バンブー教室:バンブーだより7月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-2
2025年7月5日
3,WISC-Ⅴの検査の指数から読み取れる認知機能の凸凹が教科や学習課題の苦手さになっている具体的な事例について
小学校の先生が教える漢字学習は、書き順から教える継次処理的な学習方法を採用しているので、書き順に沿って書くことで段階的に漢字の暗記に繋がります。何度か書くことによって記憶に定着し、熟語とともに言葉の種類が増えていきます。一般には通常クラスの8割のお子様は、このような勉強の仕方で漢字を覚えることが可能です。しかし、残り2割のお子様はこの継次処理的な学習方法を補うために、言語的な手がかりや視覚的な手がかりを必要としています。特別支援が必要なLD傾向などの生徒は、通級などで個別に指導してもらえる学習環境では彼らのペースに合わせながら、言語的な手がかりや、視覚的な手がかりで補う学習が可能ですが、残りの1割はそれでも覚えることができません。
視覚的な認知性が優位で、視空間のワーキングメモリに強さのある人たちは、周りの状況を観察しながら体を動かし、実際に特定の作業を進めながら物事の全体像を把握し理解していくようなタイプの人で、映像的な記憶のほうがイメージしやすく、いくつかのイメージ的な記憶をたどり、映像から事象を結び付け、頭で考えを操作し、まとめていく同時処理の方策を得意としているタイプなのです。そのようなお子様には、同時処理での学習を提示していくことで記憶につながることができるのです。同時処理は視覚的、運動的な手がかりでイメージづけて理解している事柄と関連したいくつかの記憶を同時に思い出し、統合することで解法に結び付ける処理のことを言います。思考性が問われるようなゲームが得意なタイプは同時処理が得意なタイプです。これはまさしく認知機能の強みや弱みの凸凹を検査によって把握し、それによって、つまずきのポイントや学びの特徴を押さえ、有効な教え方を提示することが可能になるということです。そして、このことは、「つまずきのポイント」と「学び方の特徴」をWISC-Vの検査で把握したうえでの支援を表した具体的な事例の1つです。
ワーキングメモリは作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力です。その能力は目で見たことを覚えたり、目にしたものを理解したり、目で見た情報をもとに適切な答えを推理するなどの視空間のワーキングメモリと、聞いたことを覚えたり、文を読んだ音を聞くことと同じように言語として理解したり、聞いたり読んだりする情報をもとに整理し、まとめたり、適切な答えを推理したりする言語的ワーキングメモリがあります。
具体的には板書を書き写す力などの能力は視空間的短期記憶と言われる目で見たことを一時的に保持できる覚える能力であり、視空間性ワーキングメモリと言う見た情報を処理する能力は、図形の平面図(展開図)を立体として考え、立体の完成形を想像できる能力であり、ダンスやラジオ体操を模倣して覚えることにも必要な能力です。また言語的短期記憶とは聞いたことを覚え理解する能力で、人の話を聞くことや口頭からの指示を理解する能力などです。言語性ワーキングメモリと言われる能力は音声情報を処理しながら保持する能力で作文、文章読解、算数の文章題はもとより話し合いなどに必要な能力なのです。
このようなお子様の能力的な偏りやつまずきが、WISC-Ⅴでは指標によって、よりわかりやすくなります。それによって、具体的にできない教科やその教科の中でもできない課題がはっきりとお分かりになると思います。