気力」「不安、緊張感」「情緒の混乱」などの特性を持っているので、認知発達の遅れや偏りから「授業についていけない」「指示が入らない」「集団行動ができない」「勉強がわからない」と言った学校不適応状況が重なり、クラスに居場所がなく不登校に結びつくことは必然的なこととして考えられます。
高等部の生徒が、入学時に話してくれた中学校時代の悩みとして「ゲーム依存」などで睡眠時間が短くなり、生活リズムが崩れてしまったなどの話は少なくありません。そのような状況に陥る子どもたちの特性として「コミュニケーションの苦手さ」「相手の気持ちが理解できない」など、人間関係を上手く築くことができないことが背景にある子どもたちが多いように思います。「いじめ以外の友人関係の問題」とあるように認知発達の特性から「自分の気持ちがうまく表現できない」「運動が苦手」「行動の遅れ」「学力不振」などに結び付き、「いじられる」と言ったからかいの対象になることや疎外され、クラスで孤立してしまうことが起こりやすい状況を孕(はら)んでいます。高等学校での不登校の場合は、全日制の場合だと単位が認定される出席日数が限定されているので、留年を選択するより転編入を選択する場合が多いと思います。高等部の入学相談でも、高校に進学してすぐに「入学、転編入時、進級時の不適応」がきっかけで転入を考えているとのお問い合わせをよく受けます。
そして、文部科学省の不登校における実態調査の統計結果における根本的な問題として「1,子どもが大切だからこそ過度の管理をする」、「2,子どもに自立してほしいからこその放任主義」、「3,子どもに将来成功してほしいからこそ期待している」の3つを挙げています。
1,子どもが大切だからこそ過度の管理をする」のケースのご家庭の場合、発達障害傾向があるお子様は、自分で考え決断することを自らしなくなってしまう子どもがいます。保護者に依存する誤学習が習慣化されてしまうケースが多いと思います。また「3,子どもに将来成功してほしいからこそ期待している」場合であると通常級での在籍を続け、子どもの負担が大きくなるケースや進学や成績に対して過剰に期待され、親の期待通りにいかないことで無気力や非行行動が生じてくるケースをよく耳にします。発達障害傾向の子どもの場合は、情緒の混乱から二次障害と言われている精神疾患がともなう場合も少なくないのです。
以上のように今年10月に発表があった「2023年度不登校最新文科省統計」の結果は発達障害児童生徒の増加の傾向とも関連性が大いにある問題であると感じています。私自身も長い期間、自然学園をはじめとして不登校生や特別支援教育を必要としている発達障害傾向の子どもたちと関わっている中でこのような結果を複雑な気持ちで受け止めています。
(※コラムに掲載されたものを一部抜粋しております。)