中学部:中学部通信4月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-2
2025年4月21日
そして、今まで居場所がなく苦手だった学校やクラスが、安心して過ごすことができ、自分を必要としてくれる信頼できる仲間がいる場所であり、安心し充実した時間を過ごせるかけがえのない空間にさせてあげたいと思っています。
中学部に入学された新入生の皆さんはもとより、在籍生の皆さんも勉強に不安を持っている人たちは多いと思います。LD傾向(学習障害)のある人たちが、学習面でもその習得に困難さを最初に感じてしまう幼稚園の年中、年長期では、ことばの遅れから生じるコミュニケーションの苦手さが「ひらがな」「カタカナ」などの習得や、数唱から数字の習得をするのに数量のイメージが頭に思い描けなかった彼らの特性に大きく影響する場合があるのです。このことを
数処理と言います。特殊音節(つまる音)が聞き取れないお子様は、ひらがなで「きゅうり」を書きとることは不可能です。ワーキングメモリの問題とあわせて視空間の認知が弱く、固有受容覚など感覚統合の問題が重なると、ノートの枠に字が収まらず、ひらがなやかたかなが形作れないといったつまずきを生じる子どももいます。
勉強に苦手さを感じている人たちのほとんどが読むこと、書くことに苦手さを感じています。
在学生の学力不振のきっかけは、小学校の授業に参加できないことから始めるケースは少なくありません。授業に参加できなくなるきっかけの一つとして、板書をノートに書き写すことの苦手さを挙げている人がたくさんいます。板書に苦手さがあれば、書き写すことでいっぱいいっぱいになり、先生の説明を聞くどころではないでしょう。どんどん先に授業は進んでしまい、まだ書き写し切らないうちに、次のテーマに進むために書き写していた板書の文字を消されてしまいます。そのことを繰り返し、もう勉強なんかどうでもいいと感じている人は少なくないと思います。
そんな人は、勉強ができない人ではありません。多くの人は、視空間のワーキングメモリに問題があり、黒板に書かれた文字や記号を、頭の中に短期間記憶しておくことが苦手な人なのです。文字の形状をうまく写しきれず、形作れない人は、文字の大きさが揃ってなく、枠にうまく収まることができないと思います。文字や記号、数字の形を読み取れない人は、眼球の運動に問題があることが考えられていて、うまく書く作業に苦手さを感じている人は、手先の不器用さに関係する微細運動が、感覚統合の問題で困難さを生じていると考えられています。教科書および教科書ワークなどに書かれている文章を書きだすことも苦手です。このようなタイプの人は、漢字を覚えることも苦手な人が多いのです。
読むことが苦手な人は、勉強の苦手さに直結します。試験に反映するような知識は、教科書に書かれている知識である言葉を覚えるため、正確に文章を読み取ることができない人は得点に結びつかず、勉強が苦手な人と判断されてしまいがちです。
目で追う文字や記号、数字を認識できない人は、眼球運動に問題がある人が多いと思います。このような人は、文字を目で追っていると段落を飛ばしてしまったり、単語を飛ばして読んでしまったりしてしまうことがよくあります。
すると、文章を読むこと自体が面倒になり、教科書を開くこともしなくなるでしょう。文章の文字や記号などは目で追うことができ、音読はできるものの、文章を読んで内容を理解することが苦手な人もいます。このような人は、言語的ワーキングメモリが弱いので、文章を読みながら
センテンスが変わってしまうと前の書かれている内容を保持することができないため長い文章
になるほど書かれている内容全体の理解に結び付かないのです。主人公の気持ちの移り変わりなどを読み取ることも困難です。国語の読解問題で抜き出しの解答は、文章の中で見つけることができても、設題の答えを文字制限の字数内でまとめ、書き出すことは非常に困難さを生じてしまいます。
作文や人前で相手に伝わるように自分の気持ちを表現することも同様です。このこともワーキングメモリが関係していて、頭に思い浮かんだ答えとなる箇所を短期に記憶して、整理してひとつのセンテンスにまとめる作業は、言語的なワーキングメモリが必要となります。ワーキングメモリは頭の中のメモ帳と言われていて、情報を認知するための短期記憶であり、その記憶を保持して処理し行動を実行するための大きな役割を果たします。LD(学習障害)傾向の人たちをはじめ、発達障害傾向があり勉強の苦手な人たちは、ほとんどがワーキングメモリの問題がある人たちです。授業中質問されても答えられない、板書がとれない、宿題ができない、テストの得点が取れない等の負担が重なって苦手な勉強から逃げ出してしまう子どもたちなのです。年齢が上がり思春期近くになれば、他の子どもとの比較の中でのコンプレックスを持つようになり、自分に対しての自信を失っていきます。その不安な気持ちが二次障害につながっていきます。
(※コラムに掲載されたものを一部抜粋しております。)