高等部:高等部通信10月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-2
2024年11月1日
2、自然学園体育祭
10月6日(日)に、第11回体育祭が開催されました。小中学校時代に運動会や学校の体育の授業が嫌だった子どもたちは、勝ち負けにこだわりパニックになったり、協調運動など感覚的なつまずきがあり粗大運動が苦手な子は、運動会や体育の授業で失笑を買ったり、チームが負けた責任を負わされたり、動きが遅れて周りに合わせられなかったりして、教員から注意を受けた負の記憶がある人たちが多いと思います。また、感覚過敏が強い人たちは、スピーカーから流れる音楽や大声、ピストルの音など耐えることができない環境が運動会にはそろっています。
自然学園の目標である社会人として豊かな人生を歩むための「協働」や「協調」が体育祭に参加する必要なスキルとなっています。勝ち負けのこだわりを少しでも少なくするために障害物競走を取り入れ、脚力だけではない勝ち負けの要素を付加しました。また、その際のジャンケンも負けた感を強くもたないために旗上げジャンケンを導入するなど、発達障害の特性である聴覚過敏や感覚統合の問題以外にも、こだわりなどの特性に配慮した細部にわたり考えられるだけの工夫を凝らした体育祭を心掛け、自分の意志で競技に参加することを基本に考えた体育祭にしています。
前日からの雨の影響で、グラウンドコンディションが悪く、午前中のみの開催となったため、長距離走と綱引き、教職員も参加する選抜リレーなどは残念ながら中止になってしまいました。
「玉入れ」はルールを守りながら興奮を抑え、冷静に玉をカゴに投げ入れていました。周りとの接触でトラブルになることもありませんでした。「大玉ころがし」も「台風の目」も大玉や棒をうまくコントロールしながら、スピーディーに操作する競技です。特に「台風の目」は一緒に走るペアがいるため、互いにスピードに合わせながらできるだけ早く走る「協働」が求められる競技です。うまく力を入れたり緩めたりする固有受容覚を意識しながら前庭感覚を使いうまく操作する同時処理が求められます。他者を意識しながら苦手さと格闘する生徒の努力や前向きさに心が動かされました。苦心しながら操作のコツをつかもうと努力している生徒の様子を見ることができました。「障害物競走」は、せっかく懸命に走って相手より早く旗上げポイントに辿り着いたものの、旗上げジャンケンで負ける生徒も多くいました。しかし、負けたら潔く戻り、再度チャレンジするひたむきさは、彼らの今までこだわりが強く苦手としていた特性でもある「課題」の克服に繋がります。どの生徒もゲームとして楽しむことができていました。ソーシャルスキルの向上がどの生徒にも垣間見ることができました。
勝ち負けではなく、自分に負けないことを目標に全力を出し尽くすことが、自然学園体育祭を通して皆さんに経験して欲しいことです。最後まであきらめない、自分に負けないそんな生徒の気持ちが見ている人たちの心に残った体育祭だったと思います。