中学部:中学部通信5月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-1

2025年5月28日

1,はじめに

ゴールデンウィークが終わりました。少しずつ目に映る花も桜から藤の紫色になり、最近はバラの鮮やかな赤やピンクなどの色を目にするようになりました。人の笑いにあふれた街並みが心なしかカラフルなペンキに塗り替えられたように、にぎやかに色めいて見えます。

小学校・中学校のいずれの年代においても、「学校生活」、「家庭生活」、「本人の問題」のいずれかに起因した「不安などの情緒的混乱」により不登校状態が継続している場合が、最も多いと言われています。不登校は中学生が一番多く、学年ごとにその数が上昇しています。増加率で見ていくと、小学校から中学校に進学した1年生が最も高く、中学1年生で特に不登校生徒の増加がみられます。この現象が中1ギャップと言われています。これには、中学生になったことにより、勉強の難易度が上がることやクラスメイトが大きく変化するなどの環境変化が関係しています。4月27日の「藤まつり」にあわせて実施させていただいた「藤まつり緊急企画シンポジウム&個別相談会」では、大きなテーマとして、この現象のことを取り上げました。

特にゴールデンウィーク明けのこの時期は、一般に五月病と言われる精神的な状態に陥りやすいと言われています。そのなかでも小学校の1年生から生じている現状は、小1プロブレムとして注目されています。小学生や中学生でもゴールデンウィーク明けは要注意と言われる時期のため、不登校も増加すると言われています。このようなことから、中学部通信では以上に関連する項目を特集させていただきました。

 

2,精神的な問題と不登校についての関連性とその理解

春先は精神的なバランスが崩れ、精神的な不安定さが助長しやすい時期でもあります。一般的な「五月病」というと、新入社員のサラリーマンや大学生の新入生などにみられる新しい環境に適応できないことに起因する精神的な症状を指していました。

ゴールデンウィーク明け頃から毎日の生活にやる気をなくしてしまう状態が続くことで、医学的には適応障害や気分障害、鬱(うつ)と診断されるような症状を「五月病」といいます。症状としては、イライラすることが多くなったり、学校に行くことが億劫になったりすることがあります。また、「不安」、「焦り」、「憂鬱さ」を強く感じるようになることもその一つです。ですが、診断名の基準は症状とは違います。それぞれのお子様にそれぞれの困り感があるのと同じように、それぞれ違った体調不良の理由があります。不登校の理由も同じように一人ひとりに違った理由があるのです。不登校と言ってその理由を限定したりせずに、ひとり一人のお子様に寄り添う姿勢が大切だと思います。

朝、なかなか起きることができない、夜眠れない、食欲がない、頭痛、めまいなどを頻繁に訴えるようになったら要注意です。タイプ的に言うと真面目で完璧主義な性格で、自分で早く環境に適応したいと頑張る気持ちが強い人ほど、期待していた新生活のギャップに落ち込んだり、必要以上に頑張りすぎたりして緊張が強くなり、モチベーションが継続できなくなる傾向にあるようです。

また、最近では中学生、高校生ばかりではなく、小学生や幼児にもこのような症状が見られ、低年齢化が進んでいるようです。中学部の子どもたちの場合は、発達のつまずきが起因して、二次障害と言われる精神的な不安定さが、不登校などの問題行動へとつながっていく傾向があります。

先にお伝えしたように、真面目で完璧主義な性格で、自分で早く環境に適応したいと頑張る気持ちが強い人ほど、期待していた新生活のギャップに落ち込んだり、必要以上に頑張りすぎたりして緊張が強くなり、モチベーションが継続できなくなる精神状況になるようです。発達のつまずきがある中学生のお子様におこりやすい『中1ギャップ』と一般に言われてきたつまずきは、「五月病」と同じような症状です。会社に行けない、行きたくないという社会人の気持ちと子どもたちの気持ちは同じだと考え、予想できる不登校に慎重に対応していく必要があると思います。

このような状況になると、医療機関の受診を考えてしまいがちですが、医療機関の受診を嫌がるお子様もいます。また、教育委員会が設置している教育支援センターなどで行われている教育相談も、先生や大人に不信感を感じているお子様にとっては、今の自分を到底受け入れてくれず、理由を決めつけられるのではないかと考えがちなのです。学校のスクールカウンセラーや相談室の教員も同様です。学校側に都合のいい選択を押し付けられるのではないかと、危惧しているお子様も多いのではないでしょうか。不登校になったお子様は、しばらく何も考えられず、今のままの状態や、今のままの自分を受け入れてほしいと思っているのではないでしょうか。

臨床心理士の資格を持ったベテランで手慣れたカウンセラーの声かけさえも、カウンセラーにとって都合のいい意見に誘導していると、先入観を感じて素直に委ねられないお子様もいます。ですから、すぐに特別支援学級への転籍やフリースクールさえも拒否することは必然なのです。相談室登校も適応指導教室の登校も同じです。行き渋りが始まった不登校の始まりには、強い刺激は逆効果です。自分から話したくないのならそっとしておいた方が一番良いのです。

中学部に通っている子どもたちは、勉強が苦手だと意識している人たちが大半を占めているでしょう。認知発達の凸凹に起因しているつまずきを気づいてもらえないまま、他者と比較されて怒られたり、注意されたりすることによって小1クライシスや中1ギャップが始まります。この時期は、お子様の動向に注意を向ける必要がある大切な時期だと考えられます。そのようなお子様の理解を深め、ご家庭でできる対策や学校との連携など最善と思われることを今までの事例も踏まえてシンポジウムではお話しさせていただきました。

 

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