バンブー教室:バンブーだより12月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-2
2025年3月26日
発達障害のお子様の勉強のつまずきについて
(1)ワーキングメモリについて
先月号の思いやり収穫祭の特別講演会のお話で触れさせていただきましたが、バンブー教室のお子様方の学習のつまずきは、読む、書く、聞くなど、情報を処理する認知の偏りに起因しています。視覚的な機能や聴覚的な機能が弱いことではありません。一般の人には気付くことができない、人には見えないつまずきが起因しているのです。読むことに苦手さがある、書くことの苦手さがある人は、宿題などは到底できないでしょう。「読む・書く」に苦手さがある人は、問題文や文章などを読んで、設問に応じた答えを解答欄に筆記することは困難を極める行為であり、課題とされる項目が「わかる、わからない」、「理解できる、できない」以前の問題です。中学生が、学力考査の前に提出を義務づけられている教科書ワークは、たとえ答えを写すだけだとしても、解答を書き写すだけで他の勉強は手につかない人が多いと思います。
このような人の場合、ワーキングメモリに原因があることが考えられます。ワーキングメモリとは、情報を一時的に記憶・処理する能力であり、そのための必要な頭の中のメモ帳の役割をしている機能です。たとえば授業で、先生が黒板を使って説明を行う際もその文字を自分のノートに書き写すには、一度頭の中のメモ帳に板書にある文字や記号を記録して、ノートにその文字や記号を書き写します。文字や記号の形状や位置的な情報の記憶が書き写す行為の処理として必要になります。その際の頭の中のメモ帳がワーキングメモリなのです。
足し算や引き算などの計算の際には、数字を一度頭の中のメモ帳に記憶させ、計算のルール・手順にもとづいて解法し、処理されたその数字を答えとして解答欄に記入するのです。文章読解も前に書いてある事柄や登場人物の行動や発言した言葉の記憶がないと、文章が先にすすんだ時に書かれている内容を理解することができなくなります。その際も、前に書かれている文章の事柄を一度頭の中のメモ帳に残し、登場人物の行動や発言を時間軸に沿って処理するワーキングメモリが不可欠です。
このことからもわかるとおり、一人ひとりの感覚的な偏りや情報を処理する認知力の凸凹を把握できれば、どのような覚え方なら記憶し処理しやすいのか、どのような課題を提示したら課題に取り組みやすくなるのか、どのように問題や課題のプリントを工夫したら解答欄に答えが書きやすくなるのかなどを考えて課題や問題に取り組めるようになることは不可能なことではありません。
バンブー教室のお子様方で鉄道好きの人は、学校の漢字のお勉強は全くできないのに、駅名の漢字はすぐに覚えてしまう人がいます。自分の興味があるものには、好きな列車の車両の種類やスタイルやデザイン、色彩およびその路線と駅名がイメージとして結びつき鮮明に記憶されるので、駅名の漢字も短期記憶に結び付けやすく、何度も反復して写真や雑誌を見ながら駅名を思い起こすことで駅名の記憶が定着されるのです。
一方、子供たちにとってテスト勉強などの情報は、生命の保存という観点からはなかなか重要という認識を持ちづらいものです。勉強で得られるような興味がなく、印象が薄い知識を定着させるのは容易ではなく、何度も何度も反復して海馬に情報を送り、生存上必要と思わせない限り、情報は長期記憶に移行されず、忘れ去られてしまうことになります。 最低でも海馬の段階をクリアして、側頭葉などの大脳皮質に保管しなければ本物になりません。勉強において試験に出る漢字が頭に入らない、英単語が覚えられないと悩んでいるという人は、1か月以内に繰り返さないことが原因です。最初の1か月で何度も繰り返し復習していくことによって、長く忘れない本物の記憶にできるのです。ただし、興味がなく印象に残りにくい情報を自分のすでに知り得ている知識と結び付けて情報のイメージをより印象深くして興味あることとして海馬で処理されることで繰り返し情報が反復され、長期の記憶に保存されることは不可能なことではありません。
(※コラムに掲載されたものを一部抜粋しております。)