中学部:中学部通信卒業記念号 学園長ブログ~可能性のとびら~-3(1)

2026年3月21日

3,発達障害傾向の学力不振の本当の理由とは

以前に講演もしていただいた星槎大学副学長の西永先生は、その著作「子どもの発達障害とソーシャルスキルトレーニング」で、「ソーシャルスキル」のスキルは「技能」ではなく「学習性の能力」であると述べています。LDやADHDなど発達障害の傾向がある子どもたちの「ソーシャルスキル」や「コミュニケーションスキル」および、読むこと、書くこと、聞くことにも関係している教科学習を含む学力に相当する「アカデミック・スキル」は学習や練習の結果で大きく変わってくると書かれています。

「発達障害がある生徒の場合は特に発達の偏りに配慮して、その子どもの現在の能力に見合ったできる課題を用意して結果を出すことが大事であり、結果が出ないのは教えるプロセスが間違っているのです。子どもはできるから練習を頑張れるのであって、できないから練習が苦手なのです。不登校の理由である無気力は「学習におけるプロセスの問題である。」と講演会で西永先生はお話しされていました。

発達障害の特性としてADHD(注意欠如多動症)で見られる集中力や持続性のつまずき、ASD(自閉スペクトラム症)で見られる「興味に偏り」や「こだわり」が学習に取り組む上で大きな障壁になってしまうことが学力不振につながる未学習の理由としては大きな一つだと思います。苦手なことや興味がないことには極端に意欲がなくなり、家庭での学習そのものを遠ざけてしまう傾向があります。ですから不登校が増加する理由としてよくあげられる宿題や提出物などの課題の未提出は、このような特性に大きく関係している結果として考えられることだと思います。家庭でタブレットやゲームの機器が身近にあるような環境があれば気持ちが興味のあるそちらの機器に奪われてしまい、YouTubeで動画を見たり、SNSに興じたり、ゲームでつながった相手との対戦ゲームに興じてしまって、学習を後回しにしてしまう行為は、健常の子どもたちにもよく見られることです。彼らの場合はそれが習慣化してしまうことで学力不振の原因になっています。

また、一般にワーキングメモリと言われる学習の基礎となる情報を処理するための能力である認知的スキルが問題になって学習でのつまずきを生じているケースが考えられるのです。授業に参加することも家庭で学習的な課題を消化することも、漢字の暗記、国語の文章読解、計算、算数、数学の文章題や英語のヒアリングに至るまで、ワーキングメモリを使わずに学習することはありません。ワーキングメモリは「脳のメモ帳」と言った考え方があります。学習に必要なことは学習に取り組むための順番を取り決めたり、取り組みやすいプロセスを考えたり、今まで覚えた知識や処理するパターンやイメージを重ね合わせて頭で問題の解法を思い浮かべたり立式するのに役立ちます。またADHDの特性である気が逸れてしまって勉強に集中しなければいけない時にもワーキングメモリは重要な役割を担います。

宿題などはワークシートや宿題のプリントに解答を記述しなければなりません。また問題が書かれた文章をどの教科でも読んで理解する必要があります。その際にワーキングメモリを必要とします。そして導き出した解答を問題集やノート、プリントに書き込む作業を必要とします。そうなると「読む」「書く」の能力が必要になってきます。最新の限局性学習障害とは、このような「読む」「書く」「計算する」などの力にあらわれることが多く、情報を処理する際の能力の凸凹が関係していると言われています。まさしくワーキングメモリの特性が関与していることが考えられるのです。

潜在的に持っているこのような発達の偏りから生じる凸凹は、彼らの学習意欲や自己肯定感にも密接に関係しているので、今まで学習するために置かれた環境がマッチせずに彼らの特性に負荷をかける結果になってしまうと、ADHDの特性である「不注意性」や「投げやりな態度」や「集中力の無さ」を余計引き出してしまうことになり、学習に取り組むことを阻害してしまう結果になるでしょう。だからこそ学習に取り組ませるプロセスを考える際に非常に重要なポイントになるのです。

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