バンブー教室:バンブーだより9月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-4

2024年9月24日

4, おわりに

2学期は、学校行事が多い時期でもあることから学校でのトラブルも多い時期です。さらに前述した通りイライラしたり、モヤモヤしたり、1年の中でも精神的に不安定な落ち着かない季節の真っただ中にいるわけです。

運動会などは、感覚統合の問題や認知のつまずきがあるお子様には、非常にストレスが強まる行事になります。運動会が不登校のきっかけになった小・中学生は珍しくありません。勝ち負けのこだわり、スピーカーから流れる大音量の音楽やマイクによる大きな声、生徒の大声援などが聴覚過敏の生徒には雑音にしか聞こえません。そして、何より感覚統合の問題から生じる運動の苦手さが運動会への嫌悪を助長します。人の動きを模倣することが苦手な生徒は、団体での競技やダンスなどで周りと動きが合わず、非難の対象になってしまうのです。整列や行進も周りと歩調が合わせづらく、列を乱してしまうきっかけを作ってしまいます。そこに人間関係のトラブルなどが重なることによって、不安が強くなり、情緒の混乱を生じ、パニックなどに結びついてくるのです。

感覚統合とは、外部からの刺激を脳で適切に処理する事です。基礎となる感覚がお互いに関係して、それぞれがその機能を築きながら、脳で適切な処理をされることで運動や学習、日常生活の適切な行動するための働きをしています。

人間の感覚には、『自覚しやすい感覚』と『自覚されにくい感覚』の2つがあります。自覚されやすい感覚には五感(視覚・聴覚・味覚・臭覚・触覚)があります。他にも触覚には、触れたものを識別する機能だけではなく、他人に触れられるのを払いのけたり、他にも衣服の肌に触れる「ザラザラ感」や「フワフワ感」など特定の素材に拒否反応を示したり、苦手な触感の食べ物を吐き出したりする等の『触覚防衛反応』と呼ばれる本能的な感覚も持っています。

自覚されにくい危険を察知するために私たちが無意識に感じている五感以外の「自覚されにくい」感覚には、前庭感覚と固有受容覚があります。前庭感覚は、バランス感覚や空間内を移動する時に変化を感じて脳に情報を送る感覚で「身体の傾き」「回転」等の動きにこの感覚が働きます。前庭感覚は、眼球運動にも作用しています。顔の前の人差し指を立てて、指を振ると指がぶれて見えますが、同じ速さで顔を振っても指はあまりぶれずに見えます。これは前庭感覚が働いているのです。

この感覚が鈍感だと、学校の朝礼などでまっ直ぐ立てなかったり、黒板の字をノートにとることが苦手だったりします。逆に、ブランコなどの揺れる遊具を怖がり、身体の姿勢の変化に恐怖感を覚えるような子供は、この前庭感覚が鈍感なタイプです。

固有受容覚は、手足にある関節や筋肉から動きの度に脳に情報を送る感覚です。「トランポリンを跳ぶ」「鉄棒によじ登る」「鉄棒にぶら下がる」「壁を押す」などの動きに特に働く感覚です。鈍感なお子様は、細かな動作が苦手で不器用なお子様が多いようです。お遊戯、ダンスの動きを模倣することが苦手で、文字がうまく書けないお子様もいます。逆に前庭感覚が敏感なお子様は、ぶら下がる遊びを好んだり、人から強く抱きしめられたりするのを好むお子様もいるようです。発達障害を抱える子供はこれらの感覚に敏感過ぎたり、逆に鈍感過ぎたりする故に、日常生活において困難さを感じることが多いのです。このことが微細運動や粗大運動の苦手さに繋がっているようです。粗大運動の苦手さは、学校の体育の授業で経験するようなマット運動、鉄棒、縄跳び、跳び箱、ボール運動等の苦手さに繋がり、微細運動の苦手さは、手先の不器用さに関係し、ノートに字を書くなどの微細運動にもつながります。これらの苦手さが発達障害がある子どもたちの特性のひとつであり、板書が写せない、漢字が覚えられない、宿題が提出できないなどの原因の一つになっていると考えられています。そして学力不振の要因のひとつでもあるのです。

保護者の方々はお子様方の様子の変化を見逃さないようにしてください。自然学園では問題行動や情緒の混乱の原因をアセスメントして、適切なカウンセリングや問題行動を解決するためのSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)をバンブー教室の授業のカリキュラムに取り入れています。もし情緒の混乱や精神的に不安定な状況があれば保護者の皆様方と連携しながら早期の解決を図りたいと思います。これからもご協力お願い申し上げます。

自然学園学園長 小林浩

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