高等部:高等部通信10月号 学園長ブログ~可能性のとびら~-8
2024年11月8日
8、実践で培われるSST(ソーシャル・スキル・トレーニング)とは
自然学園に入学した生徒の皆さんの中には、人との関わりの中で学校生活がうまくいかない経験を持っている人たちが多いのではないでしょうか。
人は、誰でも人に認めてもらいたいと思う気持ちや、自分が人の役に立っているという思いを持っています。人の自尊心を平気で踏みにじるような人は、人間関係をうまく築くことができません。そのことがうまくできないのが、発達のつまずきを持った人たちなのです。「人の気持ちになって行動しなさい。」「自分がされて嫌なことは、人にもしてはいけません。」「みんなと仲良く、協力しながらクラスの仕事をしなさい。」など、ご両親や学校の先生に一度は言われたことがあるのではないでしょうか。実は、これらのことが理解できず、実行できないことがつまずきになっている人たちが自然学園には多くいるのです。
具体的に言うと、先述したような人たちは、人の気持ちを理解することが苦手です。相手の立場になって自分のことのように相手を思いやる気持ちは持ち合わせていないのです。自分の思いや考えを押し通して行動することが、行動する規範になっているので、どうしても他者との摩擦が起こってしまいます。
人が快く思っていないことになかなか気付くことができないので、人に助けてもらったり、人に協力してもらったりするといった経験が少ない人たちなのです。そのため、協力や協調するということに対する感覚自体持ち合わせていないかもしれません。いつでも自分のルールや価値観が先行してしまう傾向があるので、親しい友達にさえ、その人がいなければ陰で悪口を言うことも平気でします。だから友だちだと言っても周りの人から見ると仲が良いのか悪いのか分からないのです。
このように、状況を判断して他者を気遣うことや、人の顔色や相手の態度を見て、他者に合わせるような対応が苦手です。ただし、自分が不利な立場に置かれている場合には、人の顔色や相手の態度に非常に敏感に対応し、嘘をつくことさえ気にしない生徒もいます。
ソーシャルスキルは学習性の能力です。したがって、それが身に付いていなかった場合、「適切なスキルの未学習」「不適切なスキルの誤学習」と考えることができます。きっちり構造化されてなくても、SSTのように、普段の生活でソーシャルスキルを学ぶ機会はあります。社会に参加するときに必要となる実践的なソーシャルスキルはむしろ学校生活の中で培われることの方が多いように思います。
今、置かれている子どもたちの公教育におけるクラスに彼らの居場所があるなら、きっと周りと繫がる力が育まれ、そのことのよって生まれる自制心や、相手を意識したり気遣ったりすることが自然とソーシャルスキルを育むことになるでしょう。そして学校行事のような子どもたちが主体的にコミュニケーションをとれるような活動が効果的に作用するでしょう。彼らの居場所があるクラス環境で、自分の存在を認められるような経験を積み重ねることで、周りに必要とされている実感が生まれ、それが人と繋がる力になるからです。人と繋がる力は他者に対しての気遣いや自制心を育みます。誰もが自分が安心で居やすい環境を手放したくないと思うからです。クラスの人たちに嫌われたくないと思う心はSST(ソーシャルスキルトレーニング)に必要不可欠な要素です。だからこそ、学校生活におけるSST(ソーシャルスキルトレーニング)が実践的で効果的なトレーニングといえるでしょう。