バンブー教室:バンブーだより8月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-4
2024年8月31日
4,特別支援教育を必要としているお子様の就労についての現状での課題
先日、特別支援学校の職業科の先生とお話しする機会がありましたが、在籍生徒に自閉症スペクトラム傾向の発達障害がある生徒の割合が増えてきているというお話でした。企業就労を目標に置いていることで、在籍生は実習で認められることが採用に直結するため、3年間、企業が求める限定された技能を習得するための訓練や言葉づかいおよび振る舞いなどのビジネスマナーの指導が、特性から入らない発達障害傾向の生徒が生まれつつあるということでした。
特別支援教育を必要としている一人、ひとりの生徒のニーズや特徴を理解した支援計画を実践し、就労に結び付けていく就職指導が受けられる高等学校が、高等学校の全日制、定時制、通信制も含めたどの課程でも少ないことが最も大きな課題だと思います。
特別支援教育を必要とする発達障害傾向の生徒の本質を理解して、個々のニーズや進路に対応し、指導ができる高校が実在しないのが現状だと思います。
2018年4月1日から通級が制度化され、ようやく高校での特別支援教育が見直されましたが、現状で期待されたような実践はできていないように思います。2015年に高等学校における個々の能力・才能を伸ばす特別支援教育モデルが事業開始され、自治体でモデル校に指定された高校は学校設定教科として「ソーシャルスキルトレーニング」や「自立活動(ライフスキルトレーニング)」や「ソーシャルスタディー」、生活向上のための「コミュニケーション」などと称された教科を導入して、彼らの将来的な自立を念頭に置いたSSTを実践する方向性が示されていました。
このような取り組みは高等学校の特別支援教育が、発達障害のある高校生にとって企業就労に必要なスキルがソーシャルスキルだと位置付けているからに他なりません。働くためにどうしても必要とされるスキルをSSTを通して学んでいくのです。
では彼らに求められるソーシャルスキルとはなんでしょうか。私は企業の方々への実習のご依頼や卒業生が就職した企業への定着支援などを通して、各採用担当者から採用の基準をお伺いする機会が多いのですが、どの企業からも求められることは「勤怠」「情緒の安定」「コミュニケーション」に集約されるように思います。
まず「勤怠」は毎日の勤務が安定していると言うことです。このことは家庭での生活習慣が確立していることを意味します。睡眠、食事、入浴のルーティーンが慣習化されていれば授業中に居眠りすることもありません。毎日活気にあふれた学校生活を送れるはずです。
「情緒の安定」に関しては、特に精神手帳を取得されている生徒の多くが「合理的配慮」を期待されていると思いますが、職場で他の職員に迷惑をかけるような状況がある場合は就労すること自体が難しくなります。気持ちの落ち込みや不安、イライラからくる衝動的な行為はセルフコントロールできるスキルが求められます。
「コミュニケーション」に関しては、聴覚・視覚からの認知について、職場で求められるレベルが基準になります。具体的に言えば口頭だけの指示ではなく、メールや指示書など紙面での指示も含めた優位性に対する配慮はあるものの、個別での対応は期待できません。生産性を重視した職場では特別に個人に時間をかけることは効率性を落とすことになるからです。