大学部:大学部通信 新学期特集号-5
2026年9月17日
5,神経発達症の二次障害と間違えられやすい別の精神疾患
最新改訂版(DSM-5TR)が2022年に発行され、日本精神学会による日本語訳も大幅にリニューアルされて2023年9月に発行されました。そこでは発達障害が新しく神経発達症と定義されています。それまでは発達障害支援法によって定義された発達障害はさまざまな発達の問題の併存が多く、その症状は通常低年齢で発現するものと定義されていました。
神経発達症群には知的発達症、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症(ADHD)、社会的コミュニケーション症(コミュニケーション障害)、限局性学習症(SLD)、チック症群、発達協調運動症、常同運動症が含まれます。
大人の神経発達症は生まれつきの脳の働き方の違いにより、仕事や対人関係で強い生きづらさや困難が生じる状態です。神経発達症の「二次障害」ということばは、もともと発達障害の特性やそれの伴う環境のミスマッチが原因で引き起こされる二次的な症状を指します。神経発達症は、その特徴が周囲の人に理解してもらえず誤解されたり、さまざまなトラブルや失敗体験を積み重ねたり、さらに成長発達過程で生じる困難な体験(いじめ、虐待など)が加わった場合には抑うつ症状や不安症状、幻覚・妄想、解離症状、PTSD、依存セルフネグレクトなどが生じることもあります。
二次障害としてよくみられる診断名はうつ病であり、最も多い二次障害の一つです。症状は「気分が落ち込む」、「やる気が出ない」、「不眠や過眠」、「食欲低下」、「自分には価値がない」と感じる、「重症では希死念慮がみられることもある」などがあります。その他、不安症(不安障害)は、 社会不安症、パニック症、全般不安症があり、症状としては「人前で強い緊張」「 学校や会社へ行けない」「常に不安がある」「 動悸や息苦しさを感じる」などあります。
環境に適応できず、「学校へ行けない・出勤できない」などの適応障害は「 涙が止まらない」「イライラする」などの症状があります。『不登校・ひきこもり』は二次障害として非常に多くみられる行動上の問題です。原因としては「学習のつまずき」「 友達関係」「 先生との関係」などが挙げられ症状としては「感覚過敏」「 集団生活の苦手さ」が露呈してくる場合が多いです。
「手洗いを何十回もする」「鍵を何度も確認する」「不安で確認が止められない」の症状がみられる強迫症や「寝付けない」「朝起きられない」「夜中に目が覚める」などの睡眠障害、「拒食」「過食」「過食嘔吐」の症状がある摂食障害、そして神経発達症群のADHDは暴言、 癇癪、 物を壊すなどの反抗的・攻撃的な行動がみられる反抗挑発症やリストカット、 頭を壁に打ちつける、自分を傷つけるなどの自傷行為、ゲーム・インターネット依存などストレス対処として依存行動がみられることがあります。このような症状が代表的な神経発達症の二次障害として知られています。
発達障害だと思っていたが実際には発達障害ではなかった場合、その背景にある生きづらさやストレスが原因で起こる不調は医学的には二次障害ではなく別の精神疾患や心身の不調になります。発達障害でなく生じうる主な症状・疾患としては、①不安症、②うつ病・抑うつ状態、③適応障害、④複雑性PTSDなどトラウマ関連障害、⑤愛着障害など愛着の問題などが挙げられます。
神経発達症(発達障害によく似た状態を示す症状としては、「不登校・行き渋り」「人間関係の苦手さ」「無気力」「怒りや暴言などの衝動性の強さ」「集中力の無さ」「忘れ物・不注意性」「感情のコントロール」「現実感がなくボーッとすることが多い」「朝起きられない・生活のリズムが崩れる」などがあり、上記の精神疾患に含め人格障害である回避性人格障害や解離性障害、自己愛性人格障害が考えられるケースもあります。これに「勉強のつまずき」を加えると知的発達症や境界知能は、(S)LDに間違えられやすい症状を示します。幻覚・妄想の症状が統合失調症と誤解されるケースもあります。主な疾患とその特性は以下の表にまとめました。
①不安症・・人前に出られない、人のとの会話を避ける、学校に行けない、失敗を極端に恐れる、集団に入れないなどASDに間違えられやすい
②うつ病・抑うつ状態・・やる気がない、集中力がない、朝起きられない、学習ができない、人と関わりたくない
③適応障害・・不登校、抑うつ、不安、イライラ、無気力、身体症状
④複雑性PTSDなどトラウマ関連障害・・過覚醒、イライラ、人を信用できない、回避、集中困難、感情爆発、対人関係の不安定さ
⑤愛着障害など愛着の問題・・人を信用できない、見捨てられることを強く恐れる、相手に過度の依存する、感情が不安定、対人トラブルが多い





