バンブー教室:バンブーだより8月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-2
2024年8月29日
2,第18回定期講演会
自然学園では、9月1日(日)に春日部市役所1階「ひだまりホール」にて定期講演会を行います。自然学園では、発達のつまずきのある子どもたちの理解を保護者の方々に深めてもらう機会として、発達障害がある子どもたちの保護者の方々を対象にした発達障害セミナーを定期的に開催しています。
今回の定期講演会のテーマは「『発達障害の人が企業で働き続けるには』~求められる価値観とスキル~」です。
令和6年度からの障害者雇用率が2.5%、さらに令和8年度までに2.7%と段階的な引き上げが、令和6年に厚生労働省が発表したとおりに実施されています。法定雇用率の変更に伴い、障害者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲が、従業員50人以上から43人以上に変わります。平成17年に発達障害者支援法が施行され、知的障害がない発達障害者が精神保健福祉手帳を取得することで社会保障制度を活用できるようになりました。
そのことによって障害者雇用促進法における法定雇用率の対象になりました。このことによって障害者雇用での精神保健福祉手帳の取得者の企業での雇用率は上昇し、2018年4月に企業への雇用の義務化が法的にも実施されたことで2022年のハローワークによる求人の障害者雇用の障害手帳ごとの雇用割合は精神障害者が53%になっています。
企業が求める雇用の中核は精神障害者手帳を持つ自閉スペクトラム症(ASD)をはじめとした発達障害者です。障害者雇用の場合は、雇用のドアは開いてもその職場に定着し、働き続けることが重要になります。発達障害の人が企業で働き続けるにはどのようなスキルが必要とされるのか、精神や知的障害者手帳を持つ発達障害傾向の子どもたちのどのような能力に期待して人材を雇用しているのか、そこで求められる価値観を今回のテーマにしました。
企業の価値観に合った人材を育てるためには家庭での子どもとの向き合い方なども含めた家庭教育が大切になります。
松為信雄先生は、発達障害者の就労支援では、日本の第一人者というべき障害者就労の研究者でありスペシャリストです。専門は職業リハビリテーション学です。早稲田大学卒業後、雇用促進事業団職業研究所(現:労働政策研究・研修機構)研究員、日本障害者雇用促進協会(現:高齢・障害・求職者雇用支援機構)障害者職業総合センター主任研究員、東京福祉大学教授、神奈川県立保健福祉大学教授、文京学院大学教授、文京大学人間学部 人間福祉学科客員教授、厚生労働省労働政策審議会障害者雇用分科会委員、日本精神障害者リハビリテーション学会常任理事、「ニッポン一億総活躍プラン」フォローアップ会合 議員を経て職業リハビリテーションカウンセリング協会講師兼ファシリテーターとして今なお現役で活躍されています。
著書に『発達障害の子どもと生きる』(幻冬舎ルネッサンス新書)、『これでわかる発達障がいのある子の進学と就労―充実した子どもの将来のために』(成美堂出版・共著)などがあります。
私が大学部のカリキュラムの参考にとたまたま手にした松為先生の著書に強く感銘を受け、今まで自然学園で取り組んできた、発達障害がある児童生徒、学生が将来の自立に至る学校教育としての支援内容や目標の置き方にずれがなかったことに確信が持てました。それ以降松為信雄先生の講演会に足を運びより深いお話を聞く機会に恵まれ、講演会の会場で自然学園のサポートをお願いしたことが今回の講演に結びついています。松為先生の講演は今回で8回を数えます。
現在では、障害者雇用の中心は精神障害者手帳および知的障害者手帳を持つ発達障害の人たちが主役になっていると言ってもいい状況です。現在公教育で特別支援教育を必要としている生徒の皆さんは、本人自身もこの現状を受けとめ将来の就労の準備を進めておく必要があるでしょう。
企業は発達障害者のどのような能力に着目して、どのような業務を依頼しているのでしょう。自然学園の卒業生の就労状況からみられるニーズとしては社内便や倉庫管理、小売り店舗でのレジ打ち以外の接客、商品補充など店舗業務、各事業でのビジネスサポート的な業務(データ入力、従業員に向けた書類発送業務、顧客へのDM等の発送業務、顧客名簿の管理、スキャン業務、書類作成、パンフレット、封筒等印刷業務、名刺印刷、発送等)などと並行して清掃や環境整備、会議室の準備、資料、書類の印刷準備などの雑務などが業務内容としては主だっていて、業務の遂行に当たってはグループワークになっています。もちろん企業は、発達障害がある人たちを職場における重要な戦力として考えています。
企業である以上特例子会社も例外ではなく利益の追求が業務における大きな目的です。企業の法定雇用率が2.5%になった今年度は、円安の影響から海外を大きな市場にしている大手のグローバル企業を中心に法定雇用率の充足に積極的になっています。精神の雇用率が上昇している背景には彼らの協働できる能力に期待しているのです。ひとり一人指示をするのではなく、またミスを個々にフォローすることでもなく、より効率的にグループワークで業務を遂行し、完結できるシステムを大きな企業ほど採択しています。それに順応するには自己決定力の高さなのです。ではどうしたら自己決定力が育まれるのか。お子様と保護者との関係性や向き合い方なども含めて具体的な関わり方をお話ししていただく予定です
そして自分の特性を生かした仕事を得て働くことを継続するためには、どのような準備が必要なのか。企業は発達障害者のどのような利点を業務に生かして、利潤の追求の役割を担わせようとしているのか。そのために多くの企業が実施しているシステムや具体的な業務などのお話しも踏まえて、そのための準備性を家庭や学校が、どのように用意していくことが採用への近道になるかを保護者・本人と一緒に考える機会にできたらと考えています。
多くの企業のアドバイサーなどを務め、採用関係者とも関係がある松為信雄先生に直接お話をお聞きし、これから就職を考えている人たちにも参考になるような講演会にしたいと思っています。保護者の皆様のご参加をお待ちしています。