中学部:中学部通信5月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-5

2025年6月1日

通常の学級に在籍する発達障害の可能性がある児童生徒についての実態や支援状況を明らかにするため、文部科学省は2022年1~2月に調査を実施し、全国の公立小中高校から対象校を抽出して集計・分析した結果を2022年12月に公表しました。その調査によると小中学校の通常学級に在籍する子どものうち、8.8%が「学習面又は行動面で著しい困難を示す」ということが明らかになりました。「知的発達に遅れはないものの、学習または行動面で著しい困難」を示し、注意欠陥多動性障害(ADHD)など発達障害の可能性があると推定された小中学生は8.8%で、前回調査(6.5%)よりこちらも増加しています。

メディアの報道によると、文科省の担当者は増加の要因について「保護者や教員の発達障害への理解が進み、対象者に気づきやすくなった」と分析を公表していて、学習面などに困難が生じる児童生徒の割合は、学年が上がるほど低くなる傾向があると考えられています。高校生は今回初めて調査対象となり、発達障害の可能性があるとされた生徒は2.2%でした。

障害や学習の困難を抱える児童生徒は、その程度に応じて特別支援学校や学校内の「特別支援学級」で学び、特別支援学級の在籍生徒数も10年間で2倍にも膨れ上がっているとのことです。今回の調査で、発達障害の可能性があるとされた小中学生のうち、通常学級に在籍したまま必要に応じて別教室などで授業を受ける「通級指導」を利用している児童生徒は10.6%でした。また、教室内の座席の配置や本人の習熟度に応じた課題など、教員による「授業での個別の配慮・支援」を受けていない児童生徒も43.2%いました。

このような生徒のほとんどは、教員側から見ると授業についていくことが困難な生徒で、知的な遅れがさほど問題ではないのにもかかわらず「教科書を読むこと」、「板書をノートに書くこと」、「先生の話を聞き取ること」、「先生の質問に答えること」が困難で、集団授業に参加できない生徒も多く含まれていると考えられます。

そして、これらの「授業での個別の配慮・支援」を受けていない43.2%の児童生徒は、勉強に意欲をなくし、自己肯定感が低くなり、無気力、情緒の混乱、不安の強さなどの具体的な症状が現れ、一般的に二次障害といわれる不登校をはじめとして、家庭内での器物破損、暴力、鬱や強迫性障害などの精神障害などが見られている実情も無視できない現状であると考えます。

自然学園バンブー教室では、特別支援学級にを利用しているしているお子様が多く在籍しています。自然学園高等部においても、支援級に在籍していた生徒の割合が多くなっています。ここ数年、通常学級から特別支援学級に転籍した生徒も増えていると言われています。特に、小学校3年生ぐらいから支援学級に転籍するケースが増えていると報じられています。2013年(平成25年)と2022年(令和4年)の10年間を比較すると、小学校で120,906人から250,335人と10年間で約2倍に増え、中学校で53,975人から99,812人と約1,8倍となり、小学校、中学校と合わせると約2倍になります。ここで注目すべき点は、在籍生の内訳として知的障害の在籍生徒数は小、中、義務教育学校までの総数の統計が90,403人から156,661人と約1.7倍の伸び率であるのに対し、自閉症・情緒障害の在籍生徒数は74,116人から183,618人と約2.4倍まで上昇していることです。

また、通級に通う児童生徒についても、2013年(平成25年)と2022年(令和4年)の10年間を比較すると、ASDの児童生徒が12,308名から36,760名と約2.9倍に増え、情緒障害も8,613名から24,554名と約2.8倍の伸び、LDの児童生徒は、10,769名から34,135名へと約3.1倍へと伸び、ADHDの児童生徒に関しては、10,324名から38,656名となり、何と約3.7倍の伸びとなりました。

このことを見ても、通級を利用している生徒のみならず、特別支援学級に在籍する生徒に関しても、自閉症・情緒の生徒がここ10年間で在籍生が多くなっているのです。ADHDやLDのお子様はもとより、情緒学級のお子様や自閉症でもアスペルガー症候群や高機能自閉症などの診断があるお子様は、療育手帳が取得できないため、高等学校の進学を将来的に考えなければなりません。

現在、特別支援教育を必要としている中学生の進路選択でお悩みになっている保護者の皆さんが多いと思います。特別支援学級に籍を置いている生徒の進路として、高校学校の進学は一般的になっています。

自然学園では、早くから高等学校における特別支援教育の導入をめざし、発達障害者を積極的に受け入れている特例子会社をはじめとした企業との連携を図り、障害者就労枠での就職も進路の選択肢に含め、進路指導をすすめています。

 

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