中学部:中学部通信10月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-4
2025年11月1日
7、第17回 思いやり収穫祭 特別講演会『不登校からの脱却』のお知らせ
今年の思いやり収穫祭の特別講演会は、11月2日(日)の午後2時から自然学園の校舎にて卒業生との対談を織り交ぜながら、現在の社会問題にもなっている不登校の増加に関する問題を考えていきたいと思っています。
不登校生が多くなっていることは度々お話しさせていただいていますが、その理由の大半が
「不安・無気力」が挙げられています。「いじめ」「人間関係のトラブル」や「学力不振」「提出物が出せない」「教員との問題」等の明確な理由がない不登校の場合は統計の理由として「不安・無気力」になってしまうケースが多いようです。併記した理由の積み重ねが気持ちの変化に繋がり、行きたくないと自分の気持ちが判断した時には、もう引き返せないような思いが強くなってしまうのではないかと考えています。
不登校を経験している生徒の半数近くは90日以上の長期化している不登校生であることも、二次的なつまずきに陥って悩んでいる発達障害がある生徒と重ねて考えてしまいます。よく不登校といじめとの関連性を取り沙汰されることがありますが、不登校のきっかけとされる要因は「いじめを除く友人関係の問題」や「学業不振」が圧倒的です。もちろん学校や教員側のいじめを認知していたかの問題はあるとは思いますが、「いじめを除く友人関係の問題」の背景にあること
には、その問題を解決するためのコミュニケーション力の欠如や、相手の気持ちを読み取るスキルなど対人的な能力の希薄さに原因があるように思っています。そして、自己肯定感が持てない気持ちが他者との距離感を大きくし、クラスに自分の居場所を感じられなくなってしまうからではないでしょうか。そのことから来る不安や、他者に対する劣等感が情緒の混乱に結びつき、不登校が長期化します。強い不安から来る情緒の混乱には、発達障害の二次障害といわれる精神疾患である拒食・過食、不眠、強迫性障害なども含まれています。
生徒の皆さんは、どちらかと言うと人の気持ちを読み取ることが苦手な人たちです。クラスメイトからは自分勝手でわがままだと誤解されている人もいるでしょう。人の気持ちを読めない能力には、生まれながらにもっている性格やつまずきとされる特性も起因していることは事実ですが、それだけではありません。自分自身に自信がなくてコンプレックスが強く、自己肯定感が少ない人たちは、その裏返しとして自己主張の強さや他者への攻撃性が、自分の気づかないところで強くなります。だから新しい環境で不安を抱えている人ほど、なんとか人に認められようと思って肩に力が入って頑張りすぎてしまうのです。そのような行動が他者から見ると、去勢を張っているように見えたり、強引で我儘そうな嫌な奴に映ったりしまいます。そのようなことが、いじめや人間関係のトラブルのきっかけとなるのです。不安や緊張感の強さは問題行動を引き起こす引き金になりやすいのです。
自然学園に在籍している不登校を経験しているお子様のことを考えると、入学以前の小・中学校では椅子にちゃんと座れずに、絶えず横向きに足が机からはみ出しておしゃべりが止まらず、貧乏ゆすりが多く、継続して先生の話を聞くことや課題に集中して取り組むことが苦手な子でした。結果的に授業妨害になってしまっていたお子様が多かったのではないかと思っています。このようなお子様は、まわりから「落ち着きがない子」や「勉強ができない子」などとレッテルを貼られがちで、先生からも注意される対象に当然なっているので、徐々にクラスメイトからも浮いたような存在になり、クラスに居場所がなくなっているような疎外感を感じてしまうことがあります。そのことから来る「不安・無気力」感に苛まれるようになり、自分でも無意識に学校に行くことが辛くなってしまったことが考えられます。
「落ち着きがない子」と言われるような一般にADHDの傾向がみられるお子様には、このような特徴が見られ、他のお子様に比べかなり活動的でもあるため、思ったことをそのまま口にして授業中に先生の説明を遮ってしまったり、クラスメイトの発言を中断させてしまったりすることで、授業の進行の妨げになっていることさえ、自分では気づけないお子様が多いのです。また、気持ちが持続できずに学習課題に集中しなければいけない場面で別のことに気がとられてしまい、授業とは無関係なことに取り組み出してしまうような問題行動の多さも良く見受けられる光景です。
このような傾向のお子様に見られる共通した課題は、抑制する力が弱いと言うことです。抑制とは不適切な行動を考え、発言をコントロールする能力です。これにはワーキングメモリの弱さも関係していると言われ、行動を抑制するための自分で注意を払わなくてはいけない課題を忘れてしまい、すべき行動を見失ってしまいます。それによって、十分承知している問題行動を繰り返してしまい、注意されてしまうのです。また、やるべき行動の優先順位をつけられないことも特性であるため、やらなくてもいい行動がどうしてもやるべき行動より優先してしまい、結果的に同じ失敗を繰り返すこともあるでしょう。
「お勉強ができない子」は、ワーキングメモリと言われる学習の基礎となる情報を処理するための能力である認知的スキルが問題になって、学習でのつまずきを生じているケースが考えられます。 発達障害の子どもは、視覚的な情報が得やすいタイプが多く、目で見て理解することが得意です。反対に、目で見て見えないものを理解することが苦手で、話し言葉も理解することが苦手なタイプも多くいます。まわりの子が普通にできることができず、問題行動につながるケースも少なくありません。未学習でできないことも、ことの他多いものです。この場合、彼らの特性を把握して彼らがわかるように伝え、正しい行動を教えてあげることが大切になります。
このようなことがきっかけで不登校になった中学部・高等部の卒業生が、どのように不登校を乗り越えられたのかを卒業生に質問させて頂きながら、入学後の体験や経験を踏まえ、不登校からの脱却に向かった経緯をお話しいただく機会にしたいと考えています。今回参加していただく演者は現在、一般就労において企業で活躍している自然学園の卒業生です。発達障害の診断があり、小学校、中学校時代に不登校を経験しています。不登校になった経緯と発達障害の特性との関連性やいじめや人間関係のトラブル、学力不振など学校生活における困難さなどについての経験談をお聞きしながら、現在に至る経緯や、立ち直りのきっかけをお話しいただく予定です。
現在、不登校や行き渋りを経験し、将来的な不安や絶望感を感じ悲観している人たちや、進路や進学に対する不安を感じている人たちに対して、勇気や希望を送り届けるコンセプトで実施いたします。一般就労や通信制高校に関する疑問や関心がある方も是非ご参加ください。
1日目の模擬店や作品展示にお越しの際は、卒業生座談会『僕たちの未来』にぜひご参加ください。また、2日目の特別講演会をご希望としている保護者の方は、音楽祭にお越しになった際、会場である自然学園の校舎までお立ち寄りください。ご来場をお待ちしております。また、ご参加される際には事前の予約が必要となります。ご連絡をお待ちしています。





