大学部:大学部通信 新学期特集号-2
2026年9月14日
アメリカの精神医学会が発行する精神疾患の診断・統計マニュアルであるDSMⅣが2013年のDSM5に変更されました。その改訂を受けてASDの可能性があるかどうかを調べるスクーリニング検査では18か月頃(1歳半ぐらい)からASDの特徴が見つけられるようになり、その可能性を疑うことで早期診断が進みやすくなりました。DSMとは精神疾患、神経発達症などを分類し、診断するために基準書です。大きな変更点としては障害を細かく分けるのではなく「スペクトラム」として捉えると言う考え方が挙げられます。高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群などの診断が自閉スペクトラム症(ASD)という一つの診断に統合されました。自閉スペクトラム症(ASD:Autism Spectrum Disorder)は、生まれつきの神経発達症の一つです。病気ではなく、脳の発達の特性によって、物事の感じ方や考え方、コミュニケーションの仕方が周囲と異なることを指します。「スペクトラム」とは「連続体」という意味で、人によって特性の現れ方や程度が大きく異なります。
症状が重い場合は、知的障害を併せ持ち、言語の獲得が難しく、言葉をほとんど話さない、または全く話さないなどコミュニケーションが非常に困難で対人関係が築けず、身辺自立が困難で日常生活に支援を必要とします。常同行動、クレーン行動、パニック、自傷行為などの行動特性も見られます。強い感覚的な問題(感覚過敏、感覚鈍麻)も特徴として見られます。
自閉スペクトラム症の主な特徴は、コミュニケーションや対人関係にあるとされていて①「相手の気持ちや場の空気を読めない(心の理論)」、②「一方的な会話になりやすい。共通の話題で話しを弾ませることができない。」③「相手と距離を縮めるきっかけが掴めず、他者と接し方がわからない。」④相手の表情や声のトーンから気持ちを読み取ることが苦手」などの困難さを生じている人が多いでしょう。強いこだわりや興味の偏りも大きな特徴の1つです。好きなことには非常に高い集中力を発揮しますが、興味のないものには全く関心を示さない人たちが多いです。行動面では突然の変更が苦手で予測できる生活を好み、突然の変更で強い不安を表してパニックになることがあります。感覚的な特徴としては機械音、ザワザワ感、強い光に対して過敏な感覚的な問題を抱え、痛み、暑さ・寒さなどの触覚・痛覚の鈍さや視覚・聴覚・嗅覚の鈍さ、無意識的な固有受容覚などの鈍さなど感覚鈍麻さを抱えています。
ADHD(注意欠如・多動症)は、ASD(自閉スペクトラム症)と同じ神経発達症の一つです。生まれつき脳の働き方に特徴があり、「注意をコントロールする力」「行動をコントロールする力」「衝動を抑える力」に特性がみられます。ADHDの3つの特徴の一つは「不注意」で注意を持続することが苦手です。症状としては①「忘れ物が多い」、②「宿題を提出し忘れる」、③「話を最後まで聞けない」、④「ケアレスミスが多い」、⑤「必要な物をよくなくす」、⑥「整理整頓が苦手で片付けができない」、⑦「順序立てて行動する継次処理が苦手」、⑧「集中が継続しない」などが挙げられます。2つ目の特徴としての多動性はじっとしていることが苦手なことです。症状としては①「授業中に立ち歩く」、②「椅子を揺らす」、③「足をずっと動かす」、④「おしゃべりが止まらない」、⑤「落ち着きがない」、⑥「常に体を動かしている」などが挙げられます。3つ目の特徴は衝動性で考える前に行動してしまうことです。症状としては①「思ったことをすぐ口にする」、②「順番を待てない」、③「人の話を最後まで聞けない」、④「友達の話に割り込む」、⑤「カッとなりやすい」、⑥「欲しい物をすぐ買ってしまう」などが挙げられます。
神経発達症に含まれる限局性学習症(SLD)は「効率的かつ正確に情報を理解し処理する能力に特異的な欠陥を認める場合に診断される」とし正規の学校教育機関において初めて明らかになり、「読字や書字あるいは算数の基礎的な学習技能を身に付けることの困難さが支障を来すほどであることが特徴」とされ「職業活動を含むその技能に依存する活動を生涯にわたって障害する」とされています。社会的コミュニケーション症(コミュニケーション障害)は、言語や対人スキルに問題があり、適切なコミュニケーションが難しい状態を指します。ASDや言語障害、発語障害なども該当します。社会的な相互作用や意思疎通にも影響を及ぼし、学業や職場での適応が困難になることがあるとされています。
上記のようにSLDのような症状が小中学校で明らかになっても知的能力障害(知的発達症/知的障害)ではなく平均のIQ値(知能指数)が高いケースのお子様は、算数・数学が他の強化に較べて苦手、漢字が覚えることが苦手ではあるものの学校教育では学力的には平均得点以上の成績があり高校、大学に進学した人も少なくありません。また社会的コミュニケーション症(コミュニケーション障害)にしても低年齢で発現後、学力的に大きな問題がなければ、不登校やひきこもりなどの問題行動がみられた2次的精神疾患がともなうケース以外は、「クラスでもおとなしい静かな子ども」「友だちをつくらない一人が好きな子ども」として問題なく学校生活を送ることができている人が多いでしょう。
従来の発達障害がある子どもは、IQ値が高く知的な能力がある人ほど、認知発達の凸凹が大きく学校生活や職場環境における困難さや息苦しさが強くなると考えられています。だとすると知的に高い発達障害者を軽度発達障害と呼ぶことはできません。以前は軽度発達障害と言う呼称が使われていたことがあります。
しかし一般的にはこのような状況の子どもたちを「軽度」と教育現場では取り扱われる状況があり、認知発達の凸凹から生じるつまずきは、本人自身の生きづらさが理解されないケースが多いと思います。このように神経発達症(発達障害)があり、「軽度」と見られる知的なつまずきのない子どもたちは、学校などの集団生活でもある程度、適応できる子どもが多いため、大人になるまで、まわりもそのことに気づかないケースが多いのです。
大人になってから発達障害に気づく場合は、学生時代にそれ程目立たなかった特性が、社会に出て顕著化することが多いようです。その場合、職場の人間関係や仕事上での困難さが露呈することで気づくケースが多いようです。大人の場合は、そのような困難に対して解決策を見出そうと思い悩み、葛藤したりしながら自己と対峙します。一定の努力をしながらも状況が悪くなり、上司の注意が重なり、まわりの目が気になるようになり、自己肯定感が低くなります。精神的な負担が強くなると「鬱」や「不安障害」「強迫神経症」などの症状が出てきます。このような状況があって初めて精神科を受診した場合、その主治医が自閉スペクトラム症(ASD)、ADHD、SLDなどの神経発達症に詳しい主治医の場合に初めて大人の発達障害が疑われ、検診の結果、神経発達症に関係する診断名を診断されることになります。





