中学部:中学部通信5月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-2
2025年5月29日
3,勉強が苦手な子どもたちの勉強の仕方
文科省は不登校の原因として、①学校に係る状況(学校が原因の不登校)、②家庭に係る状況(家庭環境や家庭で起きた問題が原因の不登校)、③本人に係る状況(学校・家庭いずれも関係のない本人の問題が原因の不登校)の3つに分類しています。③においては、不安や無気力が原因として圧倒的に多いのですが、①の学校に係る状況(学校が原因の不登校)では、学業の不振が最も多い原因として挙げられています。そこで、勉強が苦手な特別支援教育を必要としている子どもたちの勉強の仕方をまとめさせていただきました。
中学部の子どもたちに見られる興味の偏りという特徴は、興味が持てて楽しいと思うことに、とても高い集中力や持続力を発揮して、夢中になって取り組むことができるということです。また、自信があって取り組める課題は、やるべきことが明確に示されていれば、その手順にしたがって粛々と取り組める能力がある子たちだと思います。
学校の漢字は覚えられないのに、鉄道ファンの人たちは、駅名から漢字を覚えてしまう人が多いことが一つの例です。偏りがある能力を興味がないものにでも発揮できるようになればと、保護者の皆様は常々お思いになっていることでしょう。中学部のお子様の特徴である好きなことに対するこだわりや執着心は、認知レベルの困難さをいとも簡単に凌駕する能力を潜在的に秘めているのです。
一人ひとりの感覚的な偏りや情報を処理する認知の凸凹を把握できれば、どのような覚え方なら記憶しやすいのか、どのように課題を提示したら取り組みやすくなるのか、どのようにプリントを工夫したら解答欄に答えが書きやすくなるのかなどを考えて支援を行うことができるようになり、彼らが意欲的に課題や問題に取り組めるようになることは不可能なことではありません。
そして、できたことをほめて認めてあげれば自分に自信が持てるようになります。褒められることを嫌うお子様はいないと思います。自分の中では、今まで一生懸命にやってきたつもりでも、出来ないことや間違えることが多いことに対して、怒られたり、馬鹿にされたり、蔑まされたりと通常級の大半の子どもたちが経験したことのない思いをずっと重ねてきた生徒が中学部には多く在籍しています。
一生懸命取り組んでも認められないのなら、やってもしょうがないと諦めるのは大人だって同じです。ましてや、非常に強いストレスや劣等感を持ちながら、他の選択肢が与えられないのであるならば、そこから逃げたくなるのは十分理解できることだと思っています。
情緒の混乱や無気力で不登校になる生徒の原因の上位に学力不振が上げられますが、自分に自信が待てなくなれば、学習意欲がなくなります。学習において無気力になる状況が、学力不振になる一番の原因であると私は思っています。だからこそ、自信をつけさせていくことが大切です。苦手だと思うことに自信をもたせて自己肯定感を回復させていくことが、学力が向上する大きな要因になると思います。そのためにも、今すぐ学校のクラスメイトと同じような問題を解けるようにするのではなく、そこに結びつく基礎的な内容からクリアしていくことが最も大切なのです。
学習計画を立てる場面においては、今、自分がつまずいているところからもう一歩で手が届きそうな課題にチャレンジできるような目標を立てることが大切です。そうしていけば、課題ができた喜びや達成感を経験させていくことができるでしょう。多くの成功体験が、できないことによる失望感よりも上回っていくことによって、次のステップへと向かう好奇心や学習意欲が出てくるきっかけになります。
そして、人は褒められることで自尊心が満たされ、そこで得た自信が向上心につながってくるものなのです。最初は、凸凹の凸のスキルで解法が見つけられるような課題を選んであげることから始めることが重要なのです。
褒められることのないお子様方は、なによりも褒められたい欲求で満ち溢れています。褒めてあげるために必要なアセスメントや課題設定および勉強に興味を示さないお子様に対しての関わり方を踏まえたプログラムが、自然学園バンブー教室で行っているスローステップメソッドです。